POSTED BY オオモト ユウ掲載日 MAY 30TH, 2021
【釣りの今を斬る】コロナ禍による愛好家増で問題再燃・・・釣り場が減る!?
急激な蔓延により、我々の日常を大きく変容させた「COVID-19」。人との接触によって感染が広がることが認知された結果、「密」になりにくく感染リスクが低い屋外で楽しむアクティビティへの関心が高まっている。キャンプや登山、ゴルフがその代表例として活況を呈しているが、同様に「釣り」も新たな愛好者が増加している。この一年、専門店には釣り具を買い求める入門者層が急増し、平日でも人気の釣り場は満員状態が珍しくなくなった。ただ、どんな物事も「光」と「影」が一対になるのが常である。急な流行によって釣り業界が悲願としていた人口の拡大が果たされた反面、釣りに関するマナーの啓蒙が不十分だったこともあり長らく燻り続けていた諸問題が一気に再燃した。ここでは、今後致命的にもなりかねない釣りブームの「影」の部分に目を向けてみたい。
再燃した問題1【釣り場のゴミ】
環境省が2019年に発表したデータによると、日本人が1日に排出するゴミの量は、1人あたり920gとされている(※)。この数字の評価はさておき、人が集まる場所や機会では必ずと言っていいほどゴミの問題がつきまとう。
※https://www.env.go.jp/press/106564.html
もちろん、排出量が増えたところで適切な処理が行われれば問題はないのだが、現状はさにあらず。釣り場の人気度に比例するように放置されるゴミの量は増える傾向にある。しかも、釣り人が出すゴミはエサが入っていた袋や釣り針など内容物に特徴がある。袋にこびり付いたエサが腐敗して悪臭を放ったり、釣り針が袋を突き破って回収者にケガをさせるといった実害も耳にする。
実際、こういった被害から「釣りゴミの持ち込み禁止」との掲示がされているサービスエリアは少なくない。釣り場の周辺だけでなく、高速道路の管理者にまで釣り人の悪評が広がっている現状は残念な限りである。
釣りに由来するゴミ以外にも、バーベキューなどを楽しんだ後と思しき残骸も目立つ。以前から大型連休後などには少なからず見られたが、コロナ禍で店舗での食事や飲酒機会が減少したこともあって増加傾向を実感する。この手の残骸は生ゴミや空き缶、ペットボトル、釣りゴミが混在する傾向があり、処理に手間が掛かる点でさらに印象が悪い。
モラルのない一部の悪行とはいえ、端から見ればいずれも「釣り人」の仕業にされてしまう。周囲の人がどのような印象を抱くかは想像に難くないだろう。
再燃した問題2【漁業関係者とのトラブル】
日本の水辺はその多くで「漁業権」が設定されており、その権利を有する漁業関係者にとっては生業の場である。それと区別するために、遊びとして魚を釣る行為は“遊漁”と定義される。釣り人のために整備された有料の釣り堀や専用施設などを除けば、釣り人は漁業関係者の職場で“遊ばせてもらっている”にすぎない。
そんな下地がある環境で行うレジャーゆえ,漁業関係者とのトラブルは最も避けたい事態。漁具や船の破損につながる行為や、作業の妨害、迷惑駐車といった行為が元で釣りが禁止された事例は少なくない。海や湖だけでなく、水田へ水を運ぶ用水路の周囲でもそれは同じ。特に田植えや稲刈りの時期などは周辺の農道で往来が増え、トラブルにならぬような配慮が必要だ。
また、水産資源保護の観点から、場所や時期を決めて禁漁措置を適応している水域も見られる。悪質な場合は刑事罰の対象にもなるため、あらかじめ地元の釣具店やガイド本などで調べてから出かけたい。
再燃した問題3【管理者(行政、企業)とのトラブル】
漁港や堤防、護岸のように国や自治体、企業が管理する水辺はその利用方法にさまざまな制限が設けられている。特に大型船舶が出入りする主要な港湾施設は、「SOLAS条約」という国際的な取り決めによって一般の立ち入りが制限されている。無断侵入は罪に問われることになるので気をつけよう。また条約の対象外でも、立ち入りを妨げるためのフェンスや柵を乗り越えて入釣する行為は御法度である。一人の問題行動により、そのエリア全体で釣りができなくなる事態に繋がりかねないので、厳に慎みたい。
立ち入りが許可されている場所も利用方法に制限が設けられているケースがある。特に都市部の水辺は公園に近い役割が期待されており、散歩や運動などで多くの人が利用する。ゆえに、釣りに関しては「ルアー禁止」「投げ釣り禁止」といった制約が明記されている場所が多くある。これを守らずにほかの利用者とトラブルなどを起こせば、事は「釣り禁止」へ進むのは必至。初めての場所では、あらかじめ禁止行為の確認を済ませておくのがベターである。
コロナ禍での新たな問題
2020年の春、全国に『新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言』が発出され、外出や移動の制限が要請された。これにより、各地の水辺では利用制限措置を執る例が相次いだ。水辺に近い公共の駐車場が閉鎖され、海岸の利用も自粛が求められることとなった。
その後、宣言の解除によって徐々に利用再開が進んだものの、住民に高齢者が多い地域を中心に利用制限が続けられている例もある。もちろん、ヒト-ヒト感染が起こりやすいこと、高齢者が重症化しやすいことなどを考慮しての措置ではある。しかし、釣り人に対する心証がそもそも悪かったことが判断に影響している可能性も否めない。
前述のようにゴミをポイ捨てし、迷惑駐車は日常茶飯事。挙げ句の果てに漁業関係者とトラブルを起こす・・・。一つひとつは些細なことでも、地域の人たちの心がどんなに広くても、そんな迷惑な存在が歓迎されるはずがない。新型コロナウイルスに対する脅威だけでなく、過去の所業によっても釣り場の閉鎖が加速していることは愛好家の一人として悲しい限りである。
釣りの未来のために
ここで取り上げた内容は「最低限のマナー」「釣り人の嗜み」と指摘がなされ、釣り人気が高まった頃合いで常に議論の的となってきた。往事を知るベテランには「現在のほうが全体的なマナーはよい」と評する向きがある一方、コロナ禍による急な入門者増に「マナーの悪さが目立つようになった」との声があるのも事実である。
どちらが正しいのかを論ずることに意味はない。マナーを守れない人はいつの時代にも、どの世界にも一定数存在する。残念ながら、母数が大きくなるほど、道を外れる人の数も増えてしまうものである。ただ、他人の行動へ注がれる視線が厳しさを増している今だからこそ、マナーやルールについての意識を愛好者全体で高める必要がある。
水資源に恵まれた日本は世界でも有数の釣り大国である。その多彩さと奥深さは「文化」と言っても過言ではなく、大いに誇れるものである。だからこそ、釣りを楽しむ人には精神的な豊かさも備えてもらいたい。釣りに魅せられた一人の愛好家として、切に願うばかりだ。
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オオモトユウ | |
スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。 |
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