POSTED BY ノーヴィス編集部掲載日 APR 18TH, 2021

【大麻農家取材レポート】伝統をつなげる「野州麻」とは?SDGsな資源としても着目される麻の魅力を探ってみた

近年、サステナブルなオーガニック素材として見直されている「麻」。皆さんの身の回りにも、洋服や雑貨など、麻が使われたアイテムが多くあるのではないでしょうか。そこで今回は、麻の産地として全国的にも広く知られる野州地区(栃木県鹿沼市)で約400年続く麻農家へお邪魔することに。8代目当主の大森さんに麻の魅力や伝統をお伺いしつつ、体験教室にも参加してきました。

目次

伝統を守りつなげている「野州麻」とは?

麻農家8代目、野州麻紙工房・野州麻炭製作所の代表を務める大森さん

栽培しやすく、また再生可能な素材としてあらためてその価値に注目が集まりつつある「麻」。そんな麻の栽培が盛んに行われていることでも全国的に広く知られているのが、今回訪れた「野州地区(栃木県鹿沼市)」です。足尾山地南側の谷合に位置する同地区は、風の吹き込みも少なく、質の良い麻を収穫できる場所。

今回は、この地で400年以上も麻の栽培続ける一軒の農家が目的地です。同家は、野州麻の栽培に加えて「野州麻紙工房・野州麻炭製作所」として、収穫した麻を加工・製品の販売なども行っています。

8代目当主の大森さんよると、「このエリアは気候が向いていることも手伝って、私たちと同じように8代、9代と長く続いている麻農家が多いのも特徴です。THC(テトラヒドロカンナビノール)を0~2%歩しか含まず、私どもの栽培しているトチギシロはさらに260分の1。繊維型・産業用とされる日本の伝統的な品種の栽培を続けています」と、野州麻について教えてくれました。

野州地区では希少な国産品種の伝統を大切に紡いでいる。大森さんの家では、2021年度は約2.5ヘクタールの農地へ野州麻の作付けを行う予定だとか

また、「麻は人の生活を助ける植物として、太古の昔から全国各地で栽培・利用されてきました。繊維の強さを活かして衣服に利用したり、種子を食料としたりと、とても身近なものだったんですよね。しかし、戦後に制定された大麻取締法によって免許制となり、栽培する農家は限定されるようになったのです。そのなかにあって、伝統的で品質の良い麻の栽培を続ける農家が多いことでこのエリアはあらためて知られるようになったというわけなのです」とも。

さまざまな形に姿を変え生活に寄り添う「麻」

発芽から収穫まで約110日と育成が早いことも、麻が古くから私たちの生活に浸透していた理由の一つです。野州地区では、例年7月上旬に2.5m~2.7mに育った大麻を収穫しているそう。その多くは、精麻、麻アカ、麻ガラなどに姿を変え、製品として販売されるのだとか。

幹から剥がした皮を加工した「精麻」。神事で利用されることも多い

麻は着物や紙などの身近な製品に使用されることも多い素材ですが、神事や冠婚葬祭のような場でも多く使われていることには気が付いていない人も多いかもしれません。神社の鈴縄やしめ縄をはじめ、お守り袋の中に刻まれた「精麻」が入れられることも。また、結納品に含まれる「友白髪」にも使われていますよね。

このように、古くから人の生活を助けてきた麻は、いつしか神聖なものとしても活用されるようになってきたというわけなのです。

皮を剥がした幹の硬い芯「麻ガラ」

皮を加工した精麻だけではなく、他のすべての部分に利用価値が見出されているのも麻の特徴です。一番硬い芯部分を乾燥させた「麻ガラ」は、古くはかやぶき屋根の下地に使われていたり、今でもお盆の迎え火や送り火に使われることも多いもの。時期が近づくとスーパーなどでも見かけますが、これが麻だと認識して購入している人は多くないかもしれませんよね。

野州麻紙工房・野州麻炭製作所では、スダレにしたり、細かく砕いたものを使った麻香としたりと、さまざまな雑貨に姿を変えた一般向け商品の販売も行われています。

「麻アカ」は100円札の原料にされていたことも

こちらは、麻の皮を精麻にする際に剥がし落される「麻アカ」。これもゴミとして捨てられることはなく、かつては100円札の原料として使用されていたこともありました。現在も、麻紙の原料に用いられたり、純国産壁紙の原料として住宅に用いられたりと、幅広い用途で使われています。

インテリアや日用雑貨にも

大森さんが営む野州麻紙工房は、古い納屋を移築してリノベーションした建物をcafeギャラリーとして利用しています。ギャラリースペースには、麻を使って製作された雑貨やアートも多く陳列されていました。

こちらは野州麻の炭を使ったバスソルト。偶然にも数日前に取材班の1人がホワイトデーのプレゼントとしてインターネットで購入したのだとか・・・。このような、女性にも喜ばれそうな品も多く販売されています。

こちらもギャラリーで販売されている品。精麻をお守りとしてパッケージされたものですが、普段の生活のなかでこのような形で手に入れられる機会は少ないかもしれませんよね。

体験教室で麻の魅力を再発見

野州麻紙工房・野州麻炭製作所では、麻を使う各種クラフトの体験教室も定期的に開催されています。せっかくなので、取材を担当したnovice編集部の2名(ひつじ・ターキー)も、「麻はぎ・麻ひき体験」に参加させてもらいました。

今回参加させてもらった「麻はぎ・麻ひき体験」は、発酵した麻茎の皮を剥いで「精麻」を作る作業が行える内容のクラフト体験です。まずは先生に教えてもらいながら編集部・ひつじ(写真奥・左)が挑戦することに。

なんだか大相撲の弓取り式のようなポーズになってしまいましたが・・・、編集部・ターキー(写真手前)が右手に持っているのが発酵を終えた麻茎。この状態の麻茎の皮を剥がしていくわけですが、この前工程にあたる発酵作業も、気温などの条件によって細やかな管理・調整が必要とされるとても繊細な作業なのだとか。

端から10cmほどの部分を折って、そのままゆっくりと引っ張ると・・・、綺麗に皮がむけていきます。とはいえ、初体験のひつじとターキーは、なかなか先生のようにはいきません。伝統に触れながら、その難しさや守っていくべき大切なモノを感じた瞬間なのではないでしょうか。

先生の丁寧なレクチャーのおかげで、何度か挑戦するうちにだんだん上手に麻はぎができるようになってきました。安心したのか、ひつじの表情もにこやかに。でもこれで終わりではありませんよ。次は、剥がした皮の表面に付着している不要な部分を落とす「麻ひき」が待っています。

ということで、敷地内の別の場所へ。先ほど剥がした皮から麻アカを落とし、綺麗な精麻にする「麻ひき」を体験させてもらいます。専用の機械を使う麻引きの方法を説明してくれる先生と、その動きをトレースするひつじ・ターキー。決してボウリングでストライクを狙う3人ではありません。

グルグル回転する機械に麻の皮を通すわけですが、これが本当に難しい。絶妙な力加減や引っ張る早さなどの調整が必要で、綺麗に仕上げるのはまさに職人技。なんとか綺麗な精麻を完成させることができましたが、実はそれに至るでは「ひゃ~」という声とともに失敗作を量産していましたよ。

麻はぎ・麻ひきの作業が完了したら、綺麗に並べて乾燥させると「マイ精麻」のできあがりです。普段の生活のなかではめったに触れられない貴重な体験に、二人もひと皮剥けたよう? 

こちらが乾燥を経て完成した精麻。普段なかなか手にすることがない物だけに、達成感もひとしおです。

ひつじ
「体験を通して、その大変さと伝統の大切さを感じることができました。作った精麻は自宅に保管しようかと。なかなか精麻を持っている23歳はいませんよね(笑)。この貴重な品を自慢したいと思います」
「大麻と聞くとよくないイメージを持ちがちですが、日本人の生活を昔から支えてくれていた大切な存在なんだとあらためて気づかされました」

ターキー
「特に麻ひきに苦戦させられました。レクチャーしてくれた先生でも習得に2年かかったというので、当然ですよね・・・」
「麻は本来神聖なものとしても扱われていたということが学べたので、自分で精麻したものはお守りとして大切にしていきたいです」

今回参加させてもらった「麻はぎ・麻ひき体験」は、参加費が大人3,500円・子ども2,500円。1時間から1時間半の所要時間でマイ精麻の製作が体験できますよ。

※7月、8月は収穫時期のためお休みです

今回は、伝統的な麻の栽培が続けられている栃木県・野州地区の麻農家へお邪魔しました。

「気候などの条件によっては収穫が安定しない年もあります。それでも、麻を使う伝統工芸に携わる人をはじめ、さまざまなお客さんのためにもこの伝統はつなげていきたいです。周辺の麻農家の人たちもみんなプライドを持って取り組んでいますよ」と、大森さん。

「一方で、野州麻紙工房・野州麻炭製作所で製作している麻製品は、インターネットを利用しての販売がほとんど。つまり、自分も先端技術が使われたガジェットが好きなように、新しいモノやコトもどんどん取り入れていっているんです。野州麻のような日本ならではの伝統とうまくリンクさせて繋げていきたいですよね」とも話してくれました。

世界では、SDGs推進の観点にもマッチする麻を利用する動きが活発になっているそうです。特に近年、東南アジアでは栽培が解禁されたニュースが続いていますよね。野州麻紙工房・野州麻炭製作所のcafeギャラリーや各種クラフト体験にも、若い人が訪れることが増えたそう。古き良き伝統文化が、新たな視点でニューノーマルなものに変化を遂げていくのかもしれませんよね。

野州麻紙工房・野州麻炭製作所では、編集部が参加した「麻はぎ・麻ひき体験」のほかに、「麻紙漉き」や、「タペストリー作り」、「ストラップorより紐作り」、「麻草履作り」、「麻雲リース作り」、「麻殻のひんめり作り」など、バラエティ豊富なクラフト体験が用意されています。皆さんも、ゆったりと時間が流れる空間で思い出の品づくりを満喫してみてはいかがでしょうか。気になる人は、各体験教室の開催状況を公式サイトで確認してみるのがおすすめですよ。

■野州麻紙工房・野州麻炭製作所
住所:栃木県鹿沼市下永野600-1
アクセス:<公共交通機関の場合>JR栃木駅・東武線栃木駅よりタクシーで約40分 <車の場合>東北自動車道 栃木インターより約20分
電話番号:0289-84-8511
>>>公式サイトはこちら

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