POSTED BY オオモト ユウ掲載日 JUN 17TH, 2021

【釣りの今を斬る】水辺のレジャーは危険だらけ!?知っておきたい実情と対策

国土の四方をぐるりと囲む海、山から流れ出た降水を集めて流れる河川や湖沼、灌漑や治水目的で整備された水路やダム。我々の生活の身近にはきわめて多数の水辺が存在しており、その数は挙げればキリがないほどである。それゆえに釣りを初めとするレジャーが盛んに行われ続けてきたのだが、その一方で水辺には相応の危険が存在して不幸な歴史が折り重なっているのも厳然たる事実。楽しい休日が一転、悲劇の当事者になってしまう可能性は誰にもある。水辺のレジャーが盛り上がる夏場を迎える前に、その危険性を再認識しておきたい。

目次

データから見る水辺レジャーの不幸な実例

昨年(令和2年)9月、警察庁生活安全局が発表したデータ(※1)によると、夏期(7、8月)全国で発生した水難事故は発生数504件、水難者616人、そのうち死者・行方不明者は262人を数えた。この数字はあくまで海辺へ出かける人が増える夏期の2カ月に限った統計であるが、それでもこれだけの不幸な事故が発生している事実には心が痛むばかりである。

磯場には慰霊碑や観音様が祀られていることがしばしばある。海上安全を祈る存在は、その場所における事故の多さを象徴していると考えてよい

内訳を見てみると、発生場所は「海」が最も多く(53.4%)、「河川」がそれに続く(35.9%)。また、発生時の行為については「水遊び(24.0%)」に続いて「釣り(21.1%)」が挙げられている。水辺への人出が格段に増える夏場ゆえ遊び方に明確な区別がないケースも多いものの、やはり常に危険が存在していると考えたいところだ。水難者の4割強が死亡又は行方不明に至っているという現実は非常に重く、楽しさの陰にはリスクが潜んでいることをあらためて知っておく必要がある。

ちなみに昨年は、COVID-19の流行による海水浴場の開設見送りや密になりにくい屋外レジャー指向の急速な高まりといった諸要因により、次のような傾向が見られたことも追記しておく。

  • 発生件数、水難者数が数年ぶりに増加傾向に
  • 死亡・行方不明事故発生数の比較(前年比)において、「海では減少、河川では増加」の傾向

引き続きアウトドアレジャーへの注目が高まっているせいか、今年もすでに水難事故のニュースが聞かれており、夏場にかけても発生の可能性はさらに高まることが考えられる。この予想が杞憂となるよう、水辺へ出かける際にはより注意を払って楽しむことをお願いしたい。

こんな場所が実は危険!? 要注意な水辺環境

キャリアに関わらず、入りやすくて足場のよい場所は釣り人から人気が高い。海釣りであれば堤防や漁港、河川や湖沼ではコンクリートで整備された護岸がそれに該当し、立入禁止場所を除けば高確率で竿が並んでいる。しかし、「足場がよい」、「釣り人が多い」という要素は、必ずしも「安全」とイコールではない。

漁港や堤防は海釣りの入門ポイントとして人気だが、垂直に落ち込む構造のため、落水すると足がかりがなく非常に危険

まずは海に延びた堤防から考えてみたい。基本的に沖から打ち寄せる波から海岸線の街や道路、漁業施設を守るために造られた構造物であり、人がその上から釣り糸を垂れる行為は目的外の利用となる。これはテトラポットなどの消波ブロックも同じ。それゆえ、その上に乗っていた人が運悪く落水しても、その場所に戻るための対策は施されていない。

管理者も目的外の用途で立ち入る人に対して策を講じることはなく、唯一の対策が「立入禁止」となってしまう。漁港や堤防などは、あくまで釣りに対して「黙認」をしているだけなのだ。

河川や湖沼に多い前下がり状の護岸。危険には見えないが、落水すると這い上がりにくいことが最近の研究で証明されている

また、河川や湖沼では、前下がりのスロープ状になった護岸での事故が多い。実際に、今年5月にも香川県のため池で不幸な事故が発生(※2)して、全国的なニュースとなったことは記憶に新しい。

こういった護岸は、多少の凹凸が設けられていたり、乾いている部分についてはスニーカーでも多少のグリップが効くケースが多い。そのせいか、危険を感じないまま立ち入ってしまう傾向があるようだ。ただ、仕掛けを投げる際にバランスを崩せばそのまま落水してしまうし、水面近くにはコケや泥などが付着して滑りやすくなった箇所も少なくない。

一見、落水しても自力で上がれそうにも思えるが、水に濡れた状態では足元がさらに滑りやすくなる。しかも濡れた着衣は格段に重くなってしまい、よりいっそう上陸を難しくする。よく昔からの言い伝えで「水中に引きずり込まれる」という表現が登場するが、この現象を例えた表現であろう。この一連は専門家による検証記事(※3)もあるので参考にしてほしい。

入ってしまえば人間は無力!? 慣れない人は入るべからず!

アユ釣りなどの川釣りでも毎年のように事故が発生している。いったん水の中に入ってしまえば人間は実に無力なのだ

近年はゲリラ豪雨や台風などの気象災害が増え、都市部の浸水被害が話題になることも多い。そういったケースでもよく話題に上るのが、「膝程度の水深でも流れている水の中では思うように歩けない」というもの。

体験したことがない人は想像できないかもしれないが、そもそも水中を歩こうとすればプールや浴槽のような止水域でも水の抵抗がかかって歩きにくい。それに水の流れが加わり、さらには着衣によってそれにかかる抵抗が大きくなる。

また、海や川の底はコンクリートのような硬質かつ安定感のある質感ではないため、流れに逆らって立っているだけでも足元が掘れていく。海水浴に行って波打ち際で立っていると、自分の足の周りの砂が流されながら掘れていくのを考えればわかりやすいだろう。

膝下ほどしか水深がない川でもバランスを崩せば立ち上がるのも難しい。些細な転倒が重大事故に繋がる可能性は十分ある

流れの中を泳いだり、服や靴を身に着けたまま泳ぐのも訓練が必要とされ、咄嗟に対応できるものではない。水難事故の場面においては泳げるか否か、いわゆる“カナヅチ”かどうかとは別次元で考えるのが適当である。

ごく当たり前のことだが、自然の水辺で遊ぶことは自らの責任で楽しまねばならない。同じ水遊びでも自然の水辺とプールとではまったく違う。不幸な事故に至らぬよう、「不用意に水に入らない」ことを肝に命じてほしい。

事故を防ぐ3本柱「臆病になる」「正しく知る」「事前の対策」

労働災害における経験則を示す用語に「ハインリッヒの法則」というものがある。自動車運転免許取得時の講習においても登場する内容で、一般的には「ヒヤリ・ハット」などと紹介される。これは1件の大事故の裏には29件の軽微な事故が潜み、その裏には未発生ながらも予兆的な出来事が300件も存在するという内容である。

水辺の天候変化は急に、ときに激しく起こることが多い。気象情報などはこまめにチェックすべし!

これはアウトドアレジャー全般に通じる。経験を積むほどその重要性が身に染みてわかるようになり、万が一の可能性も排除して臨もうとするようになっていくものだ。「臆病」という言葉はマイナスの意味が強く感じられるが、ここではプラスの意味が強い。気象の変化などに敏感になり、己の力量や体力と照らし合わせて合理的な判断を下すことを意味する。一か八かのチャレンジは“無謀”と同義になる場合も多く、事故に繋がる要因として避けるべきである。

2番目は事故に繋がる要因を知っておくこと。自然相手の遊びでは、気象条件やその変化、過去に起こった事故の事例といった情報をあらかじめ見聞きしておくことが重要になる。潮位の満ち引きを調べずに潮干狩りをしたり、台風接近時に海に近づくなど、きちんと調べておけば防げる事故も少なくない。

釣具店などでは3,000円前後で買えるライフジャケット。水辺で安全に遊ぶためには必要不可欠な装備

最後の「事前の対策」は、具体的な装備と理解してほしい。水難事故においては溺死の危険性が最も高いため、「そもそも落水しない」「落水しても救助を待つ間は浮いて呼吸を確保する」といった策を講じる必要がある。

最も簡単なのはライフジャケット(フローティングベスト、救命胴衣とも呼ばれる)の着用。水温が低い時期はともかく、夏場は水温が比較的高いため呼吸さえ確保できれば重大事故を回避できる可能性が上がる。特に、危険察知能力や体力が心許ない子どもには必ず着用させたいところ。最近は2〜3千円程度で購入できるものも多く、費用負担も軽減されている。もちろん、大人も着用するに越したことはないが、まずは子どもの事故を防ぐことから初めてほしい。

水難事故に遭遇した際に行うべき初期対応策

恥ずかしながら、筆者もかつて水難事故の当事者になりかけたことがある。専門業者を利用して渡る沖堤防に渡った際に、不注意から堤防の継ぎ目に落水。幸い、着用していたライフジャケットが引っ掛かって下半身のみの水没で事なきを得たが、堤防に付着した貝類で右脚の脛に大きな傷を追う羽目になった。

また、とある漁港で小学校低学年程度の子どもがいきなり落水する事故を目撃したこともある。周囲の大人がすぐに気づき、また本人がライフジャケットを着ていたため大事には至らなかったが、堤防上は30分ほど救助活動で大騒ぎとなった。

水難事故を目撃したら決して自力で救助しようとせず、周囲や関係機関に助けを求めること。迅速な行動が不幸な事故を減らす事になる

前項でも触れたが、死亡事故には至らないこうしたハプニングは常に起こりうる。万が一遭遇した際の心得として、基本的なことを覚えておこう。

まずは単独行動を避けること。当たり前だが、単独行動の際に事故の当事者になっても救助を呼ぶことができない。また、遭遇した場合に自分だけで解決しようとせず、周囲の人などに助けを求めること。海上保安庁のホームページ内にある『遊泳の安全情報(※4)』『釣りの安全情報(※5)』内にも記述があるが、自ら水に入っての救助は決しておすすめできない。自ら助ける場合には、ロープや浮き輪、もしくはそれの代わりになるような道具を使っての救助を試みよう。

また、関係機関への救助要請も速やかに行いたい。海ならば海上保安庁の緊急通報用電話番号「118」、もしくは警察の「110」や消防の「119」のいずれかへ通報し、救助を求めよう。この場合、1.事故の詳細、2.発生場所、3.事故者の人数や年齢などの情報、4.通報者の名前と連絡先を明確に伝えること。有事に際して取り乱しがちになるが、落ち着いて対応してほしい。

※1 www.npa.go.jp › statistics › safetylife › chiiki › R2_kaki_suinan
※2 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210510/k10013021071000.html
※3 https://news.yahoo.co.jp/byline/saitohidetoshi/20210510-00237132/
※4 https://www6.kaiho.mlit.go.jp/watersafety/swimming/04_rescue/
※5 https://www6.kaiho.mlit.go.jp/watersafety/fishing/02_action/

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オオモトユウ
編集者/ライター/フォトグラファー

スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。

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