POSTED BY アンダルシア掲載日 MAY 5TH, 2021

【論考】米中競争で不透明さを増す世界情勢〜日本企業への影響を考える〜

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、米中競争とそれに影響を受ける可能性も高い日本の関わり方について。

目次

日本経済にも大きく関わる米中競争

近年、米中競争、米中対立という言葉をメディアで耳にしない人は少ないだろう。今日の世界情勢において米中競争は最大の問題であり、おそらく21世紀最大のイシューとして22世紀に受け継がれる可能性が高い。

そして、この米中競争は日本の平和や経済に大きく関わる問題で、今の20代や30代、そして次世代の日本人はこの問題を強く意識する必要がある。特に、身近な生活に近い経済的視点から注意深くみていかなければならない。

日中経済に摩擦が生じる可能性も

2021年4月16日、ワシントンで日米首脳会談が実施された。菅首相とバイデン大統領が初めて対面したが、この会談ではこれまでなく中国に対して強い懸念が示された。会談後の共同声明では52年ぶりに台湾問題が明記され、台湾を内政問題と位置づける中国は当然ながら強く反発し、共産党系メディアは今後の情勢によって日本は大きな対価を支払うことになると日本を強くけん制した。

中国側後もGDP世界3位の日本との安定的な関係を望んではいるだろうが、同会談で、日本が改めて米国との協力を強く示したことで、今は日中経済に摩擦が生じてくる可能性を念頭に入れておく必要がある。

過去には反日デモ・不当拘束の例も

なぜ、念頭に入れておく必要があるかというと、過去にそういったケースがあるからだ。2005年、当時の小泉純一郎首相の靖国神社参拝に中国では反日感情が高まり、各地で日本製品の不買運動が起こった。2010年には中国漁船と海上保安庁の巡視船が尖閣諸島周辺で衝突し、中国人船長が逮捕されたことをきっかけに、中国は対抗措置としてレアアースの日本への輸出制限に乗り出した。

2012年には、当時の民主党政権が尖閣諸島の国有化を宣言したことがきっかけで、中国各都市では市民による大規模な反日デモが勃発し、パナソニックやホンダ、トヨタの販売店や工場などが放火され、イオン・ジャスコの店舗が破壊され、品々が略奪される被害に遭った。

また、不当拘束という問題もある。2021年1月、中国国内でスパイ容疑で拘束されていた日本人男性2人の懲役刑が確定した。1人は2016年に拘束され懲役6年の判決を受け、もう1人は2015年に拘束され懲役12年の判決を受けたが、2人は北京にある裁判所に控訴していたが2020年棄却された。

2019年9月にも北海道大学の教授が日本へ帰る直前に北京の空港で拘束される出来事があった。同教授は中国の近現代史を専門とし、国家機関に勤務経験があることから、こういった専門性や経歴が同拘束に影響した可能性もあるが、国立大学の教員である準公務員が拘束されたのはこれが初めてである。2015年以降、中国ではスパイ容疑でフジタの社員など日本人15人が拘束されたが、どのような行為がスパイ容疑に当たったなどかははっきりしていない。

人権問題を重視するバイデン政権では

WillMillerChina / Shutterstock.com

一方、人権問題を重視するバイデン政権になってからは、中国のウイグル人弾圧を巡って米国や英国などが中国に対して制裁を発動し、ナイキやエイチアンドエムなどの欧米企業が強制労働を強いられたウイグル人が栽培した綿花を使用しないと明らかにしてから、中国のネット上ではそれら企業の製品を買うなとする不買運動が拡大した。

上述のように、過去に日中の政治関係から派生する形で経済的被害が生じたことを考えれば、ウイグル人権問題で菅政権が米国との共同歩調を鮮明にすれば、日本企業に対する不買運動が拡大することは想像に難くない。

また、フランス国内の人権NGOなどは4月、中国新疆ウイグル自治区での人権侵害を巡り、ユニクロのフランス法人など衣料品大手4社を強制労働や人道に対する罪を隠匿している疑いで刑事告発したと明らかにした。現時点でそれが受理されるかは不明だが、ウイグル問題を介して日本と欧米との経済関係にも摩擦が生じる可能性がある。

普段日本で生活していると、上記のような政治的な話は避けられやすい。しかし、現在のコロナ禍が示しているように、世界情勢は何が起こるか分からないし、米中競争のように世界はより混沌とした時代に入っている。これはほとんどの国際政治学者や政府関係者が認めることだ。若い世代の日本人はよりこういった現実を強く認識する必要がある。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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