2022年に控える「北京冬季五輪」と中国の思惑とは

東京五輪が終わった。そして次は2022年2月の北京冬季五輪だ。既にそれに向けてのカウントダウンが始まっている。この北京冬季五輪に向け、既に競技場や関連施設は完成し、後はどう盛り上げていくかというところだ。しかし、習政権が頭に描くように事がうまく進むとは限らない。そこには、北京冬季五輪の政治化という難題がある。

開催是非で日本世論が分断したなか、中国はこれまで東京五輪を強く支持してきた。中国は東京五輪を北京の前哨戦と捉えており、コロナ禍でも開催したという既成事実がほしく、そのままの流れを北京に持ち込みたいと考えている。

諸問題で風当たりが強まる中国

だが、新型コロナウイルスの世界的パンデミック、香港や新疆ウイグルでの人権問題などを背景に、米国や欧州を中心に中国への風当たりはいっそう強まっている。特に、バイデン政権の発足以降は、米国に欧州やオーストラリアなどを加えた集団的な中国包囲網の形成が顕著になり、一部で北京冬季五輪を外交的にボイコットしようとする動きも見られる。

米国議会下院のペロシ議長は2021年5月、香港国家安全維持法やウイグル人権問題などを理由に、北京冬季五輪の開会式や閉会式の際、各国に選手団以外の首脳や政府関係者の参加を見合わせる外交的なボイコットを行うよう呼び掛けた。そして、EUの欧州議会は7月、習政権が新疆ウイグル自治区での人権侵害や香港での非民主化政策を停止しない限り、習政権からの開会式招待などを辞退するよう加盟国に求める決議を採択した。

インド太平洋地域の影響力を争う各国

一方、北京冬季五輪の政治化を臭わせる動きも最近みられる。英国の国防大臣は2021年7月、今後は英軍の哨戒艦を恒久的にインド太平洋地域に展開し、数年以内に沿岸即応部隊も展開させる方針を発表した。EUを離脱した英国は新たな国家ビジョンとして、政治経済的にインド太平洋地域への関与を強める方針を固めており、中国への対抗姿勢も打ち出している。

この英国の恒久的なインド太平洋への関与は、同地域を本拠地とする中国にとっては到底受け入れられないものであり、両国の対立は長期化するだろう。また、フランスやドイツ、オランダもインド太平洋に海軍を派遣する方針を打ち出し、インドも南シナ海に海軍部隊を派遣する方針を明らかにするなど、中国を取り巻く対立は深まるばかりだ。

北京冬季五輪を政治利用する動きも

欧米諸国が選手団の派遣を見送ることはないだろうが、上述のような開会式閉会式への不参加、もしくは北京冬季五輪の関係者への経済制裁などを欧米諸国が大会前に実行するなどの可能性は、現在の厳しい対立構図からすれば決して排除できないだろう。

本来、五輪という世界的スポーツイベントを政治の道具にしてはならない。しかし、中国と主要国との対立はこれまでになく強まっており、対立関係の行方によっては、北京冬季五輪の外交的ボイコット、大会関係者への経済制裁というオプションを欧米諸国は常に考えていることだろう。

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	アンダルシア ライター／
	政治学者　専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。 著者のプロフィールを詳しく見る

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