POSTED BY アンダルシア掲載日 DEC 1ST, 2021

【論考】昨今の「台湾情勢」と米中の思惑・周辺国が備えるべきこととは

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、台湾と米国の安全保障協力や、台湾と欧州諸国などとの接近など、中国を意識した台湾の動きや、中国の思惑など「台湾有事」にまつわる考察をまとめてみる。日本が平時から備えておくべきこととは・・・。※写真はすべてイメージです

目次

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台湾有事は実際に起こり得るのか

最近の国際ニュースを見ていると台湾関連の話題が目立つ。台湾と米国の安全保障協力や、台湾と欧州諸国の接近など、中国を意識した蔡英文政権の活動が活発化しており、習政権の言動もより厳しさを増している。日本のメディアでも「台湾有事」との報道も増え、世論ではその行方を心配する声が上がっている。では実際のところ、その可能性はどれほどあるのだろうか。今回は、以前の台湾論考を深掘りする形で、それについて考えてみたい。

中国との偶発的衝突に警戒

まず台湾有事といっても、それにはさまざまなケースが考えられる。究極論は、中国軍が台湾に侵攻し、米軍が関与することで米中衝突になってしまうシナリオだが、これは可能性としては限りなくゼロに近い。中国の軍事力が鋭く増加傾向にあるのは事実だが、それでも総合的な軍事力では米軍が上回り、中国としても台湾侵攻はかなりのリスクとなる。

また、台湾近海で戦争が勃発すると、中国の海洋貿易もかなりのダメージを受けることになり、自らの首を絞める結果になる。よって、それが短期的に実行されることはないと言っていいだろう。

しかし警戒するべきは、海上における中国海警局と台湾船の衝突、上空での中国軍機と台湾軍機の衝突など偶発的な事態が発生することで軍事的緊張が一気に高まり、軍事的衝突がエスカレートするというシナリオだ。米国や台湾の国防当局は、中国の台湾侵攻について最近具体的な言及をしているが、彼らが実際最も警戒しているのはこの偶発的衝突だろう。我々が考えなければならないのは、中国側の台湾への認識は日本や米国と大きく異なるということだ。

台湾を「国内の一部」と認識する中国

習政権は、新疆ウイグル自治区やチベット自治区、そして香港と同じように、台湾を絶対に譲ることのできない核心的利益に位置づけており、台湾を国内の一部と認識している。中国は2005年3月、台湾の独立阻止を目的に反国家分裂法と呼ばれる法律を全人代(日本の国会に相当)で採択し、その条文では「平和的統一の可能性が完全に失われた場合、非平和的措置および他の必要な措置をとる」と明記しており、軍事的措置を否定していない。しかも、現在、台湾の蔡英文政権は独立思考が強く、中台関係は極めて悪化しており、習政権は神経を尖らせている。

また、依然として米軍の力が優位ではあるが、この地域で米中の軍事力が拮抗してきていることは事実であり、軍事力で中国が米軍を抜くという現実になった場合、中国が行動を強めてくる可能性があり、台湾有事は中長期的に懸念される問題だ。

日本も「台湾有事」に備えるべき

日本は台湾有事について、平時からそれについて真剣に考える必要がある。台湾有事が日本に与える影響はさまざまなケースが想定される。まず、台湾に滞在する日本人の退避である。台湾には2万人あまりの日本人が生活をしているが、その多くが企業駐在員やその帯同家族であり、仮に台湾有事が本格化すれば、台湾から日本へ安全に退避するというシナリオは現実的ではなくなる。

よって、台湾に展開する企業においては、その可能性が低いものの、潜在的なリスクは常にあるとの認識のもと、日々台湾情勢について情報を収集・分析し、平時のときから駐在員の安全保護や避難できる体制を社内で構築しておくことが重要となる。

また、台湾有事は必然的に日本のシーレーンに影響を与える。シーレーンは中東からインド洋、マラッカ海峡、南シナ海、バシー海峡、沖縄以東を通過して日本本土に繋がるが、台湾有事となれば、日本へ向かう商船や石油タンカーの安全な航行が阻害され、中国海警局や海軍による臨検や拿捕の対象になる恐れがある。

最近も南シナ海で、フィリピンの民間補給船がフィリピン軍兵士の常駐する岩礁に物資を運搬している最中に、中国海警局によって航行を妨害された上に放水を受ける事態が発生したが、日中関係の悪化によって日本の船舶が同様の被害を受ける可能性は十分にある。台湾有事は日本に安全保障と経済の視点から大きな悪影響を与える。今のうちから危機管理対策を強化する必要がある。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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