POSTED BY 北秀昭掲載日 AUG 4TH, 2021

アウディが電気自動車（EV）でダカールラリー参戦！「RS Q e-tron」発表

ドイツの名門自動車メーカー「アウディ」は、世界でもっとも過酷な自動車レースと言われるダカールラリー（2022年1月、中東のサウジアラビアで開催予定）に、電気自動車（EV）で参戦すると発表しました。使用されるのは写真の「RS Q e-tron」。ダカールラリー専用に開発された同車は、マンガや戦隊ヒーローものから抜け出たような、山でも谷でも、アリ地獄からも抜けだしそうな奇抜なスタイリングが特徴です。

世界でもっとも過酷なレース「ダカールラリー」とは？
アウディはラリー制覇で世界一の電動自動車（EV）メーカーを目指す
「まだ誰も挑戦したことがない、究極の挑戦といえるでしょう（アウディ）」
最高出力680馬力のモンスターパワーを発揮
バッテリーの充電はどうする？

世界でもっとも過酷なレース「ダカールラリー」とは？
アウディはラリー制覇で世界一の電動自動車（EV）メーカーを目指す
「まだ誰も挑戦したことがない、究極の挑戦といえるでしょう（アウディ）」
最高出力680馬力のモンスターパワーを発揮
バッテリーの充電はどうする？

世界でもっとも過酷なレース「ダカールラリー」とは？

2021年ダカールラリーには日本のトラックメーカー「日野」も出場。写真はおなじみのトラック「日野レンジャー（ダカールラリー仕様）」

ダカールラリーは、砂漠、地面のゆるい泥地、路面の荒れた山岳地帯など、極めて走行条件の悪い路面をメインコースに競い合う、自動車＆バイクの“鉄人レース”とも呼ぶべき、凄まじい競技です。

厳しい暑さのなか、1日の走行距離が800kmを越えることもあり、完走率は50%程度。「世界でもっとも過酷なレース」として知られています。

灼熱のなか2週間に渡り道なき道をひた走る、世界一過酷なレースと言われるダカールラリー。写真は2021年ダカールラリーに出場した日野レンジャー

上の写真は、「トントン・トントン・日野の二トン♪」のCMでもおなじみの日野自動車が、2021年ダカールラリーに送り込んだ日野レンジャー。

サウジアラビアで開催された2021年大会（大会は開催年度により、異なる場合あり）では、日野レンジャーは排気量10L未満クラスで優勝。これにより、見事12連覇を達成しました。

アウディはラリー制覇で世界一の電動自動車（EV）メーカーを目指す

ドイツの名門であるアウディやフォルクスワーゲンをはじめ、今、ヨーロッパの自動車メーカーの多くは、自動車の電動化を積極的に進めています。

これまで、電動自動車（EV）が過酷なダカールラリーを制したことはありません。その理由には、ガソリンを用いたエンジン搭載車に比べ、電動モーターとバッテリーを用いた電動自動車（EV）は航続距離が伸びにくいことも大きな要因であると予想されます。

アウディの目標は、電動モーターとバッテリーを使用した「RS Q e-tron」でダカールラリーに出場し、エンジン搭載車と競い合い総合優勝すること。電動自動車（EV）で世界初のダカールラリー制覇を達成し、世界有数の電動自動車（EV）メーカーという立ち位置の確立を目指しているのです。

「まだ誰も挑戦したことがない、究極の挑戦といえるでしょう（アウディ）」

かつてアウディは、「クワトロ」という四輪駆動車で世界ラリー選手権に出場し大活躍しました。また、最近では電動化したドライブトレインでル・マン24時間レースを制覇した、世界初のブランドとしても知られています。

「RS Q e-tron」は、アウディのスローガンである「Vorsprung durch Technik（技術による先進）」に基づき、まったく白紙の状態から極めて短期間で開発されています。ダカールラリーへの参戦で電動自動車テクノロジーをテストし、さらなる開発推進へのステップともしているのです。

前後に1個ずつ搭載したモーターはすべてコンピュータ制御。路面や状況などに応じ、理想的なトルク配分やタイヤの回転スピードに動作する

ダカールプロジェクト責任者のアンドレアス・ルース氏は、「ダカールラリーは、長期・長距離で競い合うレース。我々がやろうとしていることは、まだ誰も挑戦したことがないこと。これは、電動自動車（EV）における、究極の挑戦といえる」と話しています。

また、チーム代表のスヴェン・クヴァント氏は、「開発当初、エンジニアたちは何が起こるのか、まったく予想がつきませんでした。それは開発中の今も同じ。まずは2022年ダカールラリーで完走すること。最終的な目標は、ダカールラリー制覇です」と抱負を述べました。

最高出力680馬力のモンスターパワーを発揮

大容量バッテリーはパートナー企業と共同開発。容量は約50kWh、重量は約370kg

RS Q e-tronには、電動自動車レース「フォーミュラE」で採用した、モータージェネレーターユニット（MGU／最新の電動モーター）をダカールレース用に改良し、駆動部となるフロントタイヤ部とリアタイヤ部にそれぞれ搭載しています。この前後に1個ずつ配置したモーターは、路面や状況などに応じ、コンピュータによって理想的なトルク配分やタイヤの回転スピードを制御するのです。

また、このモーターはエネルギーコンバーターの一部としても機能し、走行中に高電圧バッテリーを充電する役割も担っています。制動時にエネルギーを回生するのもポイントです。

電動モーターの動力源となるバッテリーは、パートナー企業と共同開発されたものが搭載されることになっています。容量は約50kWhの超大容量で、重量は約370kg（大相撲の横綱・白鳳の約2.5人分に相当）。最大出力は500Kw（680馬力）と、軽自動車の10倍以上のモンスター級のパワーを秘めています。

バッテリーの充電はどうする？

電気自動車（EV）を長時間走らせるにはバッテリーの充電が不可欠です。とはいえ、砂漠や悪路がメインとなるコースには、ガソリンスタンドはあっても充電ステーションはありません。

そこでRS Q e-tronは、ドイツのツーリングカーレースで採用されている、効率性に優れたTFSIエンジンを搭載。つまり、エンジンで発電し、発生した電力をバッテリーに充電するシステムで解決を図っているのです。この仕組みの詳細は不明ですが、日産の「ノート」や「セレナ」などに採用されている“e-POWER”に似ているかもしれません。

この発電用エンジンは、もっとも効率的な4,500回転から6,000回転の範囲で作動するため、燃料消費量はkWhあたり200グラムをはるかに下回るという低燃費を実現しているのも特徴です。

RS Q e-tronは2021年7月初旬、ドイツのノイブルクで初のテスト走行を実施しています。2022年1月のダカールラリー出場に向け、2021年末までに集中的なテストと改良、またクロスカントリーラリーへのテスト参戦が計画されています。

2022年ダカールラリーは2021年と同様、サウジアラビアで開催予定。超個性的デザインのアウディRS Q e-tronの走りに注目です！

ハンドル前にモニターを設置したRS Q e-tronの運転席。レースカーとは思えない、スイッチ類を省いた電気自動車（EV）ならではのシンプルな構成が特徴

	北秀昭編集者／ライター
神戸～東京築地～横浜～兵庫姫路～大阪京橋育ち。瓦敷き職人助手、空手師範代助手、ダスキ〇のお掃除部隊等に従事しながら高校・大学を卒業後、旅行グルメの編プロを経て、車やバイクに特化した出版社に勤務。バイク専門サイト「4ミニ.net」運営。 https://4-mini.net/ 著者のプロフィールを詳しく見る