POSTED BY 倉田直子掲載日 MAR 22ND, 2021

【世界のニューノーマル最前線オランダ】ドライブスルー投票所が登場

大きな投票箱に、車から投票

こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。コロナ禍でソーシャルディスタンスを保つスタイルがすっかり定着してきたオランダ。日々の生活にさまざまな工夫がなされていますが、今回は「コロナ時代における投票の工夫」を紹介させてください。

目次

4年ぶりの第二院選挙

街に設置された、選挙ポスター(2017年撮影)
街に設置された、選挙ポスター(2017年撮影) ⒸNaoko Kurata

二院制をとるオランダ議会の第二院(下院)は、任期が4年で、2021年3月に4年ぶりの選挙が行われました。オランダでは、一番大規模な国政選挙になります。結果は与党が引き続き第一党の議席数をキープし、左派の議席数が減るという内容に。オランダに住む者としてこの結果も気になるところですが、私が一番注目したのは、そのさまざまな投票スタイルです。

投票所に行列をつくる有権者たち
投票所に行列をつくる有権者たち(2017年撮影) ⒸNaoko Kurata

上の写真は、前回(2017年)の第二院選挙の際に投票所を撮影したものです。投票所は街のさまざまな場所にありますが、人が集中する時間帯は、いまで言う「密」状態でした。これは、コロナ時代には危険なスタイルですね。そのため、今回(2021年)の選挙には、さまざまな投票バリエーションが生まれたのです。

高齢者には郵便投票も

(写真はイメージです)

まず講じられたのは、投票所を3日間開くこと。従来は投票日は一日のみだったのですが、今回は投票所に一斉に人が押し掛けるのを防ぐため、2021年3月15日から17日まで開かれたのです。

さらに、新型コロナウィルスのリスクグループに所属しているとされる「70歳以上の有権者」には、郵便投票が認められました(義務ではない)。事前に70歳以上の有権者の自宅に投票用紙や返信用封筒が送付されるので、それを返送して投票完了とするのです。対象となる高齢者の約三分の一がこの郵便投票を利用したといわれています。

ただし、慣れない郵便投票に手間取った人も多かったよう。投票用紙を封入する内封筒を使用しなかったり、既定の返信用封筒を使用しなかったりするミスが多発したのだそう。これらは無効票になってしまうのですが、非常にもったいないですね。何とか次回までには救済策を講じて欲しいと思います。

ドライブスルー投票所が登場

ドライブスルー投票のシステムを解説する看板
ドライブスルー投票のシステムを解説する看板 ⒸNaoko Kurata

そんな中、一部の投票所は「ドライブスルー投票」を採用しました。

マスクと手袋を身に着けたスタッフから投票用紙を受け取る
マスクと手袋を身に着けたスタッフから投票用紙を受け取る ⒸNaoko Kurata

投票所に直接車で乗りこみ、まずスタッフから投票用紙と赤鉛筆を受け取ります。

大きな投票箱に、車から投票
大きな投票箱に車から投票 ⒸNaoko Kurata

そして、車に乗ったまま投票用紙に記入します。その後、数メートル先にある投票箱のところに車を横付けし、投票用紙を投函するのです。自家用車がある人なら、「密」を防げる有効な方法だと思います。

「サイクルスルー投票所」まで

自転車に乗るオランダ人
自転車に乗るオランダ人(2017年撮影) ⒸNaoko Kurata

その他にも、オランダならではの投票方法も。実はオランダは「国民よりも自転車の数のほうが多い」といわれる自転車大国なのですが、そんな日常の足の自転車でそのまま乗り込める「サイクルスルー投票所」まで登場しました。筆者が見学に行った投票所にはなかったのですが、アムステルダムの市議会委員のツイートで、その様子がご覧になれます。
https://twitter.com/jan_bert/status/1372149048812126214

自転車の車体の分だけはソーシャルディスタンスを保てるので、これはこれで有効な「密」回避方法だと言えるのではないでしょうか。

投票日は夜間外出禁止令も緩和

投票の象徴、赤エンピツ
投票の象徴、赤鉛筆 ⒸNaoko Kurata

オランダでは、投票用紙に記載された候補者の名前に赤鉛筆で印をつけて投票します。そのため、投票所には赤鉛筆が常備されています。従来はブースにチェーンで繋がれ、持ち帰れないようになっています。けれどこのコロナ禍では、使用後の赤鉛筆は消毒されなければいけません。その手間を省くため、今回は多くの投票所が使用後の赤鉛筆を「お持ち帰りOK」にしました。

ところで、以前お伝えしていた「午後9時以降の夜間外出禁止令」は、オランダでまだ有効です。けれど選挙の投票所は3月17日の午後9時まで開かれることが決まっていました。そのため、「投票に行っていた、または投票所のスタッフだった」と口頭で説明できれば、「投票日当日は外出が午後9時より多少オーバーしても不問にする」と公式に発表されていたのです。その際にこの赤鉛筆を持っていれば、投票の証明になり更に心強いと噂されていました。厳密なルールも、状況によって柔軟に対応できるのは、オランダらしいなと思います。

投票所への案内
投票所への案内(2017年撮影) ⒸNaoko Kurata

次回オランダのこの第二院選挙が行われるのは、2025年の予定。その頃には、どんな世界になっているでしょうか。また新しいスタイルが生まれているのか、それともコロナ以前のスタイルに舞い戻っているのか。4年後に、またこの「novice」でリポートしたいと思います。


※この記事は、2021年3月の状況に基づいています
[Waarom kunnen alleen kiezers van 70 jaar en ouder per brief stemmen?]
[Stemprocedure veel te ingewikkeld voor ouderen: 'Zonder uitleg is het niet te doen’]
['Derde van de 70-plussers heeft stem al uitgebracht']
[Mag iedereen 3 dagen stemmen en hoe zit het met de avondklok? Zo werkt stemmen in coronatijd]
[Photo by Shutterstock.com]



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倉田直子
クラタナオコ/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/)

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