POSTED BY 倉田直子掲載日 JAN 31ST, 2021

【世界のニューノーマル最前線オランダ】突然の夜間外出禁止令！そのとき国民は？

こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。コロナ禍がなかなか沈静化しない欧州では、さまざまな行動制限が設けられてきています。オランダも例外ではなく、2021年1月下旬からは夜間外出禁止令も出ました。それによって引き起こされた、いくつかの事例を紹介させてください。

政府が夜間外出禁止令を発表

夜間外出禁止令について発表するルッテ首相（右は手話通訳者）©Naoko Kurata

2021年1月20日（水）にルッテ首相とデ・ヨンゲ保健・福祉・スポーツ大臣が記者会見し、新型コロナウイルス対策に関して、既に実施されているロックダウンの措置を強化することを発表しました。そのうちのひとつが「夜間外出禁止令」。第二次世界大戦の終結以来はじめての夜間外出制限に、国民は動揺します。

下院での承認を待ち、実際の施行は1月23日（土）からとなりました。具体的には、午後9時から翌午前4時30分までの外出を禁止するという内容です。それを破り、禁止された時間の外出を警官に見つかると罰金95ユーロ（2021年1月現在約1万2千64円）が科されます。ドイツなど他国ではもっと高額の罰金もあるようですが、決して安くはありませんよね。

夜間外出禁止令の例外も

ただし、この夜間外出禁止令には例外も設けられています。

夜間外出禁止の例外
（1）緊急事態の場合。
（2）自分自身、サポートを必要とする者、動物が緊急の（医療）援助を必要とする場合。
（3）雇用主が業務のために外出することを要請する場合。
（4）海外又はオランダ領カリブ海領域への渡航、もしくは、オランダへ到着する場合。
（5）リードで繋がれた犬を散歩しており、これを１人で行っていること。
（6）葬儀との関係で外出しており、これを証明できること。
（7）裁判官、検察からの召喚、もしくは、異議申立てや控訴の審理に関連して外出しており、これを証明できること。
（8）中等職業教育（MBO）、高等職業教育（HBO）及び大学における自身のコースのために受けなければならない試験との関係で外出しており、これを証明できること。
（9）夜の生中継の番組に出演するために外出しており、放送局からの招待状によりこれを証明することができること。

※在オランダ日本大使館発出の新型コロナウイルス感染症関連領事メール（1月22日）より抜粋（PDFファイル）

このような状況の際は、午後9時以降も家の外に出ることを許可されています。上記のような正当な理由は無いけれど、何としても家の外に出る自由を確保したいオランダの一部の人々は、上記の3番目と5番目の条件に注目しました。

犬の散歩ボランティア

ひとりで行う限り、犬の散歩には特に外出許可証なども必要ありません。そのため、20日のルッテ首相の会見以降、犬の散歩ボランティアに注目が集まっているのです。「事情があって飼い犬の散歩を自分でできない」犬のオーナーと「事情があって犬は飼えないけれど、犬の散歩をしたりお世話をしたい」人をつなぐマッチングサイトに、登録人数が急増したのだとか。「Hondjeuitlaten」というサイトには、コロナ禍以降登録メンバーが5倍になり、現在5万人の会員がいるのだそう。

犬のお世話をしてくれるのは飼い主にとってもありがたいと思いますが、夜間外出のための道具に犬を使う人がいないといいですね。

フードデリバリー制服がネットに流出

「雇用主が業務のために外出することを要請する場合」には、フードデリバリーも該当します。そのためオランダのSNSなどでは、さまざまな「フードデリバリーサービス会社」の制服が売買されているのだとか。しかも出品されるとすぐに購入されるという人気ぶり。

確かにそういった制服を着て外に居れば、「仕事での外出なのかな」と見えるかもしれませんが、虚偽の外出になるのでこれはアウトです。しかも本当に仕事での外出なら雇用者がそれを証明する文書を作成するので、それを持っていない状態なら確実に罰金を科されます。本当にそれを実行する人が出ないことを祈ります。

実施した最初の週末の結果は？

前述のとおり、オランダの夜間外出禁止令は2021年1月23日（土）からスタートしました。オランダ警察のツイートによると、最初の週末（土日）だけで5千765人に「夜間外出禁止令違反」の罰金が科されたのだとか（全国の合計）。

そしてなんと、この夜間外出禁止令に反発した人々がオランダ各地で暴動をおこすようになってしまいました。1月24日（日）以降、各地で街の破壊行動がなされています。こういった行為に比べると、フードデリバリーの制服で外出しようとする人は、ルール違反とは言っても大人しいものだったなと思います。

2021年1月現在、夜間外出禁止令は2月10日（水）の午前4時30分まで有効とされています。新型コロナウイルス感染者の数次第では、延長もあるかもしれません。早くコロナ禍が収束し、人々が自由に行動できる日が戻ってきて欲しいものです。

※この記事は、2021年1月の状況に基づいています
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