POSTED BY オオモト ユウ掲載日 OCT 21ST, 2021

【釣りの今を斬る】無知は危険!釣り人の身近に潜む要注意な危険生物vol.5

ヒレに毒を仕込んだトゲを持っていたり、カミソリのように鋭利な歯を持っていたり、甲殻類には強力なハサミを持つものまで。水中に生息する様々な危険生物を紹介してきた。
今回からはトゲやハサミなど物理的な攻撃による危険ではなく、食べることで人間の健康状態を損なう可能性のある「食中毒」の危険について紹介していきたい。目に見えず、口に入れるまで気がつかない事例がほとんどなので、物理的な攻撃よりもそのダメージは大きい。海での楽しい時間がトラウマに変わることがないよう、その実際を知っておくことは大事である。
まずは身近な食中毒について、3つの例を挙げていくことにしよう。

目次

誰もが知る魚も管理次第で危険に! 青魚で頻発する「ヒスタミン中毒」

アジやイワシ、サバ、ブリ、カツオ、マグロ・・・。いずれも日本人の食生活に深く浸透した海産魚であり、堤防や船からもまとまった数が釣れるため釣りのターゲットとしても人気が根強い。しかし、これらの魚が原因とする食中毒が存在することはあまり知られていない。報告された数だけでも多い年には400人以上の患者数が報告されており、魚類を原因とする食中毒ではもっとも注意が必要である。

(参考資料 ※1、2)

【食中毒の種類とその原因】

これらの魚類で発生する症例は「ヒスタミン食中毒」と呼ばれる。これは「ヒスタミン」と呼ばれる物質を高濃度に含んだ食品を接種することによって発症するアレルギー。前述の赤身魚の類いはタンパク質を構成するアミノ酸の一種である「ヒスチジン」を身に多く含み、そこに海水中に存在する「ヒスタミン産生菌」が付着・増殖するとアレルギーの原因となる「ヒスタミン」が生成される。

「ヒスタミン産生菌」は、鮮度が低下していたり魚体の温度が上昇すると増殖と酵素作用が進む。発生を予防するには魚体の温度管理が重要で、釣り上げた魚はすぐに氷で冷却、鮮魚店などで購入したものは即座に冷蔵することで「ヒスタミン」が生成されるのを防ぐことができる。

ちなみに、「ヒスタミン」は加熱しても除去・破壊されず、調理を経ても発症の可能性がある。鮮度に不安がある個体は口に入れず、処分することをおすすめする。

【代表的な症状】

「ヒスタミン食中毒」では、顔面(口や耳周り)の紅潮、頭痛、じんましん、発熱などが代表的な症状とされる。発症は摂取直後から1時間以内が多い。重症化することは少ないとされるが、速やかな医療機関への相談が安心。治療には抗ヒスタミン剤が用いられる。

なお、口に入れた際、唇や舌先にピリピリした刺激を感じたらアウト。その食品は高濃度に「ヒスタミン」を含む可能性があるため、即座の処分が無難である。

【発症予防の対策】

釣り上げた魚を常温に放置しないことが絶対。気温が低い冬場でもクーラーボックスと氷を用意しておき、即座に急冷するのがベストである。また「ヒスタミン生産菌」はエラや消化器官に多く存在するので、釣り上げた個体からエラや内臓を除去するのも効果的とされる。

過去には訴訟沙汰にもなった南方由来の怖い食中毒「シガテラ中毒」

1.で説明した「ヒスタミン食中毒」と比較して報告された発生例はグッと減るものの、発生エリアの拡大傾向が見られることから注意が呼びかけられているのが「シガテラ中毒」

死亡例はきわめて稀ながら症状の種類が多く、発症期間も長くなる可能性が指摘されている。基本的には熱帯〜亜熱帯のサンゴ礁域に生息する魚によって起こるとされているが、このまま海水温の上昇傾向が続けばさらなる被害拡大も考えられる。

(参考資料 ※3)

【食中毒の種類とその原因】

「シガテラ中毒」の原因となるのは、対象種の筋肉や内臓に含まれる「シガトキシン」およびその類縁化合物。この物質は海藻などに付着する「渦鞭毛藻(うずべんもうそう)」と呼ばれる微細藻の一種によって生産され、それを取り込んだ魚類が毒化。その魚を食べた人間の体内で発症という、食物連鎖の上に成り立つ自然毒である。

ヒスタミンと同様に加熱しても毒性は失われず、その成分は煮汁等にも移行する。また「シガトキシン」は冷凍しても減少されないことも報告されている(※4)。

報告例が多いのは沖縄県で、バラフエダイやイッテンフエダイ、バラハタなどが有毒の可能性がある魚種として注意喚起される。数は少ないながらも本州や九州でも発症の報告があり、イシガキダイやヒラマサにはその可能性が指摘されている。

平成11年には割烹料亭において供されたイシガキダイ料理で「シガテラ中毒」が発生。料亭に対して「製造物責任」に基づく損害賠償を命じる判決が出たことは、大きな話題となった。(※5)

【代表的な症状】

消化器系(下痢、吐き気、嘔吐、腹痛)、循環器系(徐脈、血圧低下)、神経系(関節痛、筋肉痛、かゆみ、しびれ、「ドライアイスセンセーション」と呼ばれる温度感覚異常)と症状が多岐に渡るのも「シガテラ中毒」の特徴。軽症の場合は1週間ほどで治まるが、重症化した場合は1年以上も症状が継続した例もある。なお、死亡例は極めてまれとされている。

【発症予防の対策】

毒を含む個体の見分けについて具体的な予防対策は確立されていない。過去に発生例のある魚種を知っておくことが、数少ない対策と考えたい。また、治療法についても効果的なものは見つかっていない。

楽しい潮干狩りの収穫でまさかの被害! 二枚貝で発生する「貝毒」

縄文時代の人類の生活を現代に伝える貝塚から多く出土し、古くから食料として愛好されてきたアサリ、ホタテ、カキ、アカガイなどの貝類。流通も多く食中毒の原因となるイメージは薄いが、毎年のように規制値を越えた個体が検出されており決して他人事ではない。

流通品は定期的な検査をクリアしているためその心配は少ないものの、潮干狩りなどで個人が採取したものは規制の対象外。北海道から九州まで全国で発生の可能性があり、注意が必要である。

【食中毒の種類とその原因】

貝類で発生する食中毒は「貝毒」と総称され、その性質によって5種類に分類される。日本国内で多いのは「麻痺性」「下痢性」の2種類。なかでも多いのはアサリやホタテなどで発生する「麻痺性」で、有毒なプランクトンを貝類が取り込むことによってその体内に蓄積されるものである。

(参考資料 ※6、7)

【代表的な症状】

ここでは「麻痺性貝毒」について紹介する。おおむね食後30分ほどで軽度の麻痺(唇周りのしびれなど)が始まり、次第に全身へと広がる。重症化すると運動失調や言語障害に及び、過去には呼吸麻痺による死亡例もある。その症状はフグ毒中毒に似ている。

【発症予防の対策】

有効な治療法や解毒剤は存在しない。また毒性は加熱によっても損なわれないので、調理による無毒化は期待できない。呼吸麻痺を起こした際は人工呼吸を行って呼吸を確保することが大事。適切な処置を施せば延命率は大幅に上がる。

出荷に当たっては自治体などで検査が行われ、規制値を越えた場合に出荷規制措置がとられる。その情報は自治体などから公表されるので、管理された水域以外で潮干狩りを楽しむ際にはその海域の情報を収集することをおすすめする。



※1 厚生労働省 「ヒスタミンによる食中毒について」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130677.html
※2 消費者庁 「ヒスタミン中毒」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/food_safety_portal/topics/topics_003/
※3 厚生労働省 「自然毒のリスクプロファイル:魚類:シガテラ毒」https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_det_02.html
※4 沖縄県 「シガテラについて」 https://www.pref.okinawa.jp/site/hoken/eiken/kagaku/siguatera.html
※5 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/741/005741_hanrei.pdf
※6 厚生労働省 「自然毒のリスクプロファイル:二枚貝:麻痺性貝毒」 https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/animal_09.html
※7 堺市「貝毒に注意しましょう」 https://www.city.sakai.lg.jp/smph/kenko/shokuhineisei/shokuchudokuyobo/kaidoku.html

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オオモトユウ
編集者/ライター/フォトグラファー

スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。

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