POSTED BY フレッチャー 愛掲載日 JAN 12TH, 2021
【世界のニューノーマル最前線・UK】ワクチンを開発した女性研究者の素顔は?
パンデミック終息のカギを握る英国製アストラゼニカのワクチン。同ワクチンの開発を率いたのはオックスフォード大学の女性研究者でした。そんな注目人物、サラ・ギルバート教授とはいったいどのような人物なのでしょうか?今回は、彼女の知られざる素顔をオックスフォード在住ライターが現地からご紹介します。
目次
猛威を振るう変異種
2020年12月中旬に新たに報告された新型コロナウイルスの変異種は、より強い感染力を伴い、2021年1月現在もイギリスではものすごい勢いで感染が拡大しています。2021年1月5日からイングランド全域で3度目のロックダウンが始まりましたが、連日5万人を超える新たな感染者を増やし、一日で死亡した人も1,300人を超すなど、2020年春の1度目のピーク時よりも厳しい状況が続いています。
オックスフォード・アストラゼニカ製ワクチンが接種開始
そんななか、2021年1月上旬にオックスフォード大学と製薬大手のアストラゼニカが共同開発したワクチンの接種が始まりました。2020年12月下旬にいち早く認可が下りたアメリカ・ファイザー製のワクチンより6分の1ほど値段も安く、冷蔵保存が可能など、扱いやすいこもあって多くの人に接種が可能であると期待されています。
開発を率いたサラ・ギルバート教授ってどんな人?
オックスフォード大学のワクチン開発チームを率いているのは、サラ・ギルバート教授です。今回のパンデミックの救世主のひとりになるかもしれない彼女ですが、実は大々的に脚光を浴びたりすることを好まず、メディアでの露出を必要以上にしないため、その素顔はまだあまり知られていません。
オックスフォード卒ではない数少ない教授
サラ・ギルバート教授は、靴業界で働く父と英語の教師をしていた母のもとに1962年、イギリス中部のノーサンプシャーに生まれます。学生時代に医学を志し、イーストアングリア大学で生物学を専攻。また、音楽家の母親の影響でサックスフォンも趣味としており、大学時代は狭い学生寮を避けて近くの森で演奏をしていたそうです。
その後、イングランド北部にあるハル大学で遺伝学の博士号を取得。イギリス国内でいくつかの研究職に就いた後、オックスフォード大学で研究をスタートさせました。サラ・ギルバート教授は、オックスフォード大やケンブリッジ大出身でないことや、アメリカなどの海外への研究留学経験がないことなど、実はオックスフォード大学教授としてはとても珍しい経歴を持っている人でもあるのです。
3つ子の母・イクメンの妻・科学者
科学者としては「スーパーウーマン」と表現されることも多いサラ・ギルバート教授ですが、実は3つ子の母親でもあります。同じく科学者であったパートナーが専業主夫の道を選び子育ての多くを負担しており、新しいかたちの家庭を築いた先駆けファミリーでもあります。
子どもたち3人とも、やはり大学ではサイエンスを専攻しており、今回のワクチン開発にもボランティアとして自ら治験に参加しています。
コロナウイルスMERSのワクチンを開発、治験中に新型コロナが広まる
サラ・ギルバート教授のチームが他の研究チームより大幅に早く有効なワクチンを開発できたのは、決して「運」や「ハードワーク」だけが理由ではありません。彼女のチームは、もともと別のコロナウイルスが起因するMERS(マーズ)のワクチンを開発中でした。
今回の新型コロナウイルスの存在が明らかになった2020年1月には、このMERSのワクチンはすでに臨床試験中。そのため、新型コロナウイルスの遺伝子解析が終わったと同時に同じアプローチで、ワクチンの開発を猛スピードで進められたというわけです。
今回のワクチン開発に携わった人たちにはとっては、運よく効くワクチンが作れたわけではなく、効くとわかっていたものを寝る間を惜しんで構築した、という感覚が強いそうです。
ワクチンが希望の光
3度目のロックダウンに入ったイギリス。世界中が希望を託すワクチンの開発チームを率い、今もっとも重要な科学者のひとりと言えるサラ・ギルバート教授は、控え目で音楽を愛する3つ子の母親でもあったのです。ワクチンの普及とともに、世界中のパンデミックの終息を願ってやみません。
参照:https://www.bbc.co.uk/newsround/55058854
[All Photos by Shutterstock.com]
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20代のころからイギリス在住。科学者。フットボールに夢中な男の子の母親として奮闘中。ヨーロッパ各地のマーケット(蚤の市)散策、ワイン、見晴らしのよい絶景スポット、特に海が大好き。 |
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