中国における台湾について

最近、国内ではウクライナと台湾を比較して報じるメディアがあるが、中国にとって、ウクライナと台湾は全く別次元の問題である。当然ながらウクライナは主権国家であるが、中国から見た台湾は国家ではなく、あくまでも国内の1つの地域でしかない。よって、ウクライナ情勢では侵略という言葉が頻繁に使用されているが、中国にとって台湾への軍事侵攻は、厳密には侵略ではないのである（侵略とは国家が国家を軍事侵攻することを意味する）。我々は中国が台湾に侵攻するかしないのかという議論をよくするが、中国はこれまで侵攻しないと言ったことはなく、要はいつどのような場合に侵攻するかが現実の問題となるのだ。

今後キーとなるのは「米国の対応」

ウクライナ情勢ではロシアの孤立が目立つ一方、我々は米国の対応に注視するべきだろう。バイデン政権は経済制裁を強化しているが、依然として軍事的介入は取らない姿勢を堅持している。これを中国はどう観ているのだろうか。

中国が米国は他国の紛争に介入できないと確信すれば、台湾への侵攻を本格化させる恐れがある。このようなタイミングで習氏が軍の海外派遣強化を指示した背景には、そういった思惑が働いている可能性があると言っていい。日本周辺海域で中国軍の力が米軍を上回ることになれば、台湾だけでなく、南西諸島や南シナ海などでも中国軍の活動がより活発化する恐れもあるだろう。

発展途上国への中国軍派遣も

しかし、中国軍の海外派遣はそれだけに収まらない。中国は巨大経済圏構想「一帯一路」に基づき、アジアや中東、アフリカ、中南米と、多くの途上国へインフラ整備などで経済支援を実施しているが、今後は地元政府の要請により、アジアやアフリカなどで平和構築・治安維持を名目に中国軍を派遣する可能性がある。

たとえば、中国は東南アジアにおいてラオスやカンボジアと密接な関係にあるが、近年中国はカンボジア南部にあるカンボジア海軍のリアム基地に建造物を建設するなど軍事的な影響力を高めており、米国は懸念を強めている。

今後の動向を予想することは簡単ではない。しかし、ロシアがウクライナを侵略し、米国が軍事的関与を示さないという現実が長引けば長引くほど、中国は自らの影響力拡大を目指し、覇権的な行動をエスカレートさせることだろう。

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	アンダルシア ライター／
	政治学者　専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。 著者のプロフィールを詳しく見る

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