POSTED BY 林 美由紀掲載日 MAR 31ST, 2021

教育エキスパートに聞く「生き抜く力」とは?【子ども第三の居場所・本山勝寛さん】

放課後、子どもたちは家に帰ってのんびり過ごしたり、外に遊びに行ったり・・・。今の時代は、塾や習い事で忙しい場合も多いかもしれません。しかし、そのように家庭が安心できる場所で、勉強や習い事ができるということは決して当たり前のことではありません。経済や環境的な理由によって、安心して過ごせる居場所がなく孤立してしまう子どももいます。そんな子どもをサポートする日本財団の子どもサポートプロジェクト「子ども第三の居場所」について、日本財団子どもサポートチーム・チームリーダー本山勝寛さんにお話を伺いました。

目次

現代では、人種や性別などの差別や経済格差のない社会を目標にし、活動をしている国や団体が多くあります。しかし実際には、いまだ差別や格差は存在し、日本でも経済格差や教育格差などについて度々話題になりますよね。これらはすぐに解決できることではなく、さまざまな課題を1つずつ紐解き、時間をかけて答えを導きだしていく必要があります。

写真はイメージです

そのようななか、さまざまな課題をもつ子どもをサポートするプロジェクトとして注目されているのが、日本財団の子どもサポートプロジェクト「子ども第三の居場所」です。

そこで今回は、日本財団子どもサポートチーム・チームリーダーの本山勝寛さんに、「子ども第三の居場所」が行っている取り組みなどを聞いてみることにしました。子どもに必要な「生き抜く力」とは? 私たち大人が社会生活で役立てられるヒントもあるはずです。

日本財団子どもサポートチーム・チームリーダー本山勝寛さん

日本財団子どもサポートチーム・チームリーダーを務める本山勝寛さん

本山さんは、東京大学工学部システム創成学科卒業、ハーバード教育大学院国際教育政策修士課程修了。育児休業を4回取得したことがある5児の父親でもあり、独自の子育て論も展開する教育のエキスパートです。

また、韓国、中国、台湾でも翻訳されベストセラーとなった『16倍速勉強法』のほか、『自力でできる子になる好奇心を伸ばす子育て~ハーバードで世界の教育を研究し尽くした5児のパパが実践してわかった! ~』など、累計20万部以上の著書を多数出版していることでも知られています。

子どもが安心して過ごせる「子ども第三の居場所」

子ども第三の居場所

「子ども第三の居場所」とは?

さまざまな困難に直面する子どもが、安心して過ごせ、将来の自立に向けて生き抜く力を育むための居場所です。

「子ども第三の居場所」拠点イメージ

まずは、全国に500拠点を開設し、それらの拠点をハブとして、行政、NPO、市民、企業、研究者の方々と協力し、誰一人取り残されない地域子育てコミュニティをつくることで、「みんなが、みんなの子どもを育てる」社会を築いていくことを目指しています。

なぜ「子ども第三の居場所」が必要?

現在、全国で約260万人の子どもが経済的なハンディを背負っているだけでなく、子どもが直面している困難がますます複雑化・深刻化してきています。

地域のつながりも希薄になるなかで、子どもが安心して過ごせる居場所がなく、多くが孤立化してしまっています。子どもが直面している困難は家庭環境の影響を受けやすく、また、学校だけで解決することも難しいのが現状です。だからこそ、家庭や学校のほかに子ども第三の居場所が必要なのです。

具体的な取り組み内容やビジョンは?

安心できる場所で温かい食事を

勉強のサポートだけでなく、遊びやさまざまな活動、夕食、片付けなども一緒に行うことでトータルで成長を後押しするとともに、子育ての相談など保護者とも密にコミュニケーションを取っています。

研修を受けたスタッフがチームを組んで、子ども一人ひとりに寄り添って丁寧に支援することで、将来の自立に向けた「生き抜く力」を育んでいるのです。

「子ども第三の居場所」の利用方法・対象者は?

学校や行政機関、民生児童委員、地域の方々、親同士の紹介などを通して利用につなげてもらっています。孤立化しているなかでは、子どもや家庭が自分たちで訪ねてきづらい場合もあるからです。また、チラシなどを各家庭に配布することもあります。

また、一人ひとりに丁寧なサポートをしていくために利用者定員を定め、利用人数や年齢に制限を設けている場合もあります。一方で、応能負担ではありますが、経済的に公的扶助を受給していない場合も利用いただいているケースも多数あります。子どもや保護者と面談し、状況とニーズを確認して、利用の決定を行っています。

小学校低学年の利用をメインとしているのはなぜ?

十分ではありませんが、小学生高学年と中学生向けには学習支援事業が制度として各自治体で拡大してきています。しかし、困難に直面している小学生低学年への支援にぽっかりと穴があいてしまっているのが日本社会の現状です。

生き抜く力・非認知能力を育むには低年齢期での働きかけがより効果的であり、支援も行き届いていない年齢層という観点で、小学生低学年からの支援に重点を置いているのです。

生き抜く力=将来自立できる力

子ども第三の居場所で育む「生き抜く力」とは?

写真はイメージです

子どもの自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来自立することができるようになる力を「生き抜く力」として、それらを育むことを目指しています。

「生き抜く力」を育むための方法は?

何事にも前向きに取り組めるようになるために、自己肯定感を育むことがベースとなります。自尊感情が低かったり、「どうせ」が口癖になってしまっているような子どもには、まずはその子の存在をまるごと受け止め、愛情と関心をもって接し、よいところを認めて伸ばすことが必要です。

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そのうえで、基本的な生活習慣を身につけたり、生活リズムを整えたり、友達同士で一緒に仲良く遊んだり、ルールや決めごとを守ったり、大人の話を聞けるようになることなどを一つずつ身につけていきます。

そうすると、毎日の宿題などにも前向きに取り組めるようになり、学習習慣が身につき、学力の向上にもつながります。このようなトータルな取り組みをじっくりと時間をかけて行うことで、子どもの「生き抜く力」を育むことができると考えています。

家庭で「生き抜く力」を育むのが難しい場合も?

家庭によっては、話を聞いてもらえなかったり、一緒に遊んでもらえなかったり、いつも怒られていたり、さまざまなことを我慢しなければならなかったりと、親との時間を十分にとることができない子どももいます。そういう場合、自己肯定感が極度に低くなってしまうことも。

そうすると、何事にも前向きに取り組めなくなったり、人と良好な関係を結べなくなったりしてしまうこともるのです。また、勉強で分からないことがあっても、すぐに聞ける人がいないので、勉強が遅れたままになってさらに自信がなくなってしまいます。

また、基本的な生活習慣は家庭で身につけることが多いと思いますが、親が時間的にも経済的にも余裕がないようであれば、手が回っていない場合も少なくありません。親自身も困難に直面し余裕がないなかで、どうしても取り残されてしまう子どもが出てきてしまっている現状があります。

社会生活にも影響をもたらす非認知能力

「生き抜く力」を支える「非認知能力」とは?

IQや学力テストでは測れないけれども人間にとって重要な力を、総称して「非認知能力」といいます。自制心やコミュニケーション力、やり抜く力や社会性、創造性、好奇心などをがそれです。非認知能力は、将来の学力や学歴、年収や就業形態などにも影響をもたらすという研究もなされているのです。

どのようにして非認知能力を育むべき?

非認知能力を効果的に育むには、特に子ども時代が重要です。幼少期や小学生低学年などの、発達の早い時期で適切な養育環境があることが大切です。たとえば、自分がやってみたいと思ったことを最初はできなくても、「何度も挑戦してできるようになった」といった小さな達成体験を積み重ねることで、やり抜く力が育まれます。

また、年上の子や年下の子、一緒に遊んでくれたり勉強を教えてくれたりするお兄さんお姉さん、親以外の大人など、多様な人たちと関係を結ぶことで、コミュニケーション力が向上し、社会性が育まれます。家や学校以外でさまざまな経験をしたり、思いきり遊んだり、新しいことにチャレンジしたりすることで、創造性や好奇心も向上していきます。

生き抜く力・非認知能力は社会に出ても重要?

何事にも前向きに取り組み、最後まであきらめずにやり抜く力があり、人としっかりとコミュニケーションがとれて良好な関係を築ける人であれば、社会に出て、どんな職業に就いてもやっていくことができるでしょう。自立する力をもっているということです。

一方で、「生き抜く力」が十分に備わっていない場合、学業を放棄してしまったり、望んでいる就業の機会が得られなかったり、仕事をしても続かずに辞めてしまったり、職場などで人間関係のトラブルを起こしてしまったりと、さまざまな不利な状況を生み出してしまいやすいことも考えられます。

「子ども第三の居場所」の展望は?

苦しんでいる子、悲しい想いをしている子が全国にたくさんいる現状を鑑み、なるべく早急に「子ども第三の居場所」を全国に拡大していくために全力を尽くしたいと考えています。実際、「子ども第三の居場所」では子どもたちが着実に成長し、みなが笑顔になっていることを実感しています。

また、政府も自治体も、企業も市民の方々にもご参画いただけるような大きなムーブメントとしていけるよう、メディアやインフルエンサーを巻き込んで居場所の重要性を発信し、研究者と連携して子どもたちの成長をより客観的に示せる検証結果を発表するとともに、国には政策提言を行うことで、日本社会を変えていくことを目指しています。子どもがみな笑顔になれる社会となり、誰もが生き抜く力をもって大人になっていけるようになれば、未来は明るくなるのではないでしょうか。

私たちが応援できるようなことは?

子ども第三の居場所は現在全国に39拠点ありますが、今後500拠点に拡大していく計画です。そのためのご寄付を募っています。ご寄付いただいたものは、子どもに必要な支援に活用していきます。

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また、各地に拠点が増えていけば、ボランティアとして関わっていただける機会も増えてくるかと思います。「子ども第三の居場所」はまだまだ多くの方に知られていないので、日本財団子ども第三の居場所の公式サイトをSNSなどでシェアいただいたり、「自分たちの地元にもつくってほしい」と議員や行政に働きかけなどをしていただけるとうれしいです。

また、事業を一緒に実施していたただく団体と自治体を公募しています。そういった地域の方々の声が「子ども第三の居場所」の新たな開設にもつながります。

「子ども第三の居場所」が未来をつくる

日本財団の公式サイトで公開されている統計によると、経済的なハンデを背負っている子どもは7人に1人で、塾に通う余裕がない子どもは69%、虐待を受けている子どもは10万人とされており、さまざまな家庭の事情で困難に直面している子どもが多くいることがわかります。

そのような子どもの居場所をつくるプロジェクトが「子ども第三の居場所」なのです。

本山さんのお話にあるように、子どもを大人まで育てることはとても大変なことであり、同時にとても素晴らしい体験です。しかし、今、子育てを取り巻く環境は必ずしも子どもにとって安心できるものとは限りません。

経済的ハンデや虐待だけでなく、母親がフルタイム勤務しているために、「家に帰っても誰もいない・・・」などと、親とのふれあいや親に褒められる経験が少ないことで「非認知能力」や「自己肯定感が低い」子どももたくさんいるそうです。

放課後の居場所として学童保育などもありますが、自己肯定感や非認知能力が低い子どもには、大人数で過ごす学校の延長のような場所ではなく、信頼できる大人や友達、そして、温かい家庭のような感情を出せる場所が必要なのだということがわかりました。

これからの日本の未来をつくるのは子どもたちです。
一人でも多くの子どもが安心できる場所に身を置くなかで、自分やまわりの人を大切にし、自己肯定感、人や社会と関わる力、生活習慣、学習習慣など、将来の自立に向けて生き抜く力を育むことこそが、日本の未来につながっていきます。

すべての子どもが大切にされ、同じチャンスを得られる社会へ。
子どもが自分で未来を選べる人生を。

「子ども第三の居場所」がつなぐのは、子どもたちの未来、そして、私たちの未来。今、私たちにできることがきっとあるはずです。

>>>日本財団子どもサポートプロジェクト公式ホームページ

取材協力:日本財団
画像提供:日本財団

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林美由紀
ハヤシミユキ/ライター

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスライター。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、クモの巣、絵本、漫画、子どもなど。グッとくる雑貨、ハンドメイド作品、文具、生き物、可愛いものとヘンテコなものを日々探しています。いつか絵本作りに携わりたいです。

著者のプロフィールを詳しく見る

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