クオモNY州知事に何が起きたのか

2020年3月に世界最多感染都市となったコロナ禍のNYで、111日間毎日定例記者会見（2020年11月国際エミー賞受賞）を行い、素晴らしいリーダーシップを見せたクオモNY州知事。ニューヨーカーを束ね、励まし、諭し、時に叱り、マスク着用やStay homeなどを厳守させました。このニューヨーカーはもとより、海外からも人気が出たコロナ禍のヒーローに何が起きたというのでしょうか。

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ナーシングホーム（高齢者施設）の死者数の隠蔽

死者数を最大50％の過小報告

2021年1月28日ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は、NY州が報告したナーシングホーム（高齢者施設）での死者数が、最大50％もの過小集計していた可能性があるとする報告書を公表。

NY州の保健局では、老人ホームから病院に搬送され、病院において死亡した入居者を「施設での死者数」に含めていなかったことが発覚。クオモ州知事の補佐官の一人によると、トランプ前政権からの攻撃材料に使われることを恐れ、高齢者施設の死者数のデータを一時的に保留したとのことです。

ナーシングホームへ送られたコロナ感染者

NY Timesによると、2020年3月以降の感染患者の激増に病床が間に合わず、3月下旬ナーシングホーム（高齢者施設）に感染患者の受け入れを要請。

充分な医療器具や専門スタッフなしに、高齢者がいる施設に感染患者を収容したことで、感染が広がり死者数が急増しました。

セクハラ告発（現在7名の女性から）

2021年3月14日現在、7名の女性からセクハラ告発を受けています。アメリカはセクハラに対して処罰が厳しく、約20年間司会を務めた米NBCテレビの元ニュースキャスター マット・ロウアーは、2017年11月セクハラ告発によりクビになりました。クオモ州知事はセクハラ疑惑を否定し、事実が明らかになるまで待って欲しいとしています。

1.シャーロット・ベネット（Charlotte Bennett）氏（2020年11月までクオモ州知事の保健政策顧問）
2.リンジー・ボイラン（Lindsey Boylan）氏（2015～2018年クオモ州知事の側近）
3.アナ・ルッチ（Anna Ruch）氏（友人の結婚式で出会う）
4.アナ・リス（Ana Lis）氏（2013～2015年クオモ州知事の政策運営補佐）
5.カレン・ヒントン（Karen Hinton）氏（元報道官）
6.ジェシカ・ベークマン（Jessica Bakeman）氏　（元州議事堂報道官）
7.匿名（詳細不明）

コロナ禍のヒーローが糾弾の対象へ

コロナ禍のリーダーとして、絶大な人気を得たクオモNY州知事は、「ナーシングホーム（高齢者施設）の死者数の隠蔽」と、かつての部下を含む「セクハラ告発」で、人気が急降下。辞任を求める声が高まりました。

メディアを利用した側から、メディアに潰される側へ

コロナ禍のニューヨークで、2020年3月から6月まで111日間毎日定例記者会見を行った中で、筆者が感心したのはプレゼンテーション能力が高く、メディアの使い方が巧みだったことです。著名人を記者会見に伴ったり、NYマスク推進公共広告の動画を募集したりと、数々のアイディアに感心を寄せられるものでした。

その知事が現在では、メディアによって潰されようとしているのです。

クオモ本　増刷やペーパーバック版発行の中止

クオモ人気で、2020年10月に出版された『アメリカン・クライシス：パンデミックから得たリーダーシップの教訓（American Crisis: Leadership Lessons from the COVID-19 Pandemic ）』。人気急降下の現在は、増刷やペーパーバック版発行は中止されています。

ソリの合わないNY市長は辞任を要求

仲が良くないと言われるデブラシオNY市長は、2021年2月のTV番組で「クオモ知事の弱い者いじめは今に始まったことではなく、誰かが彼に同意しなければ、ある種の仕返しをされる」と語り、2021年3月11日の記者会見でここぞとばかりにクオモNY州知事の辞任を要求。コロナ禍の中で市長が発表した決定を、州知事が覆すことが多々あり、恥をかかされていたのはニューヨーカーのよく知るところ。

2021年3月12日、民主党上院トップのシューマー院内総務やナドラー下院司法委員長ら同州選出の有力な民主党議員が、クオモNY州知事の辞任を相次いで要求。ニューヨーク州議会の代表団の半数以上が知事に辞任を求めています。

クオモ州知事は窮地を逃れられるのか

窮地に陥っているクオモNY州知事に、日を追うごとに辞任の声が高まっていますが、「ニューヨーク州民が辞めろというまで、絶対に辞めない」と辞任を否定しています。

感染被害の酷かったNYでリーダーとして旗振りをしてニューヨーカーを導いてくれただけに、今回のスキャンダル発覚は本当に残念。セクハラ疑惑は真実なのか、ナーシングホーム（高齢者施設）に感染患者を送り込んだのは何故なのか、事実を知りたいところです。

■参照記事
米FBIがNYクオモ知事を調査、「コロナ死者数の過小報告」で　Forbes JAPAN
米ＮＹ州知事の側近、高齢者施設のコロナ死者数非公表を謝罪　ロイターJP
Does Cuomo Share Blame for 6,200 Virus Deaths in N.Y. Nursing Homes?  NY Times
ＮＹ州議会の有力議員、クオモ知事の辞任求める　セクハラ疑惑で　ロイターJP
クオモＮＹ州知事のセクハラ疑惑、被害訴える女性が実際のやり取り告白　CNN CO JP
セクハラで窮地のNY州知事、著作の出版元が「増刷中止」宣言　Forbes JAPAN

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	青山沙羅 アオヤマサラ／ライター
	はじめて訪れた瞬間から、NYにひと目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、2009年ついに上陸。 旅の重要ポイントは、その土地の安くておいしいものを食すこと。 特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、「やられたら、やり返せ」。 プロ・フォトグラファーの夫とNYでふたり暮らし。共同著書『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日（PIE International、2020年3月）』。 著者のプロフィールを詳しく見る

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