POSTED BY 倉田直子掲載日 MAY 4TH, 2021

【世界のニューノーマル最前線オランダ】コロナ禍で王様の支持率が下落

こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。コロナ禍発生以降、世の中ではさまざまな変化がおこっていますよね。今回は、オランダの王室と国民の間に起こった変化についてお話させてください。
写真:オランダ王の居城ハウステンボス宮殿 © RVB - Corné Bastiaansen

目次

オランダ国王とは?

2013年の即位式のウィレム=アレクサンダー王
2013年の即位式のウィレム=アレクサンダー王 © ANP

オランダの現在の国王は、ウィレム=アレクサンダー王(54歳)。2013年に、母ベアトリクス女王が生前退位されたことを受けて、長子であるウィレム=アレクサンダー王が即位されました。それ以降、マキシマ王妃と共に公務に励む日々を過ごされています。そしてそれと同時に、3人の王女の親でもあります。

ちなみにオランダの王室は象徴的な存在で、王や王族は政治に直接は介入しません。
また、現在の日本の天皇皇后両陛下が即位される前から親しく交流されていることでも知られ、2006年には王室の招待を受けた当時の皇太子と雅子妃が、オランダに滞在もされました。

パイロットと国王の二足の草鞋をはく

パイロットと国王の二足の草鞋をはく
パイロットと国王の二足の草鞋をはく © RVD - Paul Tolenaar

そんなウィレム=アレクサンダー王がオランダ国民の度肝を抜く告白をしたのは、50歳を迎える2017年4月の誕生日頃に受けたインタビューの際。なんと王は、オランダの航空会社KLMの副操縦士として(当時)21年間も勤務していたというのです。乗務するのは月2回、近距離フライトが中心だったとか。本人いわく、あくまでもこの副操縦士としての活動は「趣味」で、本業である王としての執務に影響しない範囲で行っていたようです。

当然ですが、パイロットの制服を着て勤務し、機内放送を担当することもあるそう。けれど「全スタッフを代表して話していたので、名前は名乗っていなかった」「私の声で気が付く人もいたようだけれど、ほとんどの人は機内放送なんて聞いていない」とのこと。普通の人は、なかなか「王様が飛行機の操縦席にいる」なんて想像もできませんよね!

国王への国民の信頼が失墜

ウィレム=アレクサンダー王とご家族
ウィレム=アレクサンダー王とご家族 © RVD – Patrick van Katwijk

そういった不思議な親しみやすさもあり、オランダ王室は国民からの高い人気を得ていました。毎年国王および王室に対する支持率がオランダメディアによって発表されているのですが、国王への信頼は、2020年4月は76%あったそうです。けれど、2021年は過去最低の57%に急落してしまいました。その主な原因が、度重なる王さまの「やらかし」。

まず最初に国民感情を逆なでしたのが、2020年6月に報道された、王さまの個人的なお買い物。約200万ユーロ(2021年5月現在2億6千万円程度)の豪華クルーザーを購入されたと報道されたのです。コロナ禍で休業や廃業の憂き目にあい、経済的に苦しい国民も多い中、この庶民感覚からかけ離れたお買い物は国民に悪印象を与えました。

国民感情無視のふるまいを謝罪

国王のギリシャ旅行計画が、国民の不評を買う

そして国民感情を決定づけてしまったのが、2020年10月。コロナ禍発生以降は国民に海外旅行自粛を強いながら、国王一家はギリシャの別宅で秋の休暇を過ごそうと旅行に出かけてしまったのです。旅行が大好きなのに我慢を重ねていたオランダ国民は、この王様の国民に寄り添わない態度に大激怒。国民から総スカンをくらってしまったのです。

国民感情を考慮し、国王ご夫妻は休暇を数日で切り上げてすぐに帰国。王室のYouTube公式チャンネルで国民に謝罪するという騒動に発展しました。「あなた方の私への信頼を裏切ったことを非常に申し訳なく思う」ということを2分間語られています。

次世代への影響も

ハウステンボス宮殿のホール
ハウステンボス宮殿のホール © RVB - Corné Bastiaansen

前述のように現在は57%まで回復した国王への信頼度ですが、2020年12月には47%まで落ち込んでいたそうです。かつては76%もあった信頼度が、そこまで落ちるのはなかなかですよね。

そしてそのとばっちりか、アンケート回答者の4分の3が、皇太王女である長子のアマリア王女が18歳になると受け取る助成金(160万ユーロ/約2億1千万円)が「高すぎる」と回答したのだとか。次世代にまで影響が出てしまっているようです。さらに悪いことに、君主制自体への支持が2020年約75%から2021年には58%に減少してしまったのです。このままでは、王室そのものの存続に疑問の声も出てしまうのではないでしょうか。

コロナ禍さえなければ、オランダ王室もこのような影響をうけなかったかもしれません。本当に、新型コロナウイルスはさまざまな人の人生に影響を及ぼしていますね。

[A Photos by Shutterstock.com]
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倉田直子
クラタナオコ/ライター/タイニーハウス・ウォッチャー

2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/)

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