POSTED BY アンダルシア掲載日 SEP 29TH, 2021

【論考】中国のTPP加入はなるか~習政権の思惑はどこにあるのか~

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、TPPへの加入へ正式に申請した中国・習政権の思惑と、それを取り巻くアメリカをはじめとする対中国包囲網を築く各国の動きを考えてみる。※写真はすべてイメージです

目次

米国の動きと中国のTPP加入申請

バイデン政権がアフガニスタンからの米軍完全撤退を完了し、対中国へ本腰を入れるなか、習政権は2021年9月、環太平洋経済連携協定(TPP)への加入を正式に申請した。米国のトランプ前政権が2017年1月にTPPから離脱し、バイデン政権は現在もTPPへの復帰に難色を示しているなかでの申請となった。習近平国家主席は2020年11月のAPEC首脳会議の際、TPPへの参加を前向きに検討していると述べていたが、その狙いはどこにあるのか。

その背景には、最近、バイデン政権が同盟国や友好国と対中国を意識した協力を積極的に進めていることがある。バイデン政権は2021年9月、ワシントンで米国、日本、インド、オーストラリアの4カ国首脳が出席するクアッド会議を初めて対面形式で開催した。首脳レベルのクアッド会合は3月にもオンライン形式で実施されたが、その際、4カ国による会合を少なくとも年2回開催することで一致していた。

クアッドは自由で開かれたインド太平洋を構築することを目指し、中国がいつの日か透明性を持ってインド太平洋構想の実現に加わることを望んでいるが、現在は事実上、対中国を意識した国家間枠組みとなっている。2020年10月には東京で外相レベルの会議が開催されたが、その際も中国を念頭に会議の冒頭から米国が習政権を強く批判する場面があった。

AUKUSの発足も対中国を意識

Nick_ Raille_07 / Shutterstock.com

また、バイデン政権は2021年9月、英国とオーストラリアと新たな安全保障協力の枠組みである「オーカス(AUKUS)」の発足を発表した。今後、米国と英国が協力する形でオーストラリア海軍へ原子力潜水艦の導入が進められるというが、中国はこういった安全保障協力の重層化を強く懸念していると考えられる。オーカスを巡っては、原子力潜水艦の設置でオーストラリアと大規模な契約を結んできたフランスが米国に強い不満を抱き、在米、在豪のフランス大使を召還するなどしているが、対中国では思惑は一致しており、中長期的に大きな問題になる可能性は低い。

一方、中国と台湾の関係が冷え込んでいることも影響している。中国は2021年9月、台湾から輸入していたシャカトウとレンブのフルーツ2種から何度も害虫が検出されているとして、台湾からの輸入停止に踏み切った。中国は3月にも台湾産のパイナップルを輸入停止しているが、その背景には、防衛安全保障の協力を台湾が米国と緊密化させていることがある。

周辺事情の打開・改善を模索する中国

Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com

これら3つの最近の出来事から言えるのは、中国の周辺事情が中国にとって都合の良くない状況になっており、習政権はそれを打破するために各国に圧力を掛ける必要性に迫られている。その1つのオプションが、今回のTPP加盟申請だろう。バイデン政権は依然としてTPPに復帰しておらず、中国にはこのタイミングを狙ってTPPに踏む込むことで、米国の復帰を困難にし、日本やオーストラリアなどTTP加盟国の出方を注視しているのだ。

TTPにはカナダやオーストラリアなど、中国との関係が劇的に冷え込む国々が少なくなく、全加盟国の同意が必要なTTPに中国が参加するのは事実上不可能に近い。TTPは自由で公正な国際貿易を目指し、不当な輸出入停止や関税引き上げはもってのほかであり、中国がそれを是正することはないだろう。そのなかでも中国が申請をした背景には、経済的な思惑はなく、対中多国間包囲網の構築を切り崩したい習政権の狙いがあることは想像に難くない。

humphery / Shutterstock.com

今後もバイデン政権による多国間協力が進むとなれば、インド太平洋地域の安全保障は一段と緊張が高まることにあるが、反対に中国は自らが主導する形での多国間協力を模索することだろう。ロシアや中央アジア諸国が参加する上海協力機構、アジアインフラ投資銀行(AIIB)など既にいくつかの多国間枠組みはあるが、我々は中国主導の多国間枠組みが今後どう台頭するかを注視していく必要がある。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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