POSTED BY オオモト ユウ掲載日 OCT 14TH, 2021
【釣りの今を斬る】無知は危険!釣り人の身近に潜む要注意な危険生物vol.4
海の中には食用としてなじみのある魚類以外にも多くの生物が生息する。食卓や店頭ではほとんどお目にかからない生物が釣りバリに掛かる機会は意外なほど多く、鋭い歯やハサミでケガを負うリスクは常に潜んでいる。特に10〜12月はまだ水温も高く海中生物の活動も盛んである。冬場の低水温期と比較して活動している種類も多いため、必然的に危険生物との遭遇率も高まってしまう。
今回紹介する4種も人体に有害な毒こそないものの、油断をするとケガを負う可能性は十分。くれぐれも興味本位でちょっかいを出さないよう、慎重な扱いを求めたい。
目次
鮨ネタとして人気の甲殻形は一撃必殺のパンチが強烈!「シャコ」
北海道から九州まで広範に生息する甲殻類の一種で、50m以浅の砂泥地に潜んで甲殻類や貝類、小型魚などを捕食している。市場には産卵期を迎える春〜夏に出回ることが多い。
絶命すると急速に身が劣化するため、西日本では生きたものが店頭で販売されていることが多く、購入して自宅で調理する家庭も多い。一般的には鮨ネタとして知られるが、塩茹でや揚げ物、煮付けにしてもおいしく食べられる。
シャコが危険生物として扱われるのは、“凶器”とも称される破壊力抜群の手(捕脚)に由来する。この手(捕脚)は折りたたみ式になっており、そこから繰り出す一撃は貝やカニの甲羅、人間の爪にヒビを入れるほどの威力がある。
シロギスやハゼ、カレイ狙いの投げ釣りでしばしばハリに掛かるが、歯が鋭いウツボやタチウオ並みの危険生物として頭に入れておこう。ハリに掛かった個体はタオルやメゴチバサミを利用して扱うべし。ハリはペンチなどを使って外すのが安全だ。
ハサミはもはや凶器!堤防から釣れる旨蟹には要注意!「ガザミ類」
「カニ」というと、沖合の海底で漁獲され冬場を中心に食卓に上るズワイガニや、磯遊びをしているとよく見かけるイソガニ、山間を流れる渓流近くに生息するサワガニなどが一般的かもしれない。
ただ、釣り人にとっては「ワタリガニ」と呼ばれるガザミ類が身近なカニであり、これを狙って専用の網を仕掛ける人もいる。第5脚(ハサミを上にしたとき最も下に付いている脚)の先端が平たい団扇のような形状になっているのがこの種の特徴で、これを上手に使って海中を泳いだり、砂を掘って潜ることができる。
写真のガザミ(本ガザミとも呼ばれる)のほか、内湾の砂地に生息するタイワンガザミやジャノメガザミ、港湾部の障害物周りに生息するイシガニが代表種。房総半島以南の河口部に広がる泥底を好む大型種・ノコギリガザミ(地域によっては“ドウマンガニ”とも)もこの仲間に属する。
種類によって体形や模様、大きさなどは異なるものの、巨大でインパクトの強いハサミを持つ点で共通する。大型種のノコギリガザミはともかく、都会の港湾部でもよく掛かるイシガニですら手の指を挟まれれば大ケガは必至! 挟む力も強いので、特に子どもが興味本位で手を伸ばすのには注意したい。
食材として非常に優秀でおいしいカニなので、釣れたらエアーポンプをかけた海水で生かしておくか、急速に冷却して持ち帰ろう。
夜の海を徘徊し鋭い歯で食らい付く厄介者!「ダイナンウミヘビ」
ウミヘビと名が付いているものの、沖縄に生息するイラブウミヘビなどとは違ってウナギやアナゴの仲間に属する細長い魚。大きいものは全長1.5mを超えるほどまで育ち、夜になると砂地から這い出てきてエサを漁る。雑食性でイソメなどの環虫類から甲殻類、魚類まで貪欲に口にするため、エサにサンマの切り身を使って狙う夜のアナゴ釣りなどでよく掛かる。
注意が必要なのは口の先に並ぶ鋭い歯。喉奥までハリを飲み込んでいることが多いため、それを外そうとして手をケガするケースがよく聞かれる。また、ウナギやウツボなどと同様に長い身をよじるようにして激しく抵抗するため、不意に歯が触れてしまう可能性も十分。ケガを未然に防ぐためにも魚体には手を触れないようにし、糸を切って海に帰すのが安全策と言える。
鋭いクチバシ状の口はもはや槍!鋭い歯も合わせ持つ危険魚「ダツ」
一見するとサンマやサヨリにも似た体形で、どこか親しみが湧くダツ。それもそのはず、これらの種は同じ「ダツ目」に分類されており、意外なことにトビウオやメダカも同目に属している。
特徴はなんといっても長くクチバシ状に伸びた口周り。英語では「Needlefish(ニードルフィッシュ=針魚)」と呼ばれ、その先は尖っていて非常に危険とされる。光やキラキラした物に突進する習性があり、場合によっては海面から飛び出してくることもある。ゆえにダイバーや潜水漁師からは要注意生物として挙げられている。
釣り人が遭遇するのは、カンパチやイナダなどの青物やスズキを狙ってルアーを投げているときが多い。水面近くを泳ぐ小魚を捕食しているため、ルアーにも果敢にアタックしてくるからだ。釣りの対象としてはともかく、鋭く尖った口の中には鋭い歯がズラリと並んでいので、取り扱いにはフィッシュグリップとペンチが必須。長細い身体をくねらせてバタバタと暴れるので、やはり取り扱いは慎重にしたい。
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オオモトユウ | |
スポーツウエアメーカー勤務、雑誌編集などを経てフリーライターに。好きなことを仕事に選び続けた結果、周囲からは「ラクをして生きている」と思われているのが悩み。四国、北海道については愛車で単独周遊済みなので、九州に照準を定めている。旅先での酒場巡りとノルウェー旅行の再開に思いを募らせる日々。 |
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