POSTED BY アンダルシア掲載日 OCT 27TH, 2021

【論考】QUADやAUKUSをけん制する「ロシアと中国」~津軽海峡通過の思惑~

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、2021年10月18日に行われた中国海軍とロシア海軍による津軽海峡通過と、両国の思惑、日本が予見しておくべきシナリオを考える。※写真はすべてイメージです

目次

中国海軍とロシア海軍が津軽海峡を通過

2021年10月18日、北海道の奥尻島南西およそ110kmの日本海で、中国海軍とロシア海軍の艦艇合わせて10隻が航行し、津軽海峡を通過して太平洋に向かったことが確認された。防衛省によると、同10隻のうち、中国軍は最新鋭のレンハイ級ミサイル駆逐艦など5隻、ロシア海軍は駆逐艦など5隻だったというが、両国海軍が同時に津軽海峡を通過するのは今回が初めてだという。

また、両国は2021年10月14日から4日間の日程で極東ウラジオストク沖の日本海で合同軍事演習を実施した。同軍事演習では戦闘機による射撃や潜水艦による探査などが訓練として実施されたというが、ロシア海軍は他にも10月に入って日本海での軍事訓練を2回行っている。

クアッドやオーカスへのけん制行動

一連の動きについて、ロシアと中国は立場を明確にしていない。しかし、インド太平洋地域でクアッドやオーカスなど欧米主導の対中けん制網が進むなか、それをけん制する意味があったことは間違いない。米国だけでなく、英国やフランス、ドイツなどの欧州諸国やオーストラリアなどもインド太平洋への関与を強めており、最近もオーストラリアとフランスの閣僚級が台湾を相次いで訪問しては、蔡英文政権と協力を強化していくことで合意している。

ロシアは、米国の勢力圏が北上することを警戒している。たとえば、ロシアが北方領土で日本に譲歩する姿勢を見せない背景のひとつに安全保障上の問題がある。

仮に、プーチン政権が北方領土問題で4島返還するという日本の要求を呑むことになれば、それは必然的に米国の対日防衛義務を明記した日米安全保障条約第5条の適用範囲が択捉島まで北上することとなり、ロシアにとっては絶対に避けたいシナリオである。

それと同時に、ロシアは日本海の沿岸国のひとつで、日本海においても米軍のプレゼンスが高まることを良く思わない。ウラジオストクはロシアにとって南端的要衝であり、そこを起点として自らの勢力圏を維持・拡大する狙いがある。ロシアは、クアッドやオーカスなどによってその意識をさらに高めていることだろう。

北方領土を意識するロシアと海洋覇権を進める中国

Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com

また、経済的な狙いもある。プーチン大統領は2021年10月下旬、ロシアが実効支配する北方領土に外国からの投資を誘致、拡大するために構想してきた免税特別区の設置について、2022年8月1日までに法整備を進めるよう政府や関係省庁に指示した。ロシアにとってシベリアの安全保障や経済開発は長年の悩みのひとつではあるが、北方領土周辺は凍らず、豊富な漁業海域であり、経済的な利権は極めて大きい。プーチン政権は経済と安全保障の両面で対策を強化している。

また、台湾海峡や南シナ海で海洋覇権を進め、米国と対立している中国も日本海でのプレゼンスを高めている。言い換えると、中国の海洋覇権について、日本は南西諸島以南だけを考えればいいのではなく、日本海というもっと身近な海域を意識する必要があろう。

中国の北極開発への思惑とは

中国がロシアとタグを強化し、日本海を重視するには大きな理由がある。それは第3の一帯一路とも言われる氷上のシルクロードの建設だ。中国は近年、豊富な天然資源が眠る北極海への関与を積極的に推し進めているが、中国と北極海を結ぶルートは、東シナ海から対馬海峡、宗谷海峡か津軽海峡、オホーツク海やベーリング海を通ることになり、日本海はその重要航路となる。

中国の北極開発にはロシアも警戒感を示してはいるが、近年、温暖化により北極の海氷面積が最小を度々記録するなど、その下に眠る資源へのアクセスは現実味を帯びてきている。それによって中国の北極への関与が進むことで、日本海における中国のプレゼンスがいっそう強まる可能性がある。日本は以上のようなシナリオも同時に考えておく必要があるだろう。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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