POSTED BY オオモト ユウ掲載日 AUG 12TH, 2021

【釣りの今を斬る】海水温上昇がもたらす日本近海の変化(vol.2)

陸地の3分の2が森林に覆われた豊かな国土と、南北からの海流が交わる複雑で多様性に富んだ海洋環境を享受してきた日本。近代以降は人間による環境破壊が進み、その共存が課題とされて久しい。ただ、人の目に付きやすい陸上の変化に対して海中のそれは気付かれにくく、顕著になる頃には進行の度合いが深刻になっている傾向にある。日本各地で進行が報告されている海中の環境変化「磯焼け」について、その原因や我々人間への影響などを掘り下げてみたい。

目次

そもそも「磯焼け」とはどんな現象? 

多くの人にとっては耳慣れない「磯焼け」という言葉。水産行政を取り仕切る水産庁が取りまとめた『第3版 磯焼け対策ガイドライン』では、下のように定義されている。

磯焼けとは、「浅海の岩礁・転石域において、海藻の群落(藻場)が季節的消長や多少の経年変化の範囲を超えて著しく衰退または消失して貧植生状態となる現象」(藤田,2002)である。

『第3版 磯焼け対策ガイドライン』(※1)より抜粋
浅海に茂る海藻は海中のみならず地球環境のバランスを保つ重要な役割を果たしている。この環境が失われれば人間生活への影響も大きい

簡単に言うと「浅い海に広がる海藻帯が異常なペースで減ったり、なくなっていく」現象のことを指している。さらに踏み込んだ解釈を加えれば、「放置しておけば自然回復が見込めず、人為的対策が必要」と言ってもよいかもしれない。その影響や発生の原因については後述するが、いずれにしても目を逸らしていては回復が見込めない段階を迎えているのだ。

浅海に茂る海藻は海中のみならず地球環境のバランスを保つ重要な役割を果たしている。この環境が失われれば人間生活への影響も大きい

日本人にとっては食料としてはもちろん、古くは神事への供物として、また、近代以降は化学・医療用の材料素材として注目されるなど、他国のそれと比べものにならないほど深い関わりがある。また、四方を海に囲まれた島国ゆえ、海洋環境への影響も見逃せない。「磯焼け」は「海の砂漠化」と例えられる現象であり、日本人ならずとも注目が必要な環境問題である。

「磯焼け」が海洋環境に与えるヤバい影響 

海藻帯は「海の森」とも称され、海藻の生育に必要な光が届く水深30〜40mまでの海域で豊かな自然環境を形成する一助となっている。

海藻帯が果たす役割としては、以下の4つが挙げられる。

1.コンブ、ワカメなど人類にとっての食品を生産する

2.魚介類の繁殖、成育、定住の場となる

3.チッ素やリン、二酸化炭素などを吸収し海中環境を浄化する

4.流れ藻の供給

1.〜3.についてはその内容が容易にご理解いただけることだろう。

4.について補足説明をすると、波浪などによって茎の途中で切れたり根が抜けて海面・海中を漂う海藻を「流れ藻」と呼ぶ。これは水生生物にとっては稚魚の寄る辺となり、成長の助けとなる。また、流れ藻はその体内に取り込んだ二酸化炭素などの有機炭素を抱えたまま深海に沈降したり、海底に埋没することとなり、地球温暖化の元凶とされる二酸化炭素を貯留する効果を果たしている。

光合成のため海中に溶け込んだ二酸化炭素を体内に取り込む海藻類。その働きに注目が集まり、保護の必要性が訴えられている

すべてではないもの、「磯焼け」の拡大によって、これらの働きが地球上から失われることになる。1.や2.のようにその変化がわかりやすい要素はともかくとして、陰ながら環境バランスを保っている3.や4.が失われれば、長い目で見てそのダメージは甚大。二酸化炭素排出量の約3割が海洋において吸収されていることを考えれば、「磯焼け」の拡大が問題視されるのは当然のことなのだ。

元をたどれば海水温上昇!? 「磯焼け」が起こる原因

続いて「磯焼け」が起こる原因を見てみたい。それらを見ていくと、実は海水温の上昇が「磯焼け」の拡大を助長していることがおわかりいただけるはずだ。

そもそも海藻の減少には複数の要因が考えられる。

食用にするムラサキウニなどと比較して格段に長いトゲを持つガンガゼ。食用には適さず、水温上昇で勢力を拡大していることから、磯焼けを招く生物として駆除対象となっている

まずは「食害」。ウニやアワビ、サザエなどは海藻を食べてその身を大きくする。また、暖かい海域に生息する魚類には海藻を主食とする種が多い。こういった「植食動物」は昔から生息していたが、海藻の供給と植食動物による補食とのバランスが崩れると「磯焼け」が進むことになる。

植食動物による食害が顕著になる要因としては、高水温による摂餌活動の活発化や、消波ブロックなどの投入に伴う植食動物の定着、流れ藻の減少に伴って食害が生体に及ぶことなどが挙げられる。海水温の上昇のほか、人間の都合による海辺環境の改良がその原因となっていることがおわかりいただけるはずだ。

消波ブロックなどは海藻の着き場となる一方で、植食生物の住処となる一面も。人間の活動による海辺環境の改良が「磯焼け」を招く一因になっている好例

また、海水温や気温の上昇がもたらす気象の変化も「磯焼け」の遠因となる。ここ数年、とみに話題に上る「台風の強大化」や「激しい降雨の増加」も「磯焼け」を招く要因とされる。まず、台風などで波浪が激化すると海藻が生える岩礁や石にダメージが及び、海藻の流失が起こる。また、激しい波浪は海岸の浸食も引き起こし、やはり海藻の生育には特大のダメージとなる。

台風や波浪の強大化は浅海の環境に大きなダメージを与え、海藻の定着に大きな障害ともなる Dan Goro / Shutterstock.com

降水量の増加も「磯焼け」に大いに影響を及ぼす。陸上に降り注いだ雨は一気に河川へと流れ込み、やがて大量の土砂を含んだ濁流となって海洋へと放出される。こうして浅海に土砂が堆積することとなり、海藻が生える石や岩礁が埋没したり、海藻自体の埋没を招く。また、長時間海水が濁ることで光合成が妨げられ、海藻の生育にも影響が及ぶ。

降雨量の増加は河川流域の洪水や土砂崩れを誘発し、それによって土砂で濁った水が海へと押し寄せる。これが海藻の生育に多大な影響を及ぼす

海水温の上昇は、それ自体が海藻の生育に影響が大きい。日本沿岸に生育する多くの海藻はおおむね30℃で枯れる(『第3版 磯焼け対策ガイドライン』p.19)とされており、極端な水温上昇は磯焼けの直接的な要因になる。ただ、それより低い水温で植食生物の活動が活発になるため、実際にはその影響のほうが大きくなる。

※1 https://www.jfa.maff.go.jp/j/gyoko_gyozyo/g_gideline/index.html

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オオモトユウ
編集者/ライター/フォトグラファー

スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。

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