11人の女性からのセクハラ告発はNY州司法長官により認定へ

2021年2月以降、現・元職員等が次々と告発し、最終的には11名の女性からセクハラ告発されたクオモ前NY州知事。2020年3月に世界最多感染都市となったコロナ禍のNYで、111日間も毎日定例記者会見（2020年11月国際エミー賞受賞）を行い、素晴らしいリーダーシップを見せたコロナ禍のヒーローの支持率は、セクハラ疑惑により急降下しました。

あわせて読みたい
【世界のニューノーマル最前線・NY】クオモNY州知事がスキャンダルの窮地へ

クオモ前NY州知事に辞任を求める声

コロナ禍のニューヨークで賞賛されたヒーローは、糾弾の対象へ転落。引責辞任を求める声が日々高まりました。

クオモ元NY州知事の支持派

対して、コロナ禍の英雄を信頼して、擁護するグループもありました。

11名の女性からセクハラ告発を受けながらもクオモ前NY州知事は完全否定し、曖昧なままの状況が続きました。

【2021年8月3日】NY州司法長官がクオモ前州知事のセクハラを認定

2021年8月3日、米ニューヨーク州のレティシア・ジェームズ司法長官は、クオモ前NY州知事が部下を含む複数の女性に対してセクハラをしていたとする捜査結果を発表。11名に及ぶ女性からのセクハラを受けたという告発に対して、ジェームズ司法長官は５カ月にわたる捜査を進めていたのです。

対してクオモ氏は同日、捜査結果を否定。辞任する意向はないとし、「報告書は事実と異なる描写をしている」と反発しました。

【2021年8月8日】最側近の秘書官が辞任を表明

レティシア・ジェームズ司法長官のセクハラ認定発表の5日後（2021年8月8日）、クオモ前州知事の最側近メリッサ・デローザ（Melissa DeRosa）秘書官が辞任を表明。沈みゆく船に最後までしがみつかず、見限ったのでしょう。最側近の辞任により、クオモ前州知事の最後の砦が崩れた感がありました。

メリッサ・デローザ（Melissa DeRosa）秘書官は、最側近であっただけに多くのことを知っているはずですが、辞職理由について語らず、ボスのクオモ前州知事についても一切口を割っていません。

2021年8月10日にクオモ前州知事が辞任を表明

5カ月にわたる捜査で、セクハラが司法長官に認定されました。知事に留まる道を絶たれ、最側近の辞職もダメージになり、2021年8月10日にクオモ前州知事は辞任を表明。「コロナの英雄、ぜひ米大統領に」ともてはやされたのは、わずか1年前ほど前のことでした。

ただし本人は「セクハラ疑惑は政治的な動機によるもので、不公平で真実ではない」と否定しています。

2021年8月23日、NY州知事を辞任

辞任表明してからも公務をこなした後、クオモ氏はNY州知事を正式に辞任しました。セクハラについては最後まで否定し、「事実はいずれ明らかになる」と言い残して。

クオモNY州知事として送信した最後のメール

ニューヨーク州のメーリングリストから、筆者の元に一通のメールが届きました。差出人はクオモNY州知事となっており、タイトルは”Farewell（別れの挨拶）”となっていました。その内容は下の通り（日本語訳は筆者の意訳です）。

親愛なる沙羅へ

あなたはすでに知っているかもしれませんが、今夜（2021年8月23日）午後11時59分をもって、私はニューヨーク州知事を辞任します。キャシー・ホークル副知事が後任に就き、私たちすべてが彼女の成功を祈っています。そこで、私は州知事として最後の文書をあなたへ送りたいと思います。

ニューヨークの未来は私たちが共に成し遂げたことに基づき、私の在職期間中、ニューヨークは空に届くほど高い精神力を示しました。私たちはニューヨークを国の革新的な首都にするために、努力を続けてきました。「同性婚の合法化」と「最低賃金15ドル」の可決、「有給家族休暇（家族の出産や病気、看護のための休暇）」と「NY SAFE法（全米初の銃規制強化法）」の制定、「新しい橋や空港の建設（インフラ整備）」から「気候変動」との戦い、「人種差別による憎悪犯罪（ヘイトクライム）」と戦い、そして「新型コロナウイルス」との戦いまで、誰もやりえなかったことを私たちは共に成し遂げてきました。

私たちは望んでいたことをすべてはできませんでしたし、いつも完璧に正しいとは限りませんでしたが、私は日々懸命に働き、その結果すべてをあなたに差し出し、あなたの元へ届けたことを知っていただきたいと切に願っています。あなたのために戦う権限を、私に与えてくれてありがとう。 新型コロナウイルスを通じて、私に信頼を寄せてくれてありがとう。あなたのために働けたことを光栄に思います。

そして決して忘れないでください。ニューヨークは常にタフであり、賢く、団結し、自制心があり、愛情に溢れた場所であると。それこそが、ニューヨーカーを特別にしている本質なのです。

常に上昇志向であれ

アンドリュー・M・クオモ知事　
（意訳：青山沙羅）

Dear Sara, 

Tonight, as you may be aware, I am stepping down as Governor of New York at 11:59pm. Lieutenant Governor Kathy Hochul will become governor, and we all wish her success. So I want to send my final note to you as governor.

New York's future is based on what we have accomplished together, and during my tenure we've shown that New York has a spirit that reaches for the skies. We have worked to make New York the progressive capital of the nation. From passing Marriage Equality and the $15 minimum wage to enacting Paid Family Leave and the NY SAFE Act, from building new bridges and airports to combating climate change, from fighting against hate to fighting COVID—together we did what no one thought could be done.

We didn't get everything done that we wanted to, and we didn't always get it quite right, but I want you to know, from the bottom of my heart, that every day I worked my hardest, I gave it my all, to deliver for you. Thank you for empowering me to fight for you. Thank you for your trust in me through COVID. Thank you for the honor of serving you.

And never forget: Always stay New York tough, smart, united, disciplined and loving. It's the essence of what makes New Yorkers so special.

Ever Upward,

Governor Andrew M. Cuomo（原文）

女性として、セクハラは容認できることではなく、11名からの告発となれば、まったくの事実無根であることはないように思えます。それでもクオモ前州知事は、世界最大感染都市のニューヨークでリーダーシップを発揮し、顔を見ることも手を取ることもないながら、ニューヨーカーがひとつになるのを実感したものです。素晴らしい功績だった故に、すべてが帳消しになるような辞め方は非常に残念でした。

元秘書官による同僚宛ての辞任の挨拶（2021年8月8日付）とほぼ同じ内容？

クオモ前州知事のメールに心動かされた筆者でしたが、メリッサ・デローザ元秘書官が、2021年8月8日に同僚に宛てた辞任の挨拶（クオモ前州知事メールの15日前）を読むと、内容がほぼ同じ。クオモ前州知事の最高のブレインだっただけに、最後まで彼女の才能に頼ったのかもしれませんね（？）。

■参照記事
ＮＹ知事のセクハラ認定、州司法長官が捜査結果　クオモ氏は否定　-　ロイターJP 2021年8月3日2:35 
セクハラ認定の米NY州知事、最側近の秘書官が辞任 米報道　-　AFPBB News　2021年8月9日 17:21
米NY州クオモ知事が辞意表明　セクハラ認定で辞任圧力高まる　-　BBC NEWS JAPAN 2021年8月11日

関連するタグ

• #コラム
• #ニュース
• #ルポ

	青山沙羅 アオヤマサラ／ライター
	はじめて訪れた瞬間から、NYにひと目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、2009年ついに上陸。 旅の重要ポイントは、その土地の安くておいしいものを食すこと。 特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、「やられたら、やり返せ」。 プロ・フォトグラファーの夫とNYでふたり暮らし。共同著書『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日（PIE International、2020年3月）』。 著者のプロフィールを詳しく見る

関連するカテゴリー

• ライフスタイル
• 暮らし／生き方
• 海外