POSTED BY 青山沙羅掲載日 JAN 28TH, 2021

【世界のニューノーマル最前線・NY】就任式で女性たちが選んだカラーの想い

アメリカ合衆国ニューヨー在住のフリーランスライター青山沙羅が、現地のニューノーマルな生活をルポする当連載。
今回は、アメリカ合衆国第46代大統領就任式に出席した女性たちが着用したコートについて。彼女たちが選んだ色には、深い想いがこめられていました。

目次

ファーストレディが着た「ブルー(青)」

第46代米大統領就任式で、ファーストレディのジョー・バイデン大統領夫人が着たコートは、NYCのファッションブランド「マルカリアン(Markarian)」のもの。大方の人が予想していたラグジュアリーブランドではなく、若きデザイナー、アレクサンドラ・オニールが、2017年に立ち上げたばかりのブランドのものでした。

ブルーは「民主党」の色

ジョー・バイデン大統領夫妻 mccv / Shutterstock.com

ブルーは、アメリカでは「民主党」の色。ただし、バイデン大統領夫人のコートは民主党色を強調することなく、淡く、優しいブルーを選んでいます。

ブルーは「平穏や安定性」を意味する色

ジョー・バイデン大統領夫妻 mccv / Shutterstock.com

空や海を表し、世界共通で最も好まれる色と言われるブルー。平穏や安定性を意味する色は、波風の多かった過去4年間のアメリカから、穏やかで安定を求めるアメリカへの方向性を示すかのよう。

ブランド「マルカリアン(Markarian)」のプレスリリースによると、ファーストレディの「信頼、自信、安定」を表すためにブルーが選ばれたそうです。

カマラ・ハリス副大統領、元ファーストレディが着た「パープル(紫)」

アメリカ史上初の女性副大統領、カマラ・ハリス副大統領が着た鮮やかなパープルのコートは印象的でした。色合いが異なるものの、オバマ元大統領夫人、クリントン元大統領夫人(および元大統領候補)もパープルのコートを着用していましたね。

パープルは、調和の色

カマラ・ハリス副大統領と夫のダグ・エムホフ氏 mccv / Shutterstock.com

パープルは、民主党「ブルー」と共和党「赤」を調和させた色。党派で敵味方に別れることなく、助け合ってアメリカを統一していきたい想いを表しているのでしょうか。バイデン大統領が就任式で繰り返し語ったのは、「アメリカの団結(unity)」でした。

パープルは「女性の参政権」を象徴する色

オバマ元大統領夫妻 mccv / Shutterstock.com

女性の参政権を求めたサフラジェット(Suffrage)活動のシンボルカラーは、パープル、ホワイト、ゴールド。パープルは、女性の参政権を意味する色でもあります。

バイデン大統領のネクタイも、淡いパープル

女性のみならず、バイデン大統領が就任式に身につけたネクタイも、淡いパープルでした。民主党色を強調せず、分断したアメリカを一つにしたい想いが感じられます。

2036年米大統領選に立候補予定 アマンダ・ゴーマンさんが着た「イエロー(黄色)」

米大統領就任式で話題になったのが、就任祝いの詩を朗読したアマンダ・ゴーマンさん。

ファーストレディが選んだ、若き詩人

Amanda Gorman Performs 'An American Lyric' at the Library of Congress/
Amanda Gorman 2017年

アマンダ・ゴーマンさんを抜擢したのは、ファーストレディであるバイデン大統領夫人。若き詩人の朗読パフォーマンスの映像(2017年)を見て強い印象が残っており、米大統領就任式で朗読ができるか打診。2017年当時着ていた「明るいイエロー」のドレスもとても素敵だったことも伝えました。

全米を感動させた、就任祝いの詩

【動画ノーカット・日本語訳付き】「就任式の主役」と絶賛 アマンダ・ゴーマンさんの詩/TBS NEWS 

米大統領就任式において、史上最年少の詩の朗読者が"The Hill We Climb"を朗読し始めた時、10代にしか見えない22歳の女性の非凡さに、誰もが衝撃を受けました。

The Hill We Climb(私たちがのぼる丘) 一部意訳

新しい日がやってくると、私たちは自らに問いかける。
この終わりのない闇の中に、希望は見い出せるのかと。
私たちは失望を抱えながら、荒海の中を進まなければならない。
私たちは窮地に陥ってさえ、ひるまず立ち向かってきたのだ。
静寂さは、必ずしも平和ではないことを、私たちは学んだ。
正しいとされる基準や見解というものが、必ずしも公平でないことも。
(中略)
情熱と動じない心を持てば、暗闇の中から抜け出せる日がやってくる。
私たちが心を開放すれば、新しい夜明けはやってくる。
そこにはいつだって希望が存在している。
私たちが直視する勇気があるのなら。
私たちが成し遂げる勇気を持つのなら。(意訳:青山沙羅)

When day comes we ask ourselves,
where can we find light in this never-ending shade?
The loss we carry, a sea we must wade.
We’ve braved the belly of the beast,
we’ve learned that quiet isn’t always peace
and the norms and notions of what just is, isn’t always justice.

When the day comes we step out of the shade aflame and unafraid,
The new dawn blooms as we free it
For there is always light,
if only we’re brave enough to see it
If only we’re brave enough to be it

誰もが詩人のコートを探し求めた

アマンダ・ゴーマンさん mccv/Shutterstock.com

米大統領就任式でアマンダ・ゴートンさんが身につけたのは、ファーストレディに褒められた「明るいイエロー」。聡明で美しい詩人が着た、素敵なイエローのコートは人々に印象づけられました。朗読の間、Twitterでは彼女が話題にのぼり、Googleでは「詩人のコート(poet coat)」が検索の急上昇ワードに。

PRADAの「イエロー」のコートは完売

Pradaコート
©PRADA

アマンダ・ゴーマンさんが着用したコートは、PRADAのもの。PRADAが表明している「フェミニズム(男女同権)」について賛同しているため、就任式での着用を選択したそうです。コートはすでに完売。

ジョー・バイデン大統領との共通点、将来の立候補

この流暢に詩を奏でる詩人が、子どもの頃から言語の障害があって、数年前に克服したばかりという事実にも驚かされます。ジョー・バイデン大統領も、子どもの頃から長い間吃音症に悩まされました。「大統領」と「詩人」には意外な共通点があったのです。

印象的なコートを着た若き詩人は、2017年11月のThe New York Timesで、「まだまだ先の目標だけど、2036年の米大統領選挙に立候補する予定だから、あなたのiCloudカレンダーにマークしておいてね」と語っています。

アメリカ合衆国第46代大統領就任式の様子はこちらから見られます

The Inauguration of Joe Biden and Kamala Harris | Jan. 20th, 2021/Biden Inaugural Committee

女性たちの想いを表したコートは、収録された第46代米大統領就任式から見ることができます。

アメリカの変化に期待

AlexiRosenfeld / Shutterstock.com

ファーストレディの平穏・安定性の「ブルー」、カマラ副大統領の調和の「パープル」、「イエロー」のコートを着たアマンダ・ゴーマンさんが詩で表現したのは、団結や協力、一体感。いずれも人と寄り添う調和の想いが感じられます。

若き詩人が人々の胸に爽やかな風を吹き込み、アメリカの可能性を呼び戻してくれました。分断から調和へ。アメリカの変化に期待したいものです。

■参照記事
On Inauguration Day, Jill Biden Chooses a Coat by the Young American Designer Alexandra O’Neill of Markarian - Vogue USA 2021年1月20日
What to Know About Markarian Designer Alexandra O’Neill - WWD 2021年1月20日 
Kamala Harris Champions Designers of Color, Christopher John Rogers and Wilfredo Rosado, as She Makes History - Vogue USA 2021年1月20日
The hidden meaning behind the showstopping yellow coat 22-year-old poet Amanda Gorman wore at Biden's inauguration -  Insider 2021年1月20日
Inaugural Poet Amanda Gorman on Her Career-Defining Address and Paying Homage to Maya Angelou - Vogue USA 2021年1月25日
Meet Amanda Gorman, America’s First Youth Poet Laureate – The New York Times 2017年11月3日

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青山沙羅
アオヤマサラ/ライター

はじめて訪れた瞬間から、NYにひと目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、2009年ついに上陸。 旅の重要ポイントは、その土地の安くておいしいものを食すこと。 特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、「やられたら、やり返せ」。 プロ・フォトグラファーの夫とNYでふたり暮らし。共同著書『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日(PIE International、2020年3月)』。

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