POSTED BY 北 秀昭掲載日 JAN 26TH, 2022

樹脂をメイン材料とした未来のコンセプトカー「ItoP(アイトップ)」を徹底解説

写真はカスタムカーの祭典・東京オートサロン2022に出展された電気自動車「ItoP(アイトップ)」。卓越した強靭性と復元性を持つ新素材「しなやかなタフポリマー」という樹脂をメイン材料とし、金属では不可能だったデザインや車体構造を具現化。また各パーツの樹脂化を図ることで、大幅な軽量化と省エネルギー化に貢献しています。今回は、次世代コンセプトカー「ItoP」について見ていきましょう。

目次

優れた強靭性と復元性を持つ新素材「しなやかなタフポリマー」を採用

東京大学の伊藤耕三教授、東レ株式会社、三菱ケミカル株式会社、住友化学株式会社、AGC株式会社、株式会社ブリヂストンの協力を得て製作されたItoP(アイトップ)

東レ・カーボンマジックの主導で開発されたコンセプトカー「ItoP(アイトップ)」は、内閣府総合科学技術のイノベーション会議が主導する、革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)の一環として製作されたモデルです。

サスペンション、スプリング、ホイールなどの足周り部品には、新素材の炭素繊維強化プラスチック(CFRP)を採用し、大幅な軽量化(車両重量850kg、軽量化率38%)を達成

燃費性能を向上させるために空力特性をとことん吟味した外観は、既存の自動車の概念を覆した、未来が舞台のアニメーションに登場しそうな超個性的なもの。

製造工程も含めた10万km走行時点での温室効果ガス(GHG)排出量は、従来素材の鉄、ガラス、タイヤなどで生産した場合と比べ、11%低減できる可能性を実証

左右に張り出したフロントタイヤ、開放感ある大型のフロント&サイドウインドガラス、スポーツカーを彷彿させるガルウイング(上方に開くドア)、フロントに運転席+リアシート×2席としたシートアレンジなど、独自のデザインや機構が盛り込まれています。

シート構造部材は環動ポリマー構造を導入したCFRP製とすることで、軽量化に加え、強靭性に優れた薄肉シートシェル構造の採用が可能に。シートレイアウトは1+2座席の3名乗車

樹脂化率47%を達成し、大幅な軽量化を実現

軽量性・機能性に富んだ車体の構築には、「しなやかなタフポリマー」を含む樹脂材料を炭素繊維で強化した複合材を多用

2014年に開発がスタートしたItoP(アイトップ)は、各パーツに「しなやかなタフポリマー」という新素材を多用しているのがポイント。「しなやかなタフポリマー」は、「しなやかなカーボン素材」とも呼ばれ、極めて優れた剛性・強靭性・復元性を持つのが特徴です。

「しなやかなタフポリマー」に加え、さまざまなタイプの樹脂素材で構成されたItoP(アイトップ)は、既存の自動車の常識を遥かに超えた、驚愕の樹脂化率47%という数値を達成。

インテリアパネルの大半をCFRP化し、モノコックフレームやドア構造の一部とすることで、効率の良い車体剛性確保と軽量化に貢献

金属では成しえなかったデザイン・車体構造を具現化するとともに、構成部品の積極的な樹脂化を推進することで、大幅な軽量化・省エネルギー化を実現しているというわけなのです。

サスペンション部分には新素材樹脂「CFRP」を導入

ItoP(アイトップ)のリアデザインは、既存の自動車とは大きく異なるのが特徴

極めて高い強度が必要となる自動車サスペンション部分は、これまで樹脂化が困難だと言われてきました。しかし、ItoP(アイトップ)には、新開発した環動ポリマー構造を導入した「CFRP(炭素繊維強化プラスチック)」という素材が使用。これにより、サスペンション部分に必要な剛性としなやかさの獲得に成功しています。

また、主要部分はもちろん、常時伸縮し、極めて高い負荷のかかるスプリング部分にもCFRPを採用しているというから驚き。繰り返しの変形・フリクション(抵抗)・過重にも十分耐えうる疲労特性が確認されています。

前後ホイールは、サスペンション部品と同様、環動ポリマー構造を導入したCFRPを採用。CFRP製ホイールは耐衝撃特性が改善され、タイヤを含めたバネ下回転部位を軽量化。車両全体の性能向上に大きく寄与しているのがポイントです。

ItoP(アイトップ)は、リチウムイオンバッテリー+電動モーターを駆使した電気自動車(EV)で、駆動形式は電動モーターはリヤホイールに直付けしたインホイールモーター型としており、後輪2輪駆動が採用されています。

市販化はある!? ItoP(アイトップ)の今後の展開は?

個性的なItoP(アイトップ)のリアビュー

ItoP(アイトップ)の製作により、樹脂によって創出される革新的な自動車のあり方や、作り方の一端を具現化した東レ・カーボンマジック。なお、ItoP(アイトップ)はあくまでも新素材の開発を目的としたコンセプトカーであり、市販化の予定はまったくの未定。

東レ・カーボンマジックでは今後、社会が求める持続可能な安全・安心・低環境負荷という、普遍的な課題に貢献する「モノづくり」に、ItoP(アイトップ)の成果を活用していくとのことです。

ItoP(アイトップ)主要スペック

走行テストの模様
全長×全幅×全高4,280mm×1,930mm×1,350mm
最低地上高140mm
ホイールベース3000mm
フロント/リアトレッド1,660mm/1,670mm
前面面積1.994m2
乗車定員3名
空車重量、重量配分850kg、フロント:43% リア:57%
駆動形式インホイールモーター、後輪2輪駆動
定格出力15kW
定格、最大トルク150Nm、570Nm
バッテリー形式リチウムイオン二次電池
定格電圧、電力容量DC300V
定格、最大出力24kW、45kW
充電方式単相100V/200V
タイヤ、ホイール155/70R19、5.0J-19"
車内は未来の自動運転化を見据えたモニタリングシステムやステアリングシステムを採用
大きく前上方に開くガルウイング型の電動アシスト付きドア(重量35キログラム/片側)は、モノコックボディと同様の材質と構造を持ち、軽量化が達成されたことで成立
前席1名・後席2名の乗員配置、収納可能なフロントシートやツインレバー式ステアリングは、将来の完全自動運転を意識したもので、後部に着席する乗員の快適性を追求
ドアの開閉から運転に関わる操作・情報モニターに至るまで、スマートフォンとタブレット型PCを用いるシステムを採用
左右のドアはランボルギーニなどに採用された、上下開閉式のガルウイング型に設計
高剛性と高タフネス性を両立した透明樹脂ウインドガラスや、専用の省エネルギータイヤを新たに開発して搭載
環動ポリマー構造のポリアミドとグラスファイバーの複合体からなる衝撃吸収体を、側部と前部に配したほか、電池ボックスにもCFRP素材を採用
灯火類は最新のLEDを採用
リア部の透明樹脂ウインドガラス

[photos by 北 秀昭]

北秀昭
編集者/ライター

神戸~東京築地~横浜~兵庫姫路~大阪京橋育ち。瓦敷き職人助手、空手師範代助手、ダスキ〇のお掃除部隊等に従事しながら高校・大学を卒業後、旅行グルメの編プロを経て、車やバイクに特化した出版社に勤務。バイク専門サイト「4ミニ.net」運営。 https://4-mini.net/

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