POSTED BY アンダルシア掲載日 JUL 7TH, 2021

【論考】中国化が進む香港~今後の行方と台湾問題への波及~

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界情勢の「今」を論考する当シリーズ。今回は、香港国家安全維持法などで変わりゆく香港情勢と台湾問題への波及、日本への影響を考える。

目次

中国国内でも発生する不満分子

Tarek Islam / Shutterstock.com

中国と主要国間の対立が激しくなるなか、2021年7月1日、北京では共産党創立100年を記念する式典が大々的に開催された。それに伴って北京では警備が厳重に強化され、6月23日からは天安門への入場が制限された。バイデン政権になってからは、新疆ウイグルの人権問題を巡って国際的な非難が高まっているが、2013年10月にはウイグル人が乗る車両が天安門に突っ込む事件が発生しており、北京の警備当局はテロを含め厳重体制を敷いていた。

そのようななか、中国外務省前で男が火をつける動画が6月28日にネット上に投稿された。放火騒ぎとみられるが、男は警察官に拘束される前に何かしら叫び声をあげて抗議していたという。この件で中国当局は取り調べを行っていると29日の声明で発表しているが、中国国内での不満分子は決して少なくない。

批判的論調のリンゴ日報が発行停止に

一方、この放火騒ぎは香港問題とも無関係ではない。香港では6月24日、習政権や香港政府に批判的な論調を貫いてきたリンゴ日報が、香港国家安全維持法に違反したとして同日の朝刊を最後に発行停止に追いやられた。24日の最後の朝刊の際、それを購入しようと多くの市民が露店に並んだ。一気に大量の新聞を購入しようとする市民の姿もあったが、子どもたちなど次世代に、香港にはこういう時代があったと伝えるために購入したとする市民も少なくなかったという。

2020年7月の香港国家安全維持法の施行以降、リンゴ日報創業者である黎智英氏や幹部らが同法に違反したとして逮捕されたり、リンゴ日報の関連会社の資産が凍結されたりするなど、民主派への締め付けが強化されてきた。今後、香港の中国化にさらなる拍車が掛かり、当局によるネット上の監視やアクセス制限などがいっそう強化される恐れがある。

ちなみに6月29日、これまで香港の民主活動で先頭に立ってきた民主活動家・周庭氏のフェイスブックが閉鎖されたことが明らかとなったが、同氏は現地新聞にその理由を尋ねられたが回答を拒否したという。

国外移住が進む香港市民

Rumbo a lo desconocido / Shutterstock.com

香港では2019年4月に逃亡犯条例の改正案が香港政府に提出されて以降、その撤回を求めて当局と市民との衝突が各地で相次ぎ、警察が市民に向けて銃を発砲したり、若者らが大学を占拠したりするなど治安悪化が顕著になった。しかし、2020年7月の香港国家安全維持法を巡っても当局と市民との間で緊張が高まったが、2019年の時と比べ市民の抵抗は少なく、市民の間では諦めや絶望感が強く漂うようになった。

英内務省が6月に明らかにした情報によると、英国が2021年1月末から受付を開始した香港からの移住者のための特別ビザ(査証)の申請者数が4月末までで3万4,300人に上ったとされ、今後富裕層を中心に香港からの脱出がいっそう加速化する可能性がある。一方、一部メディアによると既に10万人が香港を離れたとの情報もある。

香港情勢が台湾問題に及ぼすものとは

香港政府の林鄭月娥行政長官は2021年6月、北京で開催された金融フォーラムの席で、今後香港と中国本土と政治経済的な一体化を押し進め、国際的な金融センターとしての香港を発展させる考えを示した。香港政府は習政権の傀儡政府だとする見方も強いが、この流れが止まることはもうないだろう。近年、習政権は香港近隣の深センや広州の経済ハブ化を強化してきたが、そこには香港の優位性を低下させ、香港の中国本土依存を高める狙いもあったに違いない。

一方、今後は香港情勢がどう台湾問題は波及するかも大きなポイントだ。台湾を巡って米中の対立が深まるなか、習政権が台湾の香港化を狙っていることは間違いなく、海洋安全保障を含め今後の行方が懸念される。中国が台湾に軍事侵攻するかしないかでも安全保障専門家の意見は分かれており、日本のエネルギー安全保障上も決して他人事ではない。

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アンダルシア
ライター/

政治学者 専門分野は比較政治、国際政治経済。特に近年は米中関係や経済安全保障などの日本の国益を左右する研究に従事する。また、学術研究に留まらず、NHKや共同通信、朝日や日経、産経など大手メディアで解説なども行う。

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