POSTED BY 倉田直子掲載日 FEB 15TH, 2021

【世界のニューノーマル最前線オランダ】暴動にはコーヒーとサッカーサポーター

こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。コロナ禍が続くオランダでは、2021年1月23日(土)から夜間外出に制限が設けられ、午後9時から翌午前4時半までの外出が禁止になりました。それによって巻き起こされた騒動と、なんともオランダらしい解決方法をご紹介します。

目次

夜間外出制限への反発から暴動が

オランダ各地で暴動が発生 ※写真はイメージです

現在オランダは、夜間外出禁止令が出されています。それを破り、禁止された時間の外出を警官に見つかると罰金95ユーロ(2021年2月現在約1万2千円)が科されます。

それに怒ったのが、オランダの(一部の)若者たち。コロナ禍が始まってから1年近く、慣れないマスクの着用や来客人数制限などの新しいルールを課されてきた彼らの不満が、ここで爆発してしまったのです! 2021年1月24日から、オランダ国内のあちこちで若者たちが街で暴れまわり、破壊行為をなしていきました。中には、暴徒に店内を荒らされた店舗も。悲しみにくれる店主の様子がニュースで報道されると、国内の同情を集めました。

そうして、「なんとか暴動をおさめなければ」という気持ちがオランダの人々のなかに芽生えていきます。

市長と警察がコーヒーを準備

警察がコーヒースタンドを準備して待機 ※写真はイメージです

オランダの夜間外出制限に対抗した暴動の提案や連絡は、主にテキストアプリやSNSでなされています。けれどあからさまに書かれる訳ではなく、「コーヒー2.0を飲みに集まる」というような隠語が用いられていたのだそう。

それを察知したライデンという街の警察と市長などが、暴動の集合場所である街の広場に即席コーヒースタンドを設置。

Politie Leiden Midden

上記のライデン警察署のフェイスブックページで、当日の様子をご覧になれます。結局その日は、警察と市長たちが通行人と一緒にコーヒーを和やかに飲みかわし、平和に解散したそうです(19歳の暴動首謀者は後に逮捕)。

ちなみにオランダは、世界で一番コーヒーをよく飲む国として知られています。集計する年度によっては北欧の国にトップを譲ることもありますが、上位常連国なのです。暴動の隠語にコーヒーが用いられるのも、その阻止にコーヒースタンドが設置されるのも、なんともオランダらしさが出ていますね。

サッカーサポーターが街を夜警

サッカーサポーターが街を巡回して夜警 ※写真はイメージです

いくつかの街では、暴動から街を守るために意外な人々が立ち上がりました。それは、ご当地サッカークラブのサポーターたち。アルクマールという街では、サポーターたちが自警団を結成し警察と共に街を巡回しました。他にも、マーストリヒトやデンボッシュという街でも同様のサッカーサポーターによる自警団が結成されています。

NEDERLANDSE VOETBALSUPPORTERS ALS BURGERWACHT TEGEN RELLEN

上記のサイトで、「MVVマーストリヒト」サポーターたちが街をパトロールしている様子がご覧になれます。数百名の集団が、(恐らくクラブソングを)歌いながら練り歩く様子は非常に迫力がありますよ。そのおかげで、マーストリヒトの街の破壊行為は防ぐことができたそうです。

アムステルダム国立美術館に収蔵されているレンブラントの「夜警」

ただし1935年以来、オランダには「民間人は政府による明示的な許可と調査なしに集団でパトロールすることはできない」という決まりがあるのです。ソーシャルディスタンスを保つ、大人数で集まらないというコロナルールにも抵触するので、この行為は実は玉虫色。けれど、そのお陰で街が守られたことに異論を唱えるオランダ人は居ないのではないでしょうか。

延長された夜間外出禁止

人の想いが街を守る

オランダの夜間外出禁止措置は、当初の予定を延長し、少なくとも2021年3月3日(水)午前4時30分までは継続されることが確定しています。状況次第では、再延長もあるかもしれません。

一部の若者たちの不満はまたいつ爆発するか分かりませんが、それ以上に街を守りたいという人々の想いを信頼して生活していきたいです。

※この記事は、2021年2月の状況に基づいています

[Man (19) aangehouden na rellenoproep in Leiden; politie zet koffie klaar]
[Voetbalfans als burgerwacht: heel pragmatisch, ‘maar het mag niet’]
[Photos by Shutterstock.com]


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倉田直子
クラタナオコ/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/)

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