POSTED BY オオモト ユウ掲載日 JUL 1ST, 2021

【釣りの今を斬る】生態系にも影響が!?見えにくい水中のゴミ問題(Vol.2)

ここ数年、「マイクロプラスチック」という言葉を見聞きする機会が格段に増えている。プラスチック製品による水辺の環境汚染はかねてからの懸案事項であったが、よりいっそう対応が難しい廃棄物として世界中で危惧されている。四方を海に囲まれ、水産資源との関係が深い日本にとっても当然無視できるものではない。食卓に上る魚介類にも影響を及ぼしている可能性も指摘されており、問題は漁業関係者や釣り愛好者に止まらなくなっている。母なる海で起こっている“微細”な問題に迫ってみたい。

目次

目に見えにくいゴミ「マイクロプラスチック」とは?

まず、マイクロプラスチックとは何物なのか。

定義はいくつかあるようだが、一般的には大きさが5mm以下のごく小さな廃プラスチックが「マイクロプラスチック」と呼ばれている。そもそもごく小さな状態で製造されて使用後に自然環境に放出されたものもあれば、使用中や洗浄の過程で本体から脱落して放出されたもの、また紫外線による劣化や摩耗によって徐々に細分化されたものまで、その発生要因はさまざまである。

海辺に放置されたプラスチックゴミはマイクロプラスチックの元凶。紫外線や風、波によって破砕や摩耗を繰り返し、やがて回収不能な小ささになってしまう

その定義は大きさによるものであり、元を辿れば我々の身の周りに溢れるプラスチック製品と大差はない。プラスチック製品によるゴミ問題は数十年来の課題であるが、そのサイズが“小さく”なることで問題は“大きく”なっている。

その小ささゆえ自然環境に放たれてしまえば回収は困難であり、水や風に乗って広く拡散してしまう。そもそもプラスチックは自然界で分解されない物質であり、100年単位で残存し続けるとされる。人間の目には見えにくい形で、事態は着々と悪化しているのだ。

マイクロプラスチックが生まれる要因

前項でも触れたが、マイクロプラスチックの成り立ちには2種類ある。

ひとつは元々その大きさで製造されたもの。数年前までは洗顔料や歯磨き粉に普通に配合されていた「スクラブ剤」がその代表例である。もちろん天然塩や泥を利用したスクラブ剤はそれに含まれず、プラスチック由来のものを指している。

この問題が大きく取り沙汰されるようになって以降はその使用が減りつつあるが、排水によって水中に拡散してしまうため使用後の回収は難しい。また、フリースなどのプラスチックの合成繊維を使用した衣服は、洗濯の過程で抜け落ちた繊維が排水とともに放出される。洗濯機のくず取りネットや下水処理場のろ過装置をすり抜けてしまえば、やはり回収が難しい。こういった経緯で自然界に排出されたものは「一次マイクロプラスチック」と呼ばれ、後述する破砕によって微細化したプラスチックとは区別されている。

放出時点ですでに微細な「一次」に対し、破砕や摩耗を経て微細化したものは「二次マイクロプラチック」に区分される。ペットボトルやビニール袋、タバコのフィルターなどが身近なところで、釣り糸などもこちらに分類される。こちらも微細化してしまえば回収が困難な点は同じだが、元は回収が可能な大きさであり、意識次第でその原因を減らすことは可能である。

2020年7月から施行され、今ではすっかり定着したレジ袋有料化の措置。これは「二次マイクロプラスチック」の元となり、大量消費されているビニール袋の削減を狙ったものである。この措置については「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」の関連省令である「小売業に属する事業を行う者の容器包装の使用の合理化による容器包装廃棄物の排出の抑制の促進に関する判断の基準となるべき事項を定める省令」によって定められており、法律的根拠を持つ国を挙げての施策である。

施行直後の混乱は記憶に新しいところだが、国が法整備まで行った背景には深刻化するマイクロプラスチック問題に対する危機感の裏返しと見ることができる。

マイクロプラスチックと魚介類の切れない関係

海中には魚や貝類、藻類、甲殻類など多彩な生物相が形成されている。これらは人類にとっても貴重な食料であり、特に古くからタンパク源としてきた日本人にとっては文化的な結び付きも強い。

そんな海の中には、相当量のマイクロプラスチックが漂う事態になっており、関係機関が危機感を強めている。国内外の研究機関によって相当数の調査(※1)が行われており、実際に多くの地点で魚や貝類の消化器官からマイクロプラスチックが検出されている。また、海水から生成された食塩からも検出が確認されている(※2)。

大きく口を開いて海水ごとプランクトンを補食するイワシ。この食べ方のせいでマイクロプラスチックを誤って捕食している可能性も

海中を漂うマイクロプラスチックは、イワシなどの小魚や貝類にとって主食であるプランクトン類と誤認されたり、もしくは補食の際に同時に摂取している可能性が高い。つまり、魚介類を介してマイクロプラスチックが我々の口に入る可能性もゼロではないのだ。

新鮮なイワシを丸のまま天日干しにした「丸干し」は古き良き日本のおかずである。ホロ苦いキモは左党にはたまらない代物だが・・・

念のため断っておくが、人間が微量のマイクロプラスチックを経口摂取しても便によって排出されるため健康被害が出る可能性は低いとされている。基本的には魚の消化器官(胃などの内臓)を除去して食べれば、不本意にも摂取する可能性は大きく低下するが、イワシは煮干しや魚粉の原料として利用され、その幼魚はシラスとして流通している。こういった食文化を守る意味でもマイクロプラスチックを減らす取り組みには意味がある。

また、マイクロプラスチックをサンゴが取り込むことにより、共生関係にある褐虫藻が減ってサンゴの栄養状態が悪くなることが報告されている(※3)。

懸念はそれだけではない。このマイクロプラスチックは汚染物質を媒介するリスクが指摘され始めている。生物にとって有害な物質が吸着したマイクロプラスチックは、それを食べた小魚だけでなく食物連鎖に乗ってその影響が大きくなる可能性がある。まだ明確な研究結果は出ていないが、その原因の排除に努めることにデメリットはひとつもない。すでに海中に漂っているものを減らすことはできなくとも、増やさない努力には相応の意義があるだろう。

釣り人ができるマイクロプラスチック対策とは

不意に落としたり放置したゴミが巡り巡って人類の脅威となる。原因となるプラスチックゴミはきちんと持ち帰って処分したい

プラスチック製品は現代人の生活に深く根付いており、その根絶を目指すことはゴミ問題の点では理想である。ただ現実かといえばそれは否。これは釣りにおいても同じことが言え、例えばナイロン製やポリエチレン製が主流となっている釣り糸を以前のように綿や絹に戻すことは難しい。もちろん、同程度の使い勝手が担保されれば天然由来の素材が選ばれる可能性はあるが・・・。

現状での対策は「身近なところから始める」が現実的であろう。ゴミの持ち帰りを徹底するだけで少なくとも釣りゴミは減るはずだし、落ちているゴミを拾えばその分だけマイクロプラスチックの元は減る。

「焼け石に水だ!」「そんなキレイ事を言っても意味がない!」

そんな意見があることも理解できる。水辺のゴミは釣り人によるものだけではなく、むしろ他の要因によるものがほとんどという可能性は高いからだ。

ただ、だからと言ってゴミの放置を肯定する理由にはならない。ゴミによって釣り人に対する印象が悪化して釣り場が減り、環境や魚の生態にも悪影響が出ている現状がある。こういった悪循環を防ぎつつ長く釣りが楽しめるよう、まずは身の周りのことについて「徹底」を求めたい。

※1 水環境学会誌Vol.41 No.4(2018)
「日本内湾および琵琶湖における摂食方法別にみた魚類消化管中のマイクロプラスチックの存在実態」 牛島大志、田中周平、鈴木裕識、雪岡聖、王夢澤、鍋谷佳希、藤井滋穂、高田秀重)
※2  https://style.nikkei.com/article/DGXMZO36912250V21C18A0000000?channel=DF130120166020&nra
※3 https://www.nippon-foundation.or.jp/journal/2020/44897

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オオモトユウ
編集者/ライター/フォトグラファー

スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。

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