POSTED BY 林 美由紀掲載日 MAY 10TH, 2021

コロナ禍で見えた「継続的に見直す」ことの大切さ【子ども第三の居場所・福井 邦晃さん】

昨年から続く新型コロナウイルスの影響により、社会のルール、暮らし、仕事や人間関係などにも大きな変化がもたらされました。2020年に1度目の緊急事態宣言が発出された時には学校も休校になり、教育現場にも大きな変化が起きたのです。今回は、日本財団の子どもサポートプロジェクト「子ども第三の居場所」尼崎拠点のリーダー・福井邦晃さんに、コロナ禍による子どもを取り巻く活動内容の変化や子どもの学習面の変化から学ぶ「大人も実践したい方法」について伺いました。

目次

今までに経験したことがない新型コロナウイルスの世界的感染拡大のなか、子どもたちの生活にも何か大きな影響はあるのでしょうか。

日本財団の子どもサポートプロジェクト「子ども第三の居場所」の尼崎拠点で、日々子どもたちと関わる福井邦晃さんに、施設での生活の様子などから、大人のビジネスシーンでも役立つ気づきなどについて聞いてみました。

「子ども第三の居場所」尼崎拠点リーダー・福井邦晃さん

コロナ禍で子どもたちに見られた小さな変化

昨年の1回目の緊急事態宣言時には、子どもたちは変わらず拠点を利用できたのでしょうか?

小学校や中学校などは休校になりましたが、「子ども第三の居場所」は学童と同じような形で開所しており、子どもたちは利用することができました。毎日検温を行い、マスクを着用してもらい、入室時や食事前など、手洗い・アルコール消毒を徹底して実施。もちろん、スタッフも毎日検温および体調確認を実施し、従事する日からさかのぼって1週間以内に発熱や風邪症状がないかの確認を行いました。また、同居家族や親族等にそういった症状がある人がいないかの確認も行い、運営を続けていました。

コロナ禍の子どもたちの過ごし方は以前と変わりましたか?

それほど大きな変化ではありませんが、日常的にマスクの着用を強いられることになり、違和感・不快感を強く感じているように見えました。

また、多くの子どもがコロナ禍によって、心身ともに日常的かつごくごくわずかながらのストレスを抱えているように感じました。楽しみにしている行事はことごとく中止となり、「こうしたい!」「ああしたい!」というような希望や想いを語ることなく、「~してはいけない」「~するべき」といった言葉を大人が持ち込むことによって、子どもたちの関係性も次第に窮屈になっていっているようでした。

少しずつ変化が現れたのでしょうか?

そうですね。何かとても大きなストレスというよりは、一つひとつは小さくても確実に蓄積していくことや、終わりが見えないことに対する心の不安が身体や行動に表れていたように思います。いつも以上に他者に対して攻撃的になったり、やり場のない気持ちをどこにぶつけたらいいかわからず、気持ちが不安定になったり、さまざまな様子が見られました。急に変わったというよりは、毎日の日常の中で少しずつ少しずつ変化していったことが多く、そのときは気付かないことの方が多くありました。

ストレスを持った子どもたちの気持ちを受け入れる

不安や怒りなどのストレスを持った子どもにはどのように対応しますか?

基本的には、何か特別な対応というよりは、いつもと同じ対応を心がけています。いつもより不安を抱えているからといって、他者を傷つけていいわけではないし、いつもはダメなことが許されるわけでもないためです。ただ、そういった行動が出た場合、「どう思ったか」という一人ひとりの感情に目を向けていました。言動の良い悪いのジャッジをするのではなく、ただただそのときの感情を聞いていくことによって、子どもたちが自分の感情を自覚することができます。そして、子どもたちの感情に共感をしていきます。コロナ禍に限らず、対話を通して子どもたちの気持ちを受け止めることを意識しながら関わっています。

学習面の変化から見えた「PDCA」の大切さ

学習面では変化はありましたか?

2020年3月~6月の学校休業期間中にまとまった宿題が出されたこともあり、たくさんの宿題をどう計画的に終わらせるか。ということについて、何度か連続でシミュレーションができたことは、子どもたちにとってよかったように思います。

どのような点がよかったのでしょうか?

毎年、夏休みの宿題がぎりぎりになるという子どもが多かったのですが、1カ月の仮想夏休みの宿題が連続で3カ月出されたことによって、「計画を立てて」、「結局どうなった?」で終わってしまうだけでなく、短期スパンで「次はどうする?」というところまで考えることができました。これによって、後回しにする対処療法ではなく、宿題に対して予防的に関わろうとする姿勢が見られました。

予防的にかかわるとは?

毎日予定を細分化したことによって、1日単位でのふりかえりや計画の見直しが可能となり、その日にやり残した宿題を翌日にカバーしたり、拠点に来てからの時間を自由に過ごすために、土日や平日の午前中に自主的に自宅で宿題をやってきたりなど、それぞれが自分で考えて学習に取り組むようになりました。

「1日」という単位などの短いスパンで見直していくことで、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)という流れを意識できたのではないかと思います。

コロナ禍でマスク着用が当たり前になり、もう1年以上も思うように好きなことができなくなっている私たち。大人も子どもも、気づかぬうちに多かれ少なかれストレスを抱えているなか、「子ども第三の居場所」では、闇雲に否定することなく、自分の気持ちを自覚できるよう子どもたちの心に寄り添いながら、過ごしているそうです。

不安な状況が続く中、学習面では、緊急事態宣言下で宿題がまとめて出たことによって、計画を立て、実際に宿題をしてみて、計画通りに進められたのかを確認し、必要に応じて見直していくというサイクルを子どもたち自身が意識するようになってきたといいます。

大人でもビジネスシーンにおいて、計画、実行、評価、改善の「PDCAサイクル」はとても重要なことだと言われています。子どもの頃からこういった経験を積み重ねることができるのは、素晴らしいことかもしれませんよね。

取材協力:日本財団「子ども第三の居場所」
画像提供:日本財団「子ども第三の居場所」

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林美由紀
ハヤシミユキ/ライター

FMラジオ放送局、IT系での仕事人生活を経て、フリーランスライター。好きなものは、クラゲ、ジュゴン、宇宙、クモの巣、絵本、漫画、子どもなど。グッとくる雑貨、ハンドメイド作品、文具、生き物、可愛いものとヘンテコなものを日々探しています。いつか絵本作りに携わりたいです。

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