POSTED BY 倉田直子掲載日 NOV 1ST, 2021
どうやるの? 在外邦人の国政選挙投票【世界のニューノーマル最前線オランダ】
こんにちは。オランダ在住ライターの倉田直子です。日本の皆さまに言うまでもないですが、2021年10月31日は衆議院議員総選挙が行われましたよね。そこで今回は、筆者のように海外に住む日本人がどのように投票を行っているのか、在住国オランダでの例をとってご紹介したいと思います。
移住したら「在外選挙人登録」
まず何よりも、海外に住む日本人が選挙権を行使するには、「在外選挙人証」なるものを入手しなくてはいけません。そのために、在住国の日本大使館経由で「在外選挙人登録」を行います。すると、数カ月後に日本の選挙管理委員会から在住国の家に送付してくれるのです。管轄は日本で最後に住民票があった地域になります(転出届を出していることが条件)。
ちなみに写真左の用紙は「投票用紙等請求書」といって、郵便投票の際に必要な書類です(後に解説します)。
二通りの投票方法
実際の投票は、大使館や総領事館などの公館まで出向き直接投票する方法と、書類を郵送でやり取りして投票する方法があります。
公館に行って投票する場合は、上で紹介した在外選挙人証と、有効なパスポートなどの身分証明書を持参します。筆者の経験では、大使館内に日本の投票所と同じようなブースが設けられているので、そこで投票用紙に記入して投票します。
その国に住む有権者の記入済投票用紙を日本の投票日までに日本に届けるため、通常在外公館では一週間ほど前に投票期間が設定されます。今回の衆議院選挙では、2021年10月20日(水)から10月23日(土)までとされていました。2019年に実施された第25回参議院議員通常選挙の際は、10日間の投票期間が設けられていたので、遠方の人も都合をつけやすかったと思います。けれど今回はかなり期間が短かったので、都合がつかなかった人もいるかもしれませんね。
余談ですが、今回の選挙は新型コロナウイルス感染症の影響や政情不安のせいで公館での投票実施が見送られた国もあるそうです。これは非常にショックなニュースでした。
そしてもうひとつの「郵便投票」。前述の「投票用紙等請求書」を使用し、外国の自宅まで投票用紙を送付してもらうシステムです。けれどこれが、なかなか煩雑で・・・。
ステップ1.
日本の選挙管理委員会まで、「投票用紙を郵送して下さい」と「投票用紙等請求書」および在外選挙人証(原本)を郵送。ちなみに、「投票用紙等請求書」は外務省のホームページからもダウンロードできます。
ステップ2.
その用紙を受理した選挙管理委員会が、有権者の在住国に投票用紙と返送用封筒を返送(在外選挙人証も返却)。
ステップ3.
受領後、投票用紙に記入して日本に返送(必ず公示日以降に記入・返送)。
つまり、2カ国間を郵便物が1往復半も行ったり来たりするわけです。ただでさえ国際郵便は時間がかかるのに、このコロナ禍で諸外国の郵便事情はかなり悪化しています。そのため、期日までに日本に投票用紙が届かないのではないかという事例が多発しているようです。筆者の体験も交えてお話ししたいと思います。
投票用紙が届かない!
オランダに引っ越してきてからすでに3度の国政選挙を経験していますが、すべて在オランダ日本大使館で投票してきました。けれど、それらはコロナ禍以前のこと。
今回は2021年9月7日に在オランダ日本大使館から「今後の当国の新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては、在外公館投票が実施できない、あるいは在外公館投票が実施される場合でも、投票所に来ていただくことが困難になる状況も排除できません」(原文ママ)というメールが届いたので、数日後に「投票用紙等請求書」を投函しました。
けれど、待てど暮らせど投票用紙が届かないのです。ツイッターなどでフォローしている、世界各地にお住いの在外邦人の皆さんのところには続々と郵便投票用の投票用紙が届いている様子が見られるのに、私のところにはまったく届きません。
心配されていた在外公館での投票は実施されることになりましたが、私は在外選挙人登録証も日本の選挙管理委員会に送付してしまっているので、そちらに切り替えることも不可能。
10月下旬に入りついに待ちきれず、自分の管轄の選挙管理委員会に電話で確認してみました。すると、「10月18日に発送しました」という返事が。投票用紙の送付自体は公示日前にも可能なはずなのです。昨今のコロナ禍による郵便事情悪化もあるので、これは今後はもっと早めてほしいと在外邦人としての希望を伝えました。
そして、満を持して投票用紙が届いたのは10月27日水曜日。この封筒の中に、必要な書類が収められています。期日は31日なので、正攻法では間に合いません。そのため、日本の選挙管理委員会所在地まで2日で届くというDHLのエクスプレスサービスを採用し、約50ユーロ(2021年10月現在のレートで約6,500円)かけて返送しました。せっかくここまでの手間と時間とお金をかけて投票するのですから、ぜひ私の票も日本の未来に役立って欲しいなと思います。
求む!インターネット投票の開始
現行のシステムがこうなので従いますが、この郵便投票のシステムは、時代にそぐわなくなってきているのではないでしょうか。やはりここは、インターネット経由での投票を検討する時期なのではないかなと感じています(インターネット環境の悪い国もあるでしょうから、郵送投票自体の継続は必要だと思いますが)。
在外投票が始まった2000年には、これが一番確実でベストなやり方だったのでしょう。けれどこのWEB全盛の時代に、特にコロナ禍が始まって以降の世界のシステムに追い付いていないなという印象です。そういった煩雑な手続きのせいか、残念ながら在外邦人の選挙人登録数および投票率は、ともに低い数字になっています。
2019年に実施された第25回参議院議員通常選挙における在外投票率は、在外選挙人登録者の21%前後だったそうです。ちなみに、2019年9月の在外選挙人名簿の登録者数は10万745人。外務省の海外在留邦人数統計によると、2019年10月の推計で、在外邦人は141万356人になるとみられています。在外邦人のうち約7%しか選挙人登録を行っていないという事実にも驚きました。
我々在外邦人のほうでももっと多くの人が在外選挙人登録し、無視できない票田として存在感を示すことも大事かもしれません。そうすれば、インターネット投票も夢ではないのではないでしょうか。
[Photos by Shutterstock.com]
[在外選挙人名簿登録申請の流れ]
[令和元年9月登録日現在選挙人名簿及び在外選挙人名簿登録者数]
[第25回参議院議員通常選挙に伴う在外投票(速報:投票者数)]
[海外在留邦人数調査統計]
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倉田直子 | |
2004年にライターとしてデビュー。北アフリカのリビア、イギリスのスコットランドでの生活を経て、2015年よりオランダ在住。主にオランダの文化・教育・子育て事情、タイニーハウスを中心とした建築関係について執筆している。著書「日本人家族が体験した、オランダの小学校での2年間」(https://www.amazon.co.jp/dp/B0758JCDTM/) |
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