初のフェイスバイフェイスとなった米中首脳会談

米国のバイデン大統領と中国の習近平国家主席は2021年11月16日、オンラインで3時間半に渡る首脳会談を実施し、米中関係や台湾問題、新疆ウイグル自治区の人権問題、気候変動などについて意見を交わした。

バイデン大統領は「両国間の競争が衝突に発展しないよう、常識的なガードレールを確立する必要がある」と述べ、習氏は「世界の2大経済大国である中国と米国は協力を強化する必要がある」と関係悪化に歯止めを掛ける必要性に言及した。しかし台湾問題で、バイデン大統領は「台湾海峡の現状を一方的に変更し、平和と安定を脅す措置には強く反対する」、習氏は「台湾の独立を促すことは火遊びのようなもので、火遊びをしている人は火傷をすることになる」と互いをけん制した。今回の会談にはどんな意味があるのだろうか。

まず、これまで両者は2回電話で会談しているが、今回はオンラインだったものの初めてフェイスバイフェイスでの会談となり、相互に言いたいことを言い合ったことには少なからず意義がある。今後、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着けば対面での会談の可能性もあり、今回の会談はそれを実現させるためのきっかけになるかも知れない。

根深さも印象付けた会談

だが、今回の会談は相互に言いたいことを言い合っただけに留まり、何も共同成果は発表されておらず、全体としては米中の溝が非常に根深いことを印象付ける結果になった。現在のところ、米中が協力できそうな分野は地球温暖化など一部に留まっており、安全保障や人権、経済など主要な問題ではまったく歩み寄りは見られない。

特に、上述の台湾を巡る安全保障や新疆ウイグルに代表される人権問題で、バイデン政権は習政権に厳しい態度を示しているが、習政権は台湾やウイグルを香港と同じように絶対に譲ることのできない核心的利益に位置付けており、習政権がバイデン政権の要求に従う可能性はまずないと考えていいだろう。今後も米中両国は対話の機会を相互に探るだろうが、競争や対立は長期的に続くとみるべきだ。

北京冬季五輪の成功へ向けた思惑とは

一方、今回の会談に中国が応じた背景には、中国特有の事情もある。2022年2月に北京冬季五輪が開催されるが、習政権はそれを大々的に成功させることを目標としている。しかし、新型コロナウイルスの真相解明を巡り、米国だけでなく英国やフランス、オーストラリアやインドなど他の主要国の中国への不信感も高まっており、習政権としては今の時期はできるだけ諸外国との関係悪化を避けたいという背景もある。

特に、冬季五輪ということで参加国の多くを欧米諸国が占めることから、五輪の偉大な成功のためには欧米諸国の協力が欠かせない。現在、ホワイトハウスの中では、バイデン大統領や政府高官を開会式や閉会式に参加させないという外交ボイコット論も浮上しているというが、習政権としては少なくとも北京冬季五輪までは米国に対して挑発的な行動は控える可能性がある。

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	アンダルシア ライター／
	政治学者　専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。 著者のプロフィールを詳しく見る

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