NY市長が860万人のニューヨーカーに約束したこと

2020年、コロナ禍の感染拡大によりニューヨーク市は3月中旬からシャットダウン。多くのニューヨーカーが自宅待機を求められ、皆が失業や蓄えが底をつくことに怯えました。

そこでデブラシオNY市長は、2020年4月16日に行われた記者会見で、皆が心配している4つのことを約束してくれました。

まずはじめに、ニューヨーカーの健康を守ること
2番目に、あなたの安全を守ります
3番目に、あなたの食卓に食べ物があることを確約します
4番目に、ホームレスになることなく、あなたの頭上に屋根がある（住宅の確約）こと

これらは基本であり、生活するのに重要なことです。
意訳：青山沙羅（4月16日デブラシオNY市長の会見より）

この4つの事項（健康、安全、食糧、住居）は、下記を意味します。

1.新型コロナウイルス感染を最大限に防ぐこと
2.失業や経済苦で、犯罪や治安の悪化が起こらないこと
3.失業による貧困、スーパーマーケットの閉鎖や営業店の絶対数の少なさで食糧難にならないこと、飢える子どもがいないこと（ニューヨークの子どもの10人にひとりはホームレスである）
4.住宅があること（失業により家賃が払えなくても、家主はテナントを強制退去できない立ち退き猶予措置が2020年12月末まで有効）

無料の食糧配給は、学校支給のフリーミールから始まった

ニューヨーク市内の公立学校は、2020年3月16日（月）から閉鎖されましたが、子どもたちに対して持ち帰りの朝食と昼食（grab & go）を学校において提供し始めました。

また、2020年4月3日（金）からは、同じ内容を大人にも提供。子どもと同伴家族が受け取れる時間は、月〜金曜日の7:30am〜11:30am、大人が受け取れる時間は、月〜金曜日の11:30am〜1:30pmでした。

朝食はミルクとクッキーやフルーツなど、ランチはサンドイッチ、ベーグル、チーズなど、筆者も何度か頂いてみました。とはいえ、小学生から大人まで同一の内容なので、育ち盛りの中高生や大人にはボリュームが少ないかもしれません。

2020年11月19日には、grab & goからコミュニティーミールへ変わり、大人は毎日3:00pm〜5:00pmに受け取ることが可能に。

公立学校フリーミールの特徴

配給頻度：月〜金曜日の毎日
配給内容：朝食とランチの２食分もらえる。ローファットのミルクあるいはチョコレートミルク、ジュース、サンドイッチ、果物、野菜、ヨーグルト、チーズ、クッキーなど
身分証明：不要
価格：無料

救世軍配給のランチ

こちらは、友人（主婦）が通りがかった救世軍でもらった持ち帰りランチ。ベーグルとドーナッツ、具沢山のチキンスープでボリュームたっぷり。タイミングが良かったのか、並んでいる人もなくすぐにもらえたそう。おいしかったそうですよ。

救世軍配給ランチの特徴

配給頻度：月〜金曜日の毎日
配給内容：ベーグルなどのパン、ドーナッツ、スープ
身分証明：不要
価格：無料

ニューヨークのフードパントリー探訪記

ニューヨーク市では、シティハーベスト（City Harvest）やフードバンク（Food Bank）など、食糧支援の団体が主催する住民向けの無料食糧配給が行われています。

教会や慈善団体で行われる場合が多い

これらの食糧配給は、ほとんどが教会や慈善団体で行われています。毎週行う団体もあれば、不定期的に数カ月に一度や単発などと頻度が異なります。定期的に行う団体では、配布日（および祭日などでクローズ）や配布時間を案内するところもありますが、貰う側が口コミやスタッフからの情報を事前にチェックする必要があります。

配給の列に並ぶ4割は、コロナ禍以前は未経験

コロナ禍以前はフードパントリーという存在は知っていたものの、どこで行われているかも知らず、足を運ぶ機会もありませんでした。連日のニュースで食糧支援が行われていることを知り、NYCの公式サイトから調べました。また、教会前に列ができているのを見かけて、スタッフに直接聞いたことも。

失業や蓄えの減少に困っている住民を、ニューヨーク市はどのように手助けしてくれるのか興味がありました。そして筆者もコロナ禍により職を失っており、差し出された手があるのなら、つかまろうと思ったのです。

コロナ禍以降において、フードパントリーに並ぶ４割の人は、それ以前は利用経験がないと言われています。筆者もその４割に含まれますが、日本人は知らない人が多かったので友人にも広めました。

列はパントリーにより異なりますが、通常で50人ほどから100人ほど。人気のあるパントリーは200人以上が並ぶことも。待ち時間は30分から1時間強です。

配給内容はフードパントリー（供給団体）により異なる

基本は缶詰、乾物支給が多い

2020年4月中旬、初めてパントリーを訪れて頂いた食糧がこちら。二つの大きいレジ袋に重いほどぎっしり。こんなに頂けるのかとビックリして、その当時、内容を書き出しました。

コーンフレークス（510g）　1箱
米 Extra Long Grain Rice（454g）　1袋
乾燥豆　Green Split Peas（454g）　1袋
グリッツ（トウモロコシをひいたもの。お粥になる）（680g）　1袋
アップルソース（100g程度）　2個
低脂肪のミルク（236mL）　3パック
エナジーバー（ストロベリー、ブルベリー）　計6個
100％オレンジジュース缶詰（1.36L）　1缶
桃のスライス缶詰（425g）　1缶
フルーツミックス缶詰（425g）　1缶
チキンの水煮缶（127g）　2缶
ツナ缶（142g）　2缶
白いんげん豆のトマトソース煮（439g）　1缶
さやいんげんの水煮（411g）　2缶

フードパントリーAの特徴

配給頻度：毎週1回
配給内容：缶詰、乾物、シリアル、エナージースナック、野菜など
身分証明：不要
価格：無料

冷凍の加工肉を配給するパントリーも

フードパントリーBでは、冷凍のパティ（ハンバーガーの中身のようなもの）を頂きました。肉の種類はビーフではなく、ポークでした。

フードパントリーBの特徴

配給頻度：毎週1回
配給内容：冷凍加工肉、缶詰、乾物、パスタ、シリアル、エナージースナックなど
身分証明：写真付き身分証明書要
価格：無料

暖かいランチボックスと食パンがうれしかったパントリー

フードパントリーCには、元レストランで働いていたスタッフがいるのか、出来立てのランチボックスを頂くことができました。フライドチキンやたっぷりの野菜、パンもついていてボリュームがあり人気でした。缶詰や乾物が多い中、すぐ食べられるものが頂けるのは、子どもが多い家庭や独身の人には、ありがたい存在です。

フードパントリーCの特徴

配給頻度：毎日（2020年4〜5月当時。現在不明）
配給内容：調理したてのランチボックス、食パン、水、チップスなど
身分証明：電話番号やメールアドレスを聞かれる
価格：無料

毎回肉（冷凍）が支給されるパントリーも

友人宅の近所のパントリーは、毎回肉が支給されているそうです。羨ましい。

ポークのテンダーロイン（ヒレ肉）を貰ったと聞いて、バスに乗って駆けつけましたが、到着した時はすでに品切れでした。残念。

チキンの時もあったそう。このパントリーは、しっかり料理をする家庭向け。

シュリンプスキャンピ（冷凍）のお弁当も。こちらはレンジで温めて食べるのです。

フードパントリーDの特徴

配給頻度：毎週1回
配給内容：冷凍の肉または魚、缶詰、ジュース、野菜など
身分証明：写真付き身分証明書要
価格：無料

ホワイトハウスからの手紙付きの食糧配給

散歩がてら歩いているときに見つけた、単発で食糧配給を行っていたフードパントリーE。段ボール箱の中にじゃがいも、玉ねぎ、りんご各1袋。他にカリフラワー、1ガロン（4リットル）のミルク2つを頂きました。こういう幸運に恵まれることがあるので、いつもエコバッグを持ち歩く必要があります（笑）。

箱の底からはホワイトハウスからの手紙が出てきました。そういえば現大統領は、米大統領選前の2020年8月末に食料配給プログラムに10億ドル追加拠出したのです。このフードパントリーEは、米大統領選の直前に単発で食糧配給が行われました。

しかしながら、食糧を得たニューヨーカーたちは、箱から中身だけを抜き出したようで、打ち捨てられた多くの箱および手紙がストリートに転がっていたのでした。

■参考記事

トランプ氏、食料配給プログラムに10億ドル追加拠出を表明　-　ロイター　2020年8月20日
Food banks are removing the signed letter Trump wanted to include in every food-aid box - The Washington Post

フードパントリーEの特徴

配給頻度：米大統領選直前に１度だけの単発（以前以降に開催なし）
配給内容：野菜、果物、ミルク（ダンボール箱の底にホワイトハウスからの手紙）
身分証明：電話番号を聞かれた
価格：無料

フードパントリー探訪記まとめ

ニューヨーク市ではエコバッグとカート持参

アメリカは基本的に車社会なので、他州は車でフードパントリーの順番待ちすることがほとんど。一方で、我がニューヨーク市は地下鉄やバスが発達しているため、市内では自家用車率が低く車で行くパントリーはありません。

ニューヨーク市内では、パントリーへはエコバッグとカート持参で歩いて訪れます。そのため、段ボール箱に詰めた食糧を受け取るアメリカの他州に比べると、ボリュームが少ないかもしれません。

配給食糧まとめ

2020年４月中旬〜2020年11月末まで、筆者（および友人）が頂いた内容は、主に下記の通り。配給される食糧は、開催団体により異なります。

【野菜】じゃがいも、人参、玉ねぎ、セロリ、きゅうり、ズッキーニ、バタースクワッシュ、ヤム芋、カリフラワー、とうもろこしなど
【果物】バナナ、オレンジ、りんご、洋梨、桃、すもも、カンタロープメロンなど
【乳製品】ミルク、チーズ、ヨーグルト
【飲料】りんごジュース、オレンジジュース、豆乳、ミネラルウォーターなど
【乾物】豆、ドライフルーツ、ナッツ類
【冷凍食品】ポーク・チキンの肉、ティラピアなど魚、ベジタブルミックス、パエリアのような炒めごはん、ビーフシチュー、レンジで温めるランチボックスなど
【缶詰】ツナ、チキン、サーモン、スパム、コンビーフ、サーディン、フルーツ、豆類、さやいんげん、コーン、桃、フルーツカクテル、アップルソースなど
【穀物類】食パン、ピタパン、米、オートミール、ポーリッジ、シリアル、パスタ、マカロニ、キヌア、インスタントラーメン、小麦粉など
【スナック】チップス、エナージーバー、クッキーなど
【その他】ソーセージ、調理したランチボックス、ベジタブルオイル、マスタード、マスク、乳児がいる人はおむつをくれるパントリーも

あらためてこうしてみると、たくさん頂いたことがわかりました。ありがとうございました。

まだフードパントリーが必要なニューヨーカー

観光都市ニューヨークは、観光業やエンターテインメント、レストラン、ホテルなどで成り立っていましたが、2020年は観光客が66％減少し、景気の回復まで3年から5年かかるだろうといわれています。フードパントリーの需要は、まだ減少しそうにありません。

■参考記事
Tourism Expert Says It Could Take NYC 3 To 5 Years To Recover　-　CBS　New York 2020年11月17日

[All Photos by Sara Aoyama & Linda ]　Do not use images without permission.

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• #ルポ

	青山沙羅 アオヤマサラ／ライター
	はじめて訪れた瞬間から、NYにひと目惚れ。恋い焦がれた末、幾年月を経て、2009年ついに上陸。 旅の重要ポイントは、その土地の安くておいしいものを食すこと。 特技は、早寝早起き早メシ。人生のモットーは、「やられたら、やり返せ」。 プロ・フォトグラファーの夫とNYでふたり暮らし。共同著書『いちばん美しい季節に行きたい 日本の絶景365日（PIE International、2020年3月）』。 著者のプロフィールを詳しく見る

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