POSTED BY 北 秀昭掲載日 MAY 4TH, 2021

今やスポーツカーもハイブリッドが常識。ますます電動(EV)化に拍車がかかる!

2021年4月13日、イギリスの自動車メーカー「マクラーレン・オートモーティブ(以下マクラーレン)」が、同社初となるハイブリッドモデル「アルトゥーラ」を日本初公開。ハイブリッドとは、エンジンとモーターを併用した、日本では定番の方式。マクラーレンは世界最高峰の四輪レース「F1」でも活躍する、スポーツカーの名門。マクラーレン・アルトゥーラの登場は、世界的なスポーツカーの電動(EV)化に拍車をかける大きなきっかけとなるのでしょうか?

目次

ハイブリッド車の台頭とともに、徐々に衰退した国内のスポーツカー市場

フェラーリの創業40周年を記念して1987年に誕生した「F40」。最高速度は324km/h(メーカー公表値)。日本では1980年代後半のバルブ経済時、2億円以上で取り引きされました。現在でもお宝級の超高額な価格で売買

あなたはスポーツカーが好きですか? スポーツカーといえば、車高が異様に低く、排気音が迷惑なほど大きく(静かなモデルもあり)、2人しか乗れなくて(主にミッドシップ車の場合。FRやFFの場合は4~5人乗りも)、庶民には手の届かない不動産並みの価格。イマドキの若い世代にとっては、一部のマニアや、高額所得者が趣味で乗るゼイタクな乗り物というイメージが強い傾向にあるようです。

筆者は自動車媒体に携わっている性質上もあって、10~30代の男性に「スポーツカーに興味はありますか?」という質問をすることがあります。彼らの回答の多くは、「興味はある。でも高額で現実的でない」という類。「(あきらめ口調で)あまり興味がない」、「やっぱりクルマは多人数が乗れるワンボックスがいい。2人乗りは実用的でないから」、「車両代もガソリン代も駐車場代も維持費もタダ(無料)だったら乗ってもいい」という意見もよくに耳にします。

若い女性はどうでしょう? 彼女たちはスポーツカーに対し、「車高が低いから乗りにくそう」、「車高が低いから、他の車両から丸見え感が強くて嫌」、「乗せてもらったことがあるけど、酷く狭い上に乗り心地が悪かった」、「排気音がうるさい」等々、ネガティブなイメージを持っている人も多数。「カッコいいから乗りたい!」という女性は、極めて少数派です(以上はあくまでも筆者による調査です)。

ドライバーの顔や性格が100点満点中30点でも、残りの~70点をカッコいいスポーツカーが補ってくれた・・・。残念ながら、そんな時代は今や昔。バルブ景気の時代に青春を謳歌した、50代以上の一部オッサンたちがいまだに抱く、「かっこいいスポーツカー=それに乗る俺って今でもカッコいい=若い女性にモテる」という考え(思い込み。勘違い)は、2021年現在において幻想であり、ほぼ当てはまらないと予想できます(もちろん個人のキャラクター等によって異なります)。

イタリアのランボルギーニ・ウラカンEVO。地を這うような低い車体が特徴

国内でのスポーツカーの衰退は、1990年代後半にまでさかのぼります。地球温暖化による排気ガス規制の強化に伴い、国内では多くの2ドア+ハイパワーエンジンを搭載したスポーツカーが、1990年代後半に姿を消しました。それはなぜか? 厳しい排ガス規制をクリアしつつ、スポーツカーならではのハイパワーを維持するためには、販売価格が高騰。つまり予測販売台数とコストが見合わず、生産しても採算が合わないと判断されたのが大きな要因です。

そんなスポーツカーの衰退期に登場したのが、1997年にトヨタが発売したハイブリッドのプリウス。

ハイブリッドの先駆者・トヨタ プリウス(2021年モデル)

ハイブリッドとはエンジンに加え、大型バッテリーとモーターを搭載し、モーターが動力を補助するシステムです。これにより、エンジンのみに比べてガソリンの消費量が大幅に抑制。「プリウスというクルマは極めて燃費が良く、1Lのガソリンで30km以上走る(乗り方・エアコン使用の有無・交通状況等により異なる)」、「有名俳優であり、環境活動家でもあるレオナルド・デカプリオも乗っている(アカデミー受賞式に乗り付け、話題となった)」なども手伝って、ハイブリッド車の知名度と販売台数は急上昇しました。

ちなみに、プリウスの人気によりメジャーとなったハイブリッドという技術は、トヨタが得意とするお家芸。つまり日本はハイブリッドの先進国でもあるわけです。

こうしてハイブリッド車は、トヨタを筆頭に、日産、ホンダ、スズキ等、さまざまなメーカーが発売。2021年現在では、いろいろなハイブリッド車がラインナップされています。

一方で、正統派スポーツカーと呼ぶべき2ドア+ハイパワーエンジン搭載の人気モデルは、国内では2021年5月現在、日産GT-Rやトヨタ86くらい(ホンダ シビックType-Rは4ドア)。1990年代中頃まで若者に高い人気を誇っていた2ドアスポーツモデルは、今やすっかり「絶滅危惧種」となっています。

日本が誇る日産のスーパースポーツモデル・GT-R。駆動方式はコンピュータが4つの車輪を制御し回転させる「フルタイム4WD」

その原因は、
・2ドアスポーツモデルが高額になり過ぎ、メインターゲットである若者に手が届かなくなった
・若者がスポーツカーに興味を示さなくなった
・若者のクルマ離れ
・趣味性の高いスポーツカーよりも、実用性の高いワンボックスカーの需要が高まった。その結果、ワンボックスカーが多様化した
・軽自動車の性能が向上し、若いユーザーをターゲットにしたモデルも充実した

等々、さまざまな理由が考えられます。

後輪が駆動するスポーティな「FR駆動方式」を採用した2ドアスポーツモデルのトヨタ86

マクラーレン初のハイブリッドモデル「アルトゥーラ」とは?

世界では今、中国やヨーロッパを中心に、自動車やバイクの電動(EV)化が加速しています。つまり、ガソリンや軽油などの化石燃料に頼らない脱炭素=カーボンニュートラルに向かっているのです。

それを物語るかのように2021年4月13日に発表されたのが、マクラーレン初のハイブリッドモデル「アルトゥーラ」です。マニアの間では、「あのマクラーレンが、ついにモーターを導入!」と話題になっています。

V型6気筒3.0リッターツインターボエンジンを搭載したマクラーレン初のハイブリッドモデル・アルトゥーラ。日本での発売価格は2965万円(10%消費税込)

マクラーレンといえば最高峰の自動車レース「F1」でも大活躍する、イギリスの自動車メーカー。2ドア+ハイパワーエンジンを搭載した、昔ながらの正統派スポーツカーをメインに生産しているのが特徴です。

今回発表されたハイブリッドのアルトゥーラは、新設計の「マクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー」を採用して、車両重量をコンパクトカー並の1,498kgに軽量化。

スポーティなイメージを全面に押し出したアルトゥーラの外観。日本での価格は2965万円~

エンジンはスポーツカーの定番である、運転席後方にレイアウトしたミッドシップ式を採用。総電力量7.4kWhのバッテリーにより、モーターのみで30kmの航続距離を実現しています。

コンパクトにまとまったアルトゥーラの室内

エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムは、最高出力585馬力、最大トルク585Nmを発生するV型6気筒3,000ccツインターボのガソリンエンジンと、最高出力95馬力、最大トルク225Nmのモーターを組み合わせたもの。エンジン+モーターの組み合わせで、最高出力680馬力、最大トルク720Nmの驚愕のパワーを発生。0~100km/hの到達時間は、わずか3.0秒という怒涛の加速力を実現しています。

ドアの開閉方式は、上下方に開閉するスーパースポーツならではの「ガルウイング」を採用

ホンダはスーパースポーツ「NSX」を2017年にハイブリッド化

自動車のハイブリッド化は、国内メーカーのスポーツカーでも進められています。ホンダは北米市場において「アキュラ」の名称で人気を博したNSXを、2016年にフルモデルチェンジしてハイブリッド化しました。

スポーツカーのイメージを全面に押し出したスポーティなNSXの外観。価格は2420万円(10%消費税込)
NSXの動力システム

ミッドシップに配置したV型6気筒3,500ccツインターボエンジンに、クランクシャフトと直結したモーター+前輪の左右に独立した2つのモーター(ツインモーターユニット)の組み合わせ。走りと燃費性能を両立した高効率・高出力の3モーターハイブリッドシステムを採用し、新世代のスーパースポーツモデルを表現しています。

駆動方式はコンピュータが4つの車輪を制御し駆動させる「フルタイム4WD」。ガソリンエンジンでのパフォーマンスは507馬力/6500-7500rpm、550N・m/2000~6000rpm。これに加え、エンジンに直結されたダイレクトドライブモーターによって48馬力/3000rpm、148N・m/500-2000rpm、フロント左右のモーター1基あたり37馬力/4000rpm、73N・m/0-2000rpmがプラスされています。

NSXの運転席
NSXは9速DCT、駆動方式はフルタイム4WDを採用

フェラーリが発売したハイブリッドスポーツとは?

自動車レースの最高峰「F1」のノウハウを導入してデザインされた外観が特徴の、フェラーリSF90ストラダーレ

イタリアの名門であるご存知・フェラーリが2019年に発売した、同社初のPHVスーパーカー、SF90ストラダーレ。PHVとは「Plug-in Hybrid Vehicle」の略称で、外部から電源をつないで充電できるハイブリッド車のことです。国内ではトヨタ プリウスも、PHVのハイブリッドモデルを発売しています。

バッテリー容量は7.9kWh。モーターのみの「eDriveモード」では、最大25kmの距離を走行。EVモードでの最高速は135km/h

フェラーリでは2013年、同社初となる市販ハイブリッドモデル「ラ・フェラーリ」を発売(世界限定499台)。同車の後継モデルとなるSF90ストラダーレは、最大出力790馬力/7500rpmのV型8気筒3,990ccガソリンターボエンジンに、合計223馬力を発揮する3個のモーターを組み合わせ、1,014馬力という驚異的なパワーを出力。0~100km/h加速は2.5秒、最高速340km/hを実現しています。

国内ハイブリッドスポーツの元祖・ホンダ CR-Zは庶民も入手可能!

ホンダは2010年、ハイブリッドスポーツカーの先駆けともいえるCR-Zを発売。同車は1987年に発売された、「サイバースポーツ」と呼ばれたライトウエイトスポーツ・CR-Xというモデルをイメージしています。

駆動方式はフロントタイヤが回転するFFを採用

1,500ccのi-VTECエンジンとホンダ独自のハイブリッドシステム「IMA(インテグレーテッド・モーター・アシスト)」を組み合わせ、先進的で躍動感のあるデザインに、俊敏で爽快な走りと25.0km/L(カタログ値)という優れた燃費性能を実現。

最高出力は6速マニュアルミッション車の場合、エンジンが120馬力/ 6,000rpm、モーターが20.4馬力。最大トルクはエンジンが145N·m/4,800rpm、モーターが78N·m/1,000rpmを発揮します。

2010年に発売されたハイブリッドスポーツモデル・ホンダCR-Z。2021年現在、中古車市場において80~300万円前後(程度や年式によって異なります)で入手可能

CR-Zはハイブリッドカーの可能性を広げ、新しい楽しさを全身で感じてもらいたいという想いから、「Emotional=見て、触れて、ときめく」、「Exciting=積極的に走りたくなる」、「Smart=エコで、使えて、自己を解放できる」の3つの価値を持つクルマを目指して開発されました。

CR-Zのコックピット
クランク部に電動モーターを駆動させたCR-Zのエンジン

スポーツカーもハイブリッドを超えた電動(EV)化の時代に突入か?

世界最高峰の自動車レース「F1」でも活躍するマクラーレンが発売したハイブリッドのスポーツカー「アルトゥーラ」は、ホンダNSXやフェラーリSF90ストラダーレと同様、世界でも大きな反響を呼んでいます。

世界では今、中国やヨーロッパを中心に、自動車やバイクの電動(EV)化が加速。なお、 ホンダは2021年をもって「F1」から撤退すると宣言。その背景には、本格的な電動化へのシフトがある模様です。

マクラーレン・アルトゥーラの登場や、ホンダのF1撤退は、「スポーツカーもハイブリッドを超えた、本格的な電動(EV)化の時代」に突入することを意味しているのでしょうか。国内メーカーはもちろん、海外メーカーの動向も気になるところです。

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北秀昭
編集者/ライター

神戸~東京築地~横浜~兵庫姫路~大阪京橋育ち。瓦敷き職人助手、空手師範代助手、ダスキ〇のお掃除部隊等に従事しながら高校・大学を卒業後、旅行グルメの編プロを経て、車やバイクに特化した出版社に勤務。バイク専門サイト「4ミニ.net」運営。 https://4-mini.net/

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