POSTED BY 倉田直子掲載日 JAN 30TH, 2022

コロナ規制抗議は美術館やホールでのヘアカット!?【世界のニューノーマル最前線オランダ】

こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。コロナの状況が一進一退でなかなか沈静化しないオランダは、2021年12月中旬から再びロックダウンし、さまざまなサービスが停止しました。年明け1月中旬から店舗や施設の営業に関するルールが一部緩和されたものの、政府がサービス再開を認可しなかった業界は大激怒。今回は、そんな営業再開できなかった業界の人々が巻き起こした抗議行動を紹介させてください。(Top image by Milagro Elstak)

目次

オランダ全土が再ロックダウン

カフェやレストランのイートイン営業が禁止に

2021年12月18日、オランダ政府は新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の感染拡大を防ぐため、翌19日から少なくとも2022年1月14日までロックダウンをすることを発表しました。子どもたちの通う学校は、本来の予定より1週間早い12月20日から冬休みに突入。さらに、スーパーマーケットや薬局のような生活必需品を扱う店舗と、ガソリンスタンド、図書館、自動車学校、公証人事務所、弁護士事務所等などの社会生活に必要な施設は営業を許可されましたが、その他の店舗や施設は軒並み営業停止を命じられてしまったのです。

具体的には、飲食店(配達と持ち帰りはOK)、小売店(スーパー、薬局をのぞく)、非医療の美容系サービス、スポーツ施設や美術館などの芸術施設の営業がNGとなりました。

業界で明暗を分けたロックダウン緩和

営業再開できた業界とできなかった業界が

そして年明けの2022年1月14日にオランダ政府は、1月15日から適用されるコロナ規制の変更について発表。ソーシャルディスタンスなどのルールは依然としてあるものの、以下の業種がサービス再開OKになったのです。

【営業再開OK】
小売店、非医療の美容系サービス(ヘアカットやネイルなど)、スポーツ施設

一方で、なぜか以下の業種は引き続きロックダウン継続を言い渡されてしまいます。

【営業再開NG】
飲食店でのイートイン、美術館や劇場、映画館などの文化芸術施設

政府からはそのOKとNGの差に関する明解な説明もなく、営業再開をお預けされた業界会関係者は、メディアのインタビューなどでも落胆と怒りを隠せない様子でした。

飲食店が1日限定オープン

※画像はイメージです。実際の抗議活動の際のものではありません (c)Naoko Kurata

しかし、多くの業界関係者は、黙って泣き寝入りはしませんでした。業界の明暗を分けた政府発表の翌日である1月15日には、多くのカフェやレストランが政府への抗議行動として1日限定でイートインサービスをオープンしたのです。

そこまでは筆者も報道を普通に読んだのですが、驚いたのはいくつかの自治体は市長容認のもとでその抗議行動(飲食店の1日オープン)を実施したということ。ただし、容認と言っても市長が積極的にその活動を支援しているということではなく、「午後5時までの営業なら、注意のみに止めて罰金などを科さない」というようなニュアンスのようですが。それでも、日本人の感覚ではあまり想像がつかないことだったので、オランダのお国柄のようなものを感じました。

劇場を1日限定のヘアサロンに!

ハッシュタグ # kapsalontheater をつけて多くの文化・芸術施設が抗議活動に参加
ハッシュタグ #kapsalontheater をつけて多くの文化・芸術施設が抗議活動に参加 (c) kapsalontheater

さらに1月19日には、同じく営業再開NG判定をくらった文化芸術関連施設たちが抗議行動を起こします。その名も「Kapsalon Theater」(劇場ヘアサロン)という、「(営業再開が許可された)美容系サービスを劇場でやっちゃおう!」というプロテストです。

ゴッホ美術館でシェービングを体験する参加者 (c) Maurice van der Meijs / Van Gogh Museum

例えば、ゴッホ美術館などその活動に賛同した美術館や劇場を1日限りのサロンにし、ヘアカットやネイルサービスが受けられるというものです。例に挙げたゴッホ美術館では抽選でしたが、ヘアカット33ユーロ(約4,240円)、シェービング19ユーロ(約2,440円)、ネイルトリートメントは25ユーロ(約3,210円)からサービスが受けられたようです(料金は施術者への直接支払い)。

世界的ホールのステージで行われるヘアカット
世界的ホールのステージで行われるヘアカット (c)Milagro Elstak

そしてオランダ国内でも特に話題を呼んだのが、世界的にも有名なコンサートホール「コンセルトヘボウ」(Het Concertgebouw)で実施されたカットサロン。

オーケストラとヘアカットのコラボレーション
オーケストラとヘアカットのコラボレーション (c)Milagro Elstak

ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏をBGMにヘアカットしてもらえるという、何とも贅沢なシチュエーションです。

客席でヘアカットを待つ女性たち
客席でヘアカットを待ちながら音楽を楽しむ人々 (c)Milagro Elstak

カットの間だけではなく、順番を待っている間も「客席」で演奏を楽しめた様子。

普段着の演奏者たち
普段着の演奏者たち (c)Milagro Elstak

これはコンサートではなく、あくまでもオーケストラの皆さんは「ヘアカットを行っている横でリハーサルを行っているだけ」ということになっています。そのため、皆さん服装がカジュアルですね。コンサートの時のビシッと正装された姿も素敵ですが、プロのオーケストラが普段は異なるリラックスしたスタイルで演奏されているのも新鮮に感じられます。

そういった抗議活動の効果があったのか、オランダ政府は2022年1月25日に文化芸術施設や飲食店の再開を発表(26日より、営業時間制限などを設けたうえで再開)。コロナ規制はオランダ社会にも暗く憂鬱な影をおとしていますが、その中でもこういったユーモアと意志をあわせ持ったアクションをおこせることは素晴らしいと思います。業界を超えて連帯できるオランダ社会を心強く感じたイベントでした。

[Photos by shutterstock.com ]
[De horeca is vandaag op veel plekken toch open, uit protest tegen de maatregelen]
[Kapsalon Theater]
[Kapsalon Van Gogh Museum]
[In beeld: Kapsalon Het Concertgebouw]




倉田直子
クラタナオコ/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/)

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