石油はどこからやってくるのか？

ところで、Z世代のみなさんは、石油はどこから来ているかをご存じだろうか。実は、日本で使用される石油の9割は、中東から来ているのだ。現在では、サウジアラビアが1位、UAEが2位となっているのだが、当然ながら何か戦争やテロなどが発生すれば、日本へ向かう石油タンカーの安全な航行が脅かされ、石油価格は大きく変動する。そして今、サウジアラビアやUAEの情勢で緊張が走っているのもまた実情だ。

親イラン武装組織「フーシ派」とは？

日本では大金持ちのイメージが強いUAEの首都アブダビで2022年1月17日、国営石油会社の燃料貯蔵施設や国際空港の近くに攻撃用ドローンなどが着弾し、火災が発生。これまでに3人が死亡した。UAEは同日、アブダビを攻撃したイエメンの親イラン武装組織フーシ派に対して報復を宣言。既に、UAEと連携するサウジアラビア主導の連合軍が21日までにイエメンにあるフーシ派の施設を攻撃し、60人が犠牲となった。

フーシ派は長年イエメン内戦に加担するサウジアラビアやUAEへの報復を示唆し、近年はサウジアラビア領内へのミサイルやドローンによる攻撃を繰り返している。サウジアラビア西部の第二の都市ジッダにある石油関連施設に向けてミサイルが発射され、国営石油会社サウジアラムコが所有する石油タンク1基が被害を受けたり、首都リヤドにある石油精製施設が無人機6機によって攻撃を受けて火災が発生したりしたこともある。サウジアラビアはフーシ派からの攻撃が相次ぐことから、石油施設などへの攻撃を防止する対策を強化しているが、フーシ派はイエメンにある自らの支配地域から1,000km以上も離れた場所を攻撃できる能力を持っており、サウジアラビアは緊張をもってその行方を見守っている。

また、1月下旬、フーシ派の報道官は今後もUAE領内への攻撃を続ける意思を示し、UAEに展開する外国企業に対して撤退するよう警告。これによってすぐ撤退する外国企業はないと思われるが、アブダビだけでなく日本人の観光客も多いドバイももちろん攻撃対象となる。1月24日にもアブダビ近郊にあるUAE軍の施設がフーシ派から攻撃を受けたようだが、UAE軍と米軍は事前に撃墜する体制を強化しているという。フーシ派も日本や欧米の企業を狙うことは避けるだろうが、攻撃によって日本企業が被害に巻き込まれる可能性は否定できない。

日本に及ぼす影響とは？

岸田政権は経済安全保障を強化しようとしているが、日本の石油の中東依存度は依然として9割を超えている。今後の情勢は石油の9割を中東に依存する日本にとって大きな懸念材料となる。つまり、普段使っている石油、それはもとに国際政治の影響を受けるのだ。

	アンダルシア ライター／
	政治学者　専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。 著者のプロフィールを詳しく見る

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