POSTED BY アンダルシア掲載日 DEC 15TH, 2021

【論考】2021年・世界情勢の変化と企業の海外活動における影響とは

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、2021年に世界で関心を寄せられ情勢を大きく変化させた、「人権デューデリジェンス」、「新型コロナウイルス」、「クーデター」を振り返り、それらが日本企業にどのような影響を及ぼしたのかを考えてみる。※写真はすべてイメージです

目次

オミクロン株の拡大で予断を許さない感染症

今年も終わりが近づいてきた。2021年は日本でも夏にデルタ株の猛威が振るい、多くの日本人が海外への渡航、帰国で制限を受ける格好となった。それ以降、日本国内では新型コロナウイルス感染症が幸いにも落ち着いているが、隣国の韓国では12月に感染者数が最悪の7,000人を超え、フランスやドイツなど欧州では再び感染者数が激増。オミクロン株の拡大がそれに拍車を掛ける恐れもあり、来年も世界は新型コロナウイルスというパンデミックに奔騰される可能性が高いと言える。

そのようななか、今年(2022年)、企業は世界情勢からどのような影響を受けただろうか。こん開はより具体的なトピックを3つほど挙げてみたい。

経済活動の制限にも及ぶ「人権デューデリジェンス」

 Arnaud Brian / Shutterstock.com

まず、「人権デューデリジェンス」だ。バイデン政権の発足によって、米国は人権問題で中国に強く迫るようになったが、欧米の企業の間では、取引先の強制労働や社会での差別など人権状況の改善に取り組むべきという人権デューデリジェンスの意識が広がりを見せた。特に、世界で中国の新疆ウイグル人権問題が注目を浴び、強制労働を強いられているウイグル人によって作られた品々を使うなんてけしからん!とする動きが強まり、一部の日本企業はそれによって経済活動を制限されることになった。

Savvapanf Photo / Shutterstock.com

たとえば、カゴメは新疆ウイグル産トマトの使用停止を発表し、ミズノやワールドは綿花の使用停止を発表した。反対に、ウイグル産綿花を使用するユニクロを展開するファーストテイリングは、Tシャツの米国への輸入が差し止められ、フランスでは人道に対する罪の隠匿の疑いで現地人権NGOから刑事告発される事態となった。

バイデン政権はこの問題を理由に制裁対象企業を拡大し、2022年北京冬季五輪では外交ボイコットに踏み切ったが、来年以降人権問題を背景とする企業活動の制限はさらに拡大する恐れがある。

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企業側の危機管理も問われた「新型コロナウイルス感染症」

Galih Yoga Wicaksono / Shutterstock.com

また、今年夏はASEANでは「新型コロナウイルス」が猛威を振るい、被害が各国でこれまでにない規模となった。特に、被害が最も深刻となったインドネシアでは、これまでに日本人21人が、タイでは6人が犠牲になったことが明らかになった。インドネシアなどでは外出規制などロックダウンが強化され、事実上日本人が帰国できない状況となり、もう少し早く帰国できなかったのかと企業側の危機管理意識が問われることもあったという。

「クーデター」による変化と企業の対応は

kan Sangtong / Shutterstock.com

さらに、今年2月には「ミャンマーで国軍によるクーデター」が勃発した。政治情勢が一転し、情勢が一気に不安定化になったが、正に日本企業はそれに直面することになった。近年、ミャンマーは経済フロンティアとして外国企業の注目を集め、進出する日本企業も増加の一途を辿っているが、突然のクーデターにより国軍と市民との間で衝突が各地で発生し、犠牲者が相次ぐだけでなく、外出禁止令の発令や突然の物価高騰など日常生活への影響も出てきたことから、ミャンマーから駐在員を退避させる動きが企業で加速化した。

しかし、駐在員の退避ができない、大幅に遅れる企業が多くみられた。今日、国軍が実権を握るなかで情勢は以前より落ち着いているというが、来年も予断を許さない状況と言えるだろう。

以上のように、企業の経営、駐在員の安全という2つの視点から紹介したが、いずれも海外に展開する企業にとっては最重要事項である。今回挙げた「人権デューデリジェンス」、「新型コロナウイルス」、「クーデター」はまだ続く問題であるが、おそらく来年は新たなグローバルイシューも現れることだろう。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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