POSTED BY 熊本 沙織掲載日 FEB 8TH, 2022

【Z世代は何を想う】星野リゾート界の総支配人が語る「変化を楽しむ生き方」

1990年代中盤以降に生まれた「Z世代」。この企画では、これからの会社や日本の発展を担うZ世代に焦点を当て、novice編集部のZ世代・山崎がインタビューを敢行。彼らならではの考え方や将来のビジョンなどを探り、その生き方を紹介していきます。今回は、株式会社星野リゾートへ2019年に入社し、現在は「界 仙石原」の総支配人を務める澤田朱里さんにお話を伺いました。

目次

【インタビューのお相手】

  • 氏名:澤田朱里(さわだあかり)さん
  • 生年月日:1995年3月21日
  • 出身地:埼玉県さいたま市
  • 出身校:学習院女子大学
  • 趣味:ダンス、芸術鑑賞

ラグジュアリーホテル「星のや」や小規模温泉旅館「界」、西洋型リゾート「リゾナーレ」などを展開する総合リゾート運営会社、星野リゾート。コロナ禍においても宿泊施設の新規開業を続けており、さまざまなプランを打ち出しながら新たな需要を生み出し続けています。今回はそんな星野リゾートで働く澤田さんにお話を伺いました。

【就職活動について】日本の良いところを生かして世界で勝負したい

星野リゾート 界 仙石原 Z世代
学生時代のアルバイトはスターバックスやコールセンター、家庭教師など、人と接する業種が多かったという澤田さん
(注:撮影のため一時的にマスクを外しています。)
― 澤田さんは、どのような方針で就職活動をしていましたか?

澤田さん:大学時代はカナダに留学したり、国際法を学んだりとさまざまなことに取り組んだのですが、最後にたどり着いたのが茶道や日本舞踊といった日本の文化でした。目に見えないものを大切にするような感性や感覚を、魅力的だと感じたんです。その経験から、日本の強みや良いところを活かして世界で勝負できる企業に就職したいと考えました。

最初は日立製作所、三菱電機、テイジンなどのメーカーや、ファーストリテイリングなどを受けていたのですが、「モノに興味がないのかも」と思い始めて。茶道や日本舞踊を通して日本の文化が魅力的だと感じたところに立ち返って、星野リゾートに辿り着きました。

【星野リゾート入社の理由】面接で言われた「向いてない」の一言が決め手に

就職活動中、ホテル業界で他社は一社も受けなかったそう
― どのような理由で星野リゾートを選んだのでしょうか?

澤田さん:はっきりとは覚えていないのですが、最初に星野リゾートを知ったのは弊社の代表が出演していたテレビ番組だったと思います。もともと古き良き旅館が好きなタイプで、チェーン展開している宿泊施設には興味がなかったんです。でも、星野リゾートが日本のおもてなし文化で世界に勝負しようとしていることを知り、自分の目指すところとマッチしていると感じたので星野リゾートの選考を受けました。

入社の決め手となったのは、最終面接で人事に「澤田さん、メーカーなんて受けてるの?絶対向いてないね」と言われたことです(笑)。私とたった10分喋っただけで断言できるほど、私はメーカーに向いてないんだと衝撃を受けましたね。でも、そこまではっきりと言ってくれる人がいる星野リゾートなら安心だな、とその時思ったんです。

― 澤田さんはギャップイヤー(卒業後、進学や就職までの間をあえて長く設定し、さまざまな体験をすること)を経験されたそうですね。

澤田さん:はい。星野リゾートは入社できるタイミングが年に4回あるので、私は2018年の3月に大学を卒業し、約10カ月間のギャップイヤーを過ごしました。その間は日本の伝統工芸を扱う小さな会社で働き、2019年の2月に星野リゾートに入社しました。自分の興味関心にじっくり向き合い、星野リゾートで実現したいことも固められたので、良い経験だったと思っています。

【現在の業務内容】界 仙石原の総支配人として勤務

澤田さんは入社して3年目で総支配人に着任。これは新卒入社としては最速なのだそう
― 現在の業務内容を教えてください。

澤田さん:星野リゾートの温泉旅館ブランド「界」の仙石原で、総支配人をしています。スタッフ間でのミーティングのほか、フロント業務、掃除、ご当地楽(「界」が行っている、伝統工芸、芸能、食などの地域の特徴的な魅力を楽しむためのおもてなし)の開催、館内の巡回などが主な業務です。

フロント業務、掃除、ご当地楽開催などは他のスタッフのヘルプという立ち位置なのですが、積極的に関わることでお客様のことも、スタッフのこともより詳しく知ることができます。館内で起きていることを把握しておくためにも、ヘルプには頻繁に入るようにしていますね。

― 26歳で総支配人はかなりのスピードですよね!なぜ総支配人のポジションに手を挙げたのでしょうか?

澤田さん:自分よりも会社のほうが、自分をうまく使ってくれると思ったからです。総支配人に立候補すれば、もし人事が私を必要だと思っていれば総支配人として声がかかるだろうし、もし私を必要としてくれる場所があったら「来てください」と言ってもらえると思いました。入社して2年半で総支配人に立候補できたのは、そういう気持ちがあったからかもしれません。

【入社早々やっちゃいました】仕事での失敗は?

小さな失敗はちょこちょこしているのですが・・・と話す澤田さん
― 入社して早々やってしまった失敗談があったら教えてください。

澤田さん:「界 仙石原」の総支配人に着任して1カ月半なので、大きな失敗はまだないですね・・・。

【入社早々やっちゃいました】うまくいった仕事は?

急なトラブルにも総支配人として無事に対応でき、その後の自信につながったとのこと
― では、これはうまくいったな・・・!と感じた経験はありますか?

澤田さん:2021年12月1日付で総支配人に着任したのですが、就業後に自宅にいたところ、職場から電話がかかってきました。施設設備のトラブルがあり、お客様をご不便をおかけしてしまったんです。

まずはスタッフと状況を確認し、施設設備の対応とともに、お客様への対応をスタッフに指示。その後、朝になってから自分自身もお客様のお部屋に伺って、お客様を不安にさせてしまったこと、ご不便をおかけしてしまったことをお詫びしました。その日も続けて宿泊されるご予定だったので、お食事をゆっくり召し上がっていただけるように、レストランでのドリンクをご用意させていただきました。

着任早々の出来事だったため、かなりびっくりしましたが、トラブルの謝罪を無事に受け入れていただけて本当に良かったです。幸いなことに、原因もすぐに究明でき、再発も防止できています。

【理想と現実】うまくいかない時、どうしてる?

自分以外の人の考えを取り入れることで、アイデアをブラッシュアップできるヒントになるそう
― 澤田さんは総支配人として責任のある立場でいらっしゃいますが、なかなか結果が出ない時は、どのようなマインドで過ごしていますか?

澤田さん:結果がなかなか出ない時は、そうですね・・・。最初からすべてうまくいくとも思っていないですが、どうしてうまくいっていないのか? を深く考えるようにしています。評価は、誰が評価するかによっても変わるので、あまり気にしすぎないことも大切だと思いますね。

【星野リゾートについて】どんな会社?

「界 仙石原」のショップでは、お土産物だけでなくアーティストの作品や小物も販売されている
― 星野リゾートはどのような会社でしょうか?

澤田さん:フラットな会社、ですかね。何を言うかが大事で、誰が言うかは気にしないので、入社1年目でも10年目でも関係なく意見が言い合える環境が整っていると思います。

また、チャレンジする機会がたくさんある会社でもあるかと。何かやりたいと手を挙げて、それが説得力のある提案であれば「どうぞやってください」と認められますし、チャレンジが推奨される文化が浸透している印象です。提案が受け入れられた時は「任せてもらえた」とうれしく感じますね。

― どんな人が星野リゾートに向いていると思いますか?

澤田さん:チャレンジを楽しめる人は向いていると思いますね。年齢に関係なく仕事を任せてもらえるので、挑戦することが好きな人は楽しいと思いますよ! また、最近はプライベートを優先しつつ、好きなことを仕事にするという風潮も生まれてきていると思いますが、星野リゾートはプライベートも大切にできる会社だと思います。

【ホテル業界について】最近の動向をどう見ていますか?

コロナ禍でもまた行きたいと思ってもらえるような、思い出に残る滞在を作りたい、と澤田さん
― ここ最近のホテル・観光業界の動向を、澤田さんはどのように捉えていますか?

澤田さん:今は外国人のお客様がいらっしゃらないので、本当に試されている時期だと思っています。私は地域住民に選ばれる旅館にならないと意味がないと思っていて。「界 仙石原」でいえば、小田原や静岡県にお住まいのお客様ですね。そういった方たちに「やっぱり近くの温泉旅館でゆっくりごはんを食べていると、小田原や箱根の良さをあらためて感じるなあ」と感じていただくのが温泉旅館の本質的な部分だと思いますし、持続可能な収益にもつながるのかなと思います。

【会社と社会を引っ張る未来】1年後・5年後・10年後の自分

季節ごとの新規イベントを企画するのも、大切な業務の一つ
― 1年後の目標を教えてください。

澤田さん:総支配人として、まずはマネジメントをしつつ、「界 仙石原」のサロンをもっと活用していきたいと思っています。サロンはアーティストの絵を展示したり、ワークショップをしたりと多目的に使える場所なのですが、普段あまり活用できていなくて。そこをどう使っていくか、よく考えて実践していきたいです。

― 5年後と10年後はいかがでしょうか?

澤田さん:どちらが先というのはまだ決めていませんが、2つやりたいことがあります。

一つは、海外拠点の運営に携わりたいです。どの施設という希望があるわけではありませんが、地域としてはヨーロッパやアメリカがいいなと。自分が実際に訪れて感じたのですが、スイス、ドイツ、フランスなどには、日本文化に対する感度が高い方が多くいらっしゃるので、日本の温泉文化も受け入れられるのではないかと考えています。

もう一つは、アートマネジメントです。アートマネジメントとは芸術や文化活動と社会をつなぐことなのですが、私はこのアートマネジメントを、温泉旅館で実現できると思っています。例えば、アーティスト、街、温泉旅館の3つをつなげて、地域でアートをもっと活性化していくというような活動ですね。

ゆくゆくは、アートで表現される「日本の伝統的な価値観」を広めていくとともに、それを街の発展や温泉旅館のマネジメントに結びつけられるよう、大学や大学院で学び、実践していきたいと思っています。

【将来のこと】どんな人間になっていたい?

チャレンジしてうまくいかないことがあっても、「やってやる!」と戦闘モードに入るそう
― 将来、どのような人になっていたいですか?

澤田さん:常にチャレンジすることを楽しめる人になっていたいですね。

コロナ禍を経て、「自分って、こんな時こそ楽しめるタイプなんだな」とあらためて認識できました。観光業はかなり厳しい状況だったので、2020年から2021年にかけては帰休(休み)も多かったのですが、それで一気にモチベーションが下がってしまい、家で過ごしていたらいつのまにか1年経ってしまっていた、という人は周りでも多かったと思います。

でも、私はどちらかというと帰休の期間を楽しめていたんですよね。休みでもお給料が何割かいただけて、その上で自由な時間があったので、たくさんのことにチャレンジしました。ナチュラルフードの講座を受講して資格を取得したり、投資の勉強をしたり、さまざまな研修に参加したり・・・。そうやって過ごしていると、当時勤めていた「界 箱根」がこうしたらもっとよくなるんじゃないかというアイデアも出てきて。チャレンジ精神にあふれる1年でしたね。

― コロナ禍で行動に制限がかかる部分もあったと思うのですが、それでも楽しんで学ばれていたんですね。

澤田さん:今こそ世の中が大きく変わる時なんだ!と感じていました。世界が目に見えて変わっていくのが、すごく面白かったんです。「ワーケーション」などの新しい言葉も出てきましたし、この1年で世の中がこんなに変わるんだということが、すごく興味深かったですね。そんなふうに、時代がどう変わっても楽しめる人でありたいです。

【Z世代を代表して一言】どんな世代でありたい?

Z世代はチャレンジをチャレンジと感じないくらいの行動力があると思う、と話す澤田さん
― 最後に、Z世代を代表して一言お願いします!

澤田さん:繰り返しになりますが、私は温泉旅館を通じて日本の素晴らしさを日本中にも世界中にも広めていきたいと思っています。Z世代を代表して何か言うとしたら、「世の中の変化、いつでもかかってこい!」という感じですね。

変化を恐れずに、前向きに柔軟に、対応していきたいなと思います。

インタビュアー山崎の「Z世代の想いに触れて」

今回は、novice編集部のZ世代・山崎(右)が、星野リゾート入社4年目の澤田さん(左)に想いや考えを伺いました

澤田さんとお話していて、すごく「太陽みたいな人」だなと感じました。探究心に溢れ、その口から発される言葉一つひとつが強烈で、会話しているだけでもエネルギーがもらえます。変化を楽しめるのは今の若い世代の特徴かと思いますが、「今日は何にもしたくない」という日がなく、逆に何かしていないと気持ち悪くなってしまうというのですから、生粋のチャレンジャーなんだなと。

26歳にして総支配人に立候補されたように、やりたいことを実現するために、誰かから与えられるチャンスを待つのではなく、自ら掴みにいくその姿勢に、勇気づけられる人も多いのではないでしょうか。澤田さんが指揮をとる「界 仙石原」、そして日本の文化を世界に轟かす星野リゾートに、これからも注目していきたいと思います!

取材協力:星野リゾート

[All photos by 渡辺昌彦]

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熊本沙織
編集者/ライター

編集プロダクションと出版社での勤務を経てフリーの編集者・ライターに。ウェブメディア・書籍・雑誌・広報誌などで幅広く活動中。隙あらば航空券をウェブ検索し、旅のプランを練っている旅行好き。自宅に3台のたこ焼き機を所有する関西人。

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