POSTED BY 青山沙羅掲載日 DEC 24TH, 2020
【世界のニューノーマル最前線・NY】富裕層42万人がNYCから真っ先に脱出した
アメリカ合衆国ニューヨーク在住のフリーランスライター青山沙羅が、現地のニューノーマルな生活をルポする当連載。
かつては、世界中の皆が憧れた大都会ニューヨーク市。コロナ禍が起こった途端、富裕層の約42万人がNYCを見捨て、逃げだしました。今回は、そんなNYCの人口流出についてルポします。
目次
コロナの発生によりニューヨーカーは
2020年3月12日、ニューヨーク市はコロナ禍による非常事態宣言を発出。公立学校は閉鎖になり、オフィスワーカーは自宅勤務とし、医療従事者や食料品店勤務のエッセンシャルワーカー以外に自宅待機を求めました。いわゆるロックダウンが始まったのです。人口密度が高いニューヨーク市は爆発的に感染者が増えていき、ニューヨーカーは感染に怯えました。
人影が消えたマンハッタン
世界の大都市NYCのマンハッタンは、かつて誰も見たことがないゴーストタウンのような街に変わりました。巨大駅からも、地下鉄からも、ストリートからも、人影が消えてしまったのです。(写真はエッセンシャルワーカーの友人が撮影したもの)
ガラガラの地下鉄 ロックダウン後は利用者が92%減に
2020年4月、MTAのPat Foye会長がWCBS880(ラジオ局)のインタビューで、ニューヨーク市の地下鉄利用者数は、コロナ禍のロックダウンにより92%減少になったと語っています。
■参照記事
New York City subway ridership down 92 percent due to coronavirus-The Brooklyn Daily Eagle 2020年4月8日
ブロードウェイミュージカル劇場街近く 地下鉄内ではたったひとりに
筆者は2020年8月中旬、所用のためブロードウェイミュージカル劇場街近くの地下鉄を利用しましたが、ホームには上下線とも筆者以外に乗客がなく、たったひとりだったことに衝撃を受けました。ブロードウェイミュージカルは2021年5月末まで閉鎖予定なので、コロナ禍以前は賑やかだった劇場街は現在は人がいないのです。
2020年12月8日〜12月17日の地下鉄乗客数の前年比は
2020年6月に経済活動が再開され、地下鉄の乗客数はやや増えました。それでも、MTA(ニューヨーク州都市交通局)のDay-by-day ridership numbers 2020年12月8日データによると、2020年12月8日〜12月17日の乗客数は前年比で約70%〜80%減少しています。
失業率は前年比「2674%」増加
失業率は、前年比「2674%」増。3,000万人を超えるアメリカ人が、2020年4月25日までに失業手当を申請。2020年3月28日の週には、全米で680万件の失業保険申し立てがあったそうです。
■参照記事
The New York State Department of Labor Releases Unemployment Claims Numbers for the Week Ending March 28-NY Gov 2020年4月2日
NYS Department of Labor Announces Over $4.6 Billion in Unemployment Benefits Distributed to New Yorkers Since Beginning of COVID-19 Crisis-NY Gov 2020年5月1日
テナントが出て行くマンハッタンの商業物件
おしゃれで交通が便利なため、人気のユニオンスクエア(Union Square)。住宅物件も商業物件も賃貸料が恐ろしく高く、ニューヨークでもトップクラスの高額家賃。過去にはブルーウォーターグリル(Blue Water Grill)など、ザガッド掲載の有名レストランが多かったのですが、高騰する家賃に音を上げ、多くのレストランが閉業しました。さらなるコロナ打撃で、ユニオンスクエア近辺は空き物件が増加しています。
マンハッタンにオフィスがある特権は消滅?
ビジネスの街でもあるニューヨークでは、マンハッタンにオフィスを持つのがステータス。さらにジップコード(Zip Code 郵便番号)で、富裕度がわかります。ダウンタウンのファイナンシャルディストリクトやトライベッカ、代々の上流階級が住むアッパーイーストが憧れのジップコード。ウェブサイトや郵便物の住所使用およびクライアントの打ち合わせにロケーションの印象が良いため、ダウンタウンやミッドタウンのレンタルオフィスを利用する中小企業が多かったのです。
しかし、コロナ禍が起こり、多くの企業はリモートワークに。マンハッタンに住所をおく価値は下がり、レンタルオフィスは解約する人が続出しました。
観光都市NYCから観光客が消えた
世界の観光都市だったニューヨーク市からは、観光客が消えました。
ニューヨークとニュージャージーの港湾局のデータによると、2020年10月のJFK国際空港では国際線の乗客到着数は382,315人で、2019年10月と比較して86.5%減少。到着の国際線数は60.9%減少の5,691便。
Data & Statistics Airport Traffic Statistics - The Port Authority of New York and New Jersey
ニューヨーク市から出て行くニューヨーカー
ニューヨーク市は2020年3月のロックダウン以降、感染者数が爆発的に増え、感染率は世界最多に。感染を怖れ、多くのニューヨーカーがNYCから去りました。
2020年3月~5月に富裕層約42万人がNYCから去った
2020年5月15日のニューヨークタイムズ によると、富裕層が住むアッパーイーストサイド、ソーホー、ウエストビレッジ、ブルックリンハイツなどからは、居住者の40%以上が減少。富裕層の多くがNYCから逃げ出しました。
2020年3月から5月の間にニューヨーク市から去ったのは、人口の5%にあたる約42万人。ニューヨーク市5区の中でマンハッタンの感染率が最も低かったのは、マンハッタンの人口がすでに減少していたこともあります。2020年3月にNYC非常事態宣言が出てから富裕層はいち早くニューヨーク市内から脱出、郊外の別荘やセカンドハウスへ移りました。
The Richest Neighborhoods Emptied Out Most as Coronavirus Hit New York City - The New York Times 2020年5月15日
NYCから消えた富裕層が向かった先は
約42万人のニューヨーカーはどこへ行ったのでしょうか。
2020年5月15日のニューヨークタイムズ によると、ロングアイランド(ナッソー郡、サフォーク郡)、ペンシルバニアのモンロー郡、ニュージャージーのモンマス郡、ウエストチェスター郡、コネチカット郡、パームビーチのある南フロリダなど、いずれも環境が良く、ビーチなど自然に溢れ、白人が多い高級別荘地やセカンドハウスのエリア。
コロナ禍によりクラシック音楽やミュージカル公演もなく、ショッピングも楽しめず、レストランで食事もできないニューヨーク市に、富裕層は魅力を感じなくなりました。感染を怖れて自宅にこもるより、人が密集しておらず、治安が良いエリアへさっさと移動して、人生を楽しむことにしたのです。
一般庶民は富裕層の後を追う
リモートワークで通勤の必要性がなくなると、狭くて住環境が悪いのに家賃がバカ高いニューヨーク市から引っ越す人が増えました。コロナ禍の不景気の中でも、引越し業はフル回転だったほど。ニューヨーク市から離れれば、家賃が安く、広いスペースが望めます。また、失業や減収により、家賃の高いニューヨーク市から出ていかざるを得ないケースも。
ニューヨーク市マンハッタンから富裕層がいなくなると、富裕層を顧客に持つレストランや高級ブティック、ヘアサロン、富裕層住宅で働くハウスキーパー、お抱えシェフ、ベビーシッターなどは仕事を失いました。そこで、一般庶民は仕事を求めて、富裕層の後を追うことに。友人に聞いた話では、マンハッタンのヘアサロンはガラガラでも、ロングアイランドのヘアサロンは新規客で混み合っているそうです。
ニューヨーク市治安の悪化
ニューヨーク市警察(NYPD)によると、2020年11月末現在、殺人事件の被害者数は422人で前年比38.4%増、拳銃発砲事件は1,412件で前年比95.85%増。地下鉄でのホームレスも攻撃的で、しつこくなっており、暗くならないうちに帰宅を急ぐ人が多くなりました。
24時間運行だった地下鉄は、現在1am〜5pmは車両清掃時間で運休。また、NY州知事命令により、2020年12月14日(月)からNYCの店内飲食禁止。アウトドアダイニングと持ち帰りのみで、レストランは10pmで閉店(10pm〜5amは要閉鎖)とされています。
NYPD Announces Citywide Crime Statistics for November 2020 - 2020年12月4日
ニューヨーカーは戻ってくるのか
ニューヨーク市から逃げ出したニューヨーカーの多くは、ニューヨーク市郊外や近郊の州におり、遠く離れてはいません。彼らは、ニューヨーク市から本当は離れたくないのです。筆者の知人はフロリダに移りましたが、「ニューヨーク市には戻るつもりだけど、2〜3年先になるだろう」と言っています。
関連するタグ
青山沙羅 | |
はじめて訪れた瞬間から、NYにひと目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、2009年ついに上陸。 旅の重要ポイントは、その土地の安くておいしいものを食すこと。 特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、「やられたら、やり返せ」。 プロ・フォトグラファーの夫とNYでふたり暮らし。共同著書『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日(PIE International、2020年3月)』。 |
RANKINGランキング
-
NOV 18TH, 2020BY 青山沙羅
暮らし/生き方 > 海外
【世界のニューノーマル最前線・NY】自覚なし!実は新型コロナに感染していた
-
NOV 18TH, 2020BY 青山沙羅
ライフスタイル
【世界のニューノーマル最前線・NY】新型コロナウイルス抗体は永遠ではない!?
-
NOV 18TH, 2020BY 佐藤 恭央
ライフスタイル
【ホンダCT125ハンターカブ】混雑嫌いも飛びついた注目通勤モビリティとは?
-
NOV 18TH, 2020BY ノーヴィス編集部
グルメ > おでかけグルメ
【Go To Eat予約終了】各サイト受付状況速報&プレミアム付き食事券情報も
-
NOV 19TH, 2020BY 北川菜々子
ライフスタイル
【世界のニューノーマル最前線・パリ】都会脱出で田舎暮らしが新常識になる?
-
NOV 19TH, 2020BY まいてっと
グルメ
【東京・新デリバリーサービス】「Wolt」で楽しむ安い&可愛い宅配飯!限定食も
-
NOV 19TH, 2020BY フレッチャー 愛
ライフスタイル
【世界のニューノーマル最前線・UK】意外と快適!? 2度目のロックダウン
-
NOV 19TH, 2020BY sweetsholic
ライフスタイル
【世界のニューノーマル最前線・南仏】オンライン飲み会アペロスカイプとは?
-
NOV 20TH, 2020BY 倉田直子
ライフスタイル
【世界のニューノーマル最前線オランダ】普遍化した非接触・キャッシュレス化
-
NOV 20TH, 2020BY Mayumi.W
グルメ > お取り寄せ
正月に間に合う!材料&レシピ宅配「ちゃんとOisixおせち」が予約開始です
-
MAY 13TH, 2024BY Mayumi.W
ライフスタイル > ビジネス
確定申告はコツコツ派が3割!スマホだけで確定申告の準備ができる「スマホ会計FinFin」が便利
-
FEB 21ST, 2024BY onair_admin
ライフスタイル > 暮らし/生き方
高齢社会型人材サービス「キャリア」のリスキリング事業が介護業界の人材不足解消の活路に
-
OCT 24TH, 2023BY onair_admin
エンターテインメント > アート
【サステナブル】コクヨが社内イベントで社員全員をサステナブルシフト!その取り組みを公開
-
JUL 21ST, 2023BY ノーヴィス編集部
ライフスタイル
【会計バンク】子育て世代のフリーランスを応援!確定申告をスムーズにできるアプリをチェック
-
APR 25TH, 2023BY すぎさく。
ライフスタイル > ビジネス
【インボイス制度って何?】登録番号は取得した方がいいの?
-
MAR 31ST, 2023BY novice広告部【PR】
ライフスタイル > 暮らし/生き方
【夫に渡したい】男性による男性のための妊活サプリ「ストークピュアF3」とは?
-
FEB 17TH, 2023BY ノーヴィス編集部
ライフスタイル > ビジネス
【フィッシング詐欺が2年で6倍に…】詐欺被害防止のために知っておきたいこと
-
FEB 17TH, 2023BY ノーヴィス編集部
ライフスタイル > ビジネス
DXインフラ整備ソリューション「Insight Governor(インサイトガバナー)」2023年2月8日正式リリース
-
FEB 16TH, 2023BY ノーヴィス編集部
ライフスタイル > ビジネス
【田中圭出演】「クラウド会計ソフトfreee」の新TVCM、2月16日(木)スタート
-
FEB 15TH, 2023BY Mayumi.W
ライフスタイル > ビジネス
【日本初】鳥取県庁に採用されたAIアバター職員「YAKAMIHIME」と話してみた!