POSTED BY 北川菜々子掲載日 NOV 19TH, 2020

【世界のニューノーマル最前線・パリ】都会脱出で田舎暮らしが新常識になる?

新型コロナウィルスの感染拡大に伴って、2020年10月30日よりフランス全土で2度目のロックダウンが実施されています。フランスでは前回のロックダウンを機に田舎暮らしを気に入った人が続出し、2度目のロックダウンでも、パリを脱出して田舎に向かう人々の様子がメディアで話題になっています。フランスでの田舎暮らしはニューノーマルなものとなるのでしょうか。そこで今回は、フランスに住んで12年になる日本人ライターの筆者が感じた、フランス人の変化を現地からレポートします。

目次

2度目のロックダウンの様子とは

本題に入る前に、簡単に今回のロックダウンの様子をお伝えします。前回(2020年3月)のロックダウンとは異なり、学校が閉鎖されていないことが一つのトピックです。学校でクラスターが起こる割合は比較的低いことや、閉鎖されることで起こる弊害の方が大きいということが理由だそうです。

さらに、今回のロックダウンでは商店は閉まっているものの、電話やメールで注文し、商品だけを取りに行くクリック&コレクトというサービスを実施しているお店があったり、テイクアウトのサービスを行うレストランがあったりと、厳しい状況下でも経営努力をする姿勢も目立っています。

また、前回のロックダウンに比べて、パニックにならず落ち着いている人が多いようにも思えます。パスタや卵、小麦粉の品薄が問題となった前回に比べ、食品を買い漁るような人は少なく、冷静に行動するフランス人たちの姿が印象的です。

フランス人がパリを脱出する理由

普段賑わいのあるパリの通り。店も閉まり人がいません ©Nanako Kitagawa

さて、ここから本題に入ります。前述のように、フランス人はロックダウンの時になぜパリを脱出するのでしょうか。

パリでの生活には、便利なサービスが受けられることをはじめ、コンサート・舞台、美術館の展覧会などのさまざまなイベントで常に文化に触れることができることや、レストランやバーなどで、恋人や友人たちとの「遊び」が楽しめることなど、多くのメリットがあります。しかし、ロックダウンによってこれらのことが不可能となり、パリにいる理由がなくなったと感じた人が多かったというわけなのです。

それに比べ、田舎は娯楽がなくても自然を満喫できることが魅力的。前回のロックダウンでも、田舎に住むフランス人は自然溢れる家の周りを散歩したりと、正直苦しいロックダウンではなかったと語っていました。

狭いアパート暮らしもストレスの要因に

また、東京と同じようにパリのアパートは狭く、外出規制でずっと家に居ることに苦痛に感じるのも大きな理由のひとつです。特に独身者はひとりで過ごすのが寂しく、田舎へ脱出する人が多いと聞きます。前回はロックダウン時にはストレスが溜まり、鬱になる人が続出したという問題も起きたほどです。

そのような背景もあり、知り合いの独身者は再びロックダウンが実施されると聞くとすぐに、TGVのチケットを購入して翌日にはパリを脱出したそうです。

フランス人の行き先とは?

それでは、フランス人はパリを脱出してどこへ向かうのでしょうか。大抵は、地方に住む両親や親戚の家、家族の別荘を目指すそうです。また、スキー場のアパートをその期間だけ借りたという人の話も聞きました。地方都市というよりも、自然溢れる田舎に行く人が多いようです。

フランス人は田舎暮らしで何を感じたか

前回のロックダウンが解除された後に、「田舎暮らしでフランス人は何を感じたのか?」ということが話題になりました。

「退屈だった」というネガティブな意見はほとんどなく、自然に触れることができて「リフレッシュできた」と答えた人が多いのが印象的でした。この体験を通して、パリで暮らすことに対して次のような疑問を持つようになったフランス人が多いといわれています。

・パリの生活はストレスばかりだ
・パリはストライキが多く不便
・通勤時間が長いことは損でしかない
・パリは家賃が高すぎる
・田舎で子供を育てることがベストではないだろうか

田舎暮らしはニューノーマルとなるのか

フランスのラジオニュース番組『france inter(フランスアンテール)』によると、管理職専門のリクルートサイト『Cadre emploi(カードルアンプロワ)』調べの結果、84%の管理職がパリを離れたいと回答していると伝えました。回答者の属性に偏りがあることは想像できますが、それでもロックダウンを契機にパリを離れたいと考える人が多いのは確かなことです。筆者の周りでもロックダウンで田舎に行き、そのままそその地に引っ越した人もいます。子どもたちがいきいきして子育てがしやすいからだそう。

とはいえ、地方都市や田舎では職種が限られるので、会社員が引っ越しを決意するのはなかなか難しいもの。実際に、1度目のロックダウンのときに田舎に引っ越しできたのは、ほとんどがフリーランスなどの会社勤めでない人たちでした。

仕事に対する意識が変わった人も

しかし、『france inter(フランスアンテール)』の記事によると、ロックダウンで身近になったテレワークによって、次のような仕事に対する意識や働き方の変化が起こった人も多いと伝えています。

・オフィスに行かなくても意外と仕事が回った
・オフィスで働くより快適だった
・集中して仕事をすることができた

また、38%の管理職が「地方で暮らしても時々パリの会社に出社すれば、これまでと同じ仕事が続けていけるだろう」と回答しているのだそうです。

働く人々のこのような考えが増えてくれば、もしかしたらフランスでは、田舎暮らしがニューノーマルとなる日もそれほど遠いことではないのかもしれません。

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北川菜々子
キタガワナナコ/ライター

学生時代は東京で過ごし、卒業後なんとなく思い立ちフランスへ移住。気がつけばフランスでの生活も十余年。現在はフリーランスのライターとしてライフスタイル、文化、旅行、就職など多岐に渡って執筆しています。実生活では二人の息子たちの育児に奮闘中。

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